インディ500で佐藤琢磨選手が、日本人として初の優勝を飾った。でも、F1などサーキットレースの観戦に慣れ親しんでいる日本人としては、オーバルコースをぐるぐる回るインディってなにが難しいのか、イマイチわからないところ。そんなレースの難しさについて、インディ500への参戦経験もあるレーシングドライバーでモータージャーナリストの松田秀士氏に聞いた。
画像: 2017年5月28日、インディカーシリーズ第6戦、インディ500決勝の様子。

2017年5月28日、インディカーシリーズ第6戦、インディ500決勝の様子。

サーキットのレースとは異質の難しさ

ただグルグル周っているだけだから、簡単そうに見えるよね。最初はボクもそう思っていた。サーキットレースに比べてそんなに難しくはないんじゃないかとね。でも、サーキットレースとは異質の難しさがある。

何が違うかというと、オーバルはすべて左コーナーなので、左に曲がりやすいマシンに仕上げていること。

左リアタイヤより右リアタイヤの径が大きく(スタッガーと呼ぶ)、これを生かすためにデフがゴーカートのように直結。こうすることでステアリングから手を放すとマシンは勝手に左に曲がる。

その効果を最大限に生かすために、真正面からマシンを見たときの対地キャンバーは全て左側に倒れていて、フロントキャスター角も左右違う。細かく言うと、スプリングレートとダンパー減衰力は4輪すべてバラバラ。

このようなセッティングのため、直線ではステアリングを右に切っていないと真っ直ぐ走らない。その切り角も、右リアタイヤの摩耗と共に変化していく。ストレートでもステアリングを操舵していなくてはならないので手腕がとてもツラい。

画像: インディ500で優勝した佐藤琢磨(Andretti Autosport)のマシン。

インディ500で優勝した佐藤琢磨(Andretti Autosport)のマシン。

初インディでは、それまでのレース経験は役立たなかった

初めてインディのオーバルコースを走ったとき(1994年)、これまで培ったF3000などでのレース経験は何ひとつ役に立たなかったね。すべて一(イチ)からのスタートだった。とても驚いたよ。

INDY500では、とにかく速度がスゴイ!最高速は380km/hちょっと、でも平均速度が365km/hあたりなので、コーナリング速度がとてつもなく速い。その時の横Gは約5.5G。1周が約38秒ちょっとで、その中に4つコーナーがあるから、1周の間に4回、5.5Gがやってくる。それもすべて右方向への横G。血が偏るね。

燃料のエタノールで大変な思いも

こんな状態でレースをやるんだけど、燃料がエタノールなので、スタート直後はマシンが密集していてドライバーはアルコール漬けになるので目から涙、鼻水!もう大変! 

さらにリスタートを含め密集しているから空気の乱流によってハンドリングは滅茶苦茶!とにかく、隊列がバラけるまで注意しないといけない。

もうひとつ、裏ストレートで追い風は表ストレートで向かい風。ダウンフォースの前後バランスも変わるからそのことも考慮して走らないといけない。さらに風向きは変化するからね。

それとインディアナポリスの第1ターンは出口がほとんど見えないブラインドの90度ターン。そこに380km/h全開で飛び込んでいく。はっきり言って、とんでもないレースです。

画像: 筆者の松田秀士氏。ご自身1994年からインディ500に参戦、1996年には8位に入賞している。

筆者の松田秀士氏。ご自身1994年からインディ500に参戦、1996年には8位に入賞している。

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