ついにMax Powerが320psに到達した『新型シビック タイプR』を、初めて試乗してみて驚いた。すっごく速い。けれど、実はもっと驚かされたのが、もう1台の特別な新型シビック・セダンだった。漆黒のマシンに与えられた使命は、ホンダ車すべての「感性価値」を革新すること。「ものづくり」を「もの語り」に変え、「モノの充実」を「ココロの充実」に変える新しい「価値」観が、ハードの革新だけではなく作り手の意識改革そのものを加速させるという。もちろんそこには『次期タイプR』の革新だって、含まれているハズだ。
画像: 新しいシビック セダンがベース。マットブラック仕上げのボディは、ラッピングでアレンジされた

新しいシビック セダンがベース。マットブラック仕上げのボディは、ラッピングでアレンジされた

意のままのドライブを提供するための、内緒の1台

基本的には、7月から日本市場にも復活する「ただの」シビック4ドアセダンだ。けれどマットブラックにまとめられたボディと適度なローダウン、235/45R18タイヤがセットされたスタイリングは、一種異様な迫力がある。試乗待ちのエリアで隣に新型タイプRが並んでいる時でも、けっしてインパクト負けしていない。それどころか、タイプRのオーバーデコレーションがかえって気になるほど、「大人がソソられる」シックなスポーティ感が漂っている。

ホンダが『Dynamic Study<ダイナミック スタディ>』と名付けたこの車両は、2016年10月に技術研究所内に新設された部署「商品・感性価値企画室」で、ホンダ車全般のダイナミック性能を高めるための研究・開発に使われている。単純な「速さ」とか「楽しさ」だけではない。安定性、応答性、振動遮断というクルマに求められる高い基本性能をベースに、「人の感覚に合った車両挙動を研究し、意のままドライブを提供」するための実験用車両だ。

画像: 意のままのドライブを提供するための、内緒の1台

抜群に心地よいDCTの加速感。アクセルコントロールで自在の走り

画像: 乗り心地がよく、しっかりコシのあるストローク感が楽しめる。攻めた時の安心感が違う

乗り心地がよく、しっかりコシのあるストローク感が楽しめる。攻めた時の安心感が違う

「商品・感性価値企画室」の役目はまず、「人の感覚」とか「意のまま」とかいう、主観的で曖昧な要素を、わかりやすくするところにある。企画室のメンバーは、部署横断的に自薦他薦で参加した「選ばれし者」たちだ。彼らはその経験値をもとに、「ホンダらしい走り」とか「ホンダらしい楽しさ」を追求する。そこに明確な基準はない。けれど、これまでもそれぞれに意識して取り組んできた「ホンダらしい魅力」を具体的に「見える化」し、商品企画の段階からニューモデル開発の現場へとフィードバックするという。それは時に数値化されたデータであり、時に個別チェックシートのような、より主観性が強いものになる場合もあるようだ。

画像: ハーモナイズ=調和、という「感性」もまた「商品・感性価値企画室」が狙うホンダらしさのひとつだ

ハーモナイズ=調和、という「感性」もまた「商品・感性価値企画室」が狙うホンダらしさのひとつだ

実際、それほど腕にも感度にも自信がないレベルのドライバーでも、『ダイナミックスタディ』を実際に操ってみれば、「ホンダらしい走り」の味わいは、ある程度まで感じ取ることができる。シビックのプラットフォームをベースにチューニングを施したフットワークはとても素直で、安心感と軽快感が絶妙なバランスだ。1.5Lターボエンジンも想像以上にパワフルに感じられる。

しかしもっとも驚かされたのは、DCTの心地よい変速感だった。アクセルを踏み込んだ時の段付き感を適度に抑えた加速が、スムーズで気持ちいい。一方、スポーツモードなら、アクセルペダルの踏み込み具合次第で、コーナリング姿勢を変えることも自在だ。不用意なシフトダウンはしないので、まさに「人の感性に優しい」ドライビングが積極的に楽しめる。

「バラバラ」を統一しコモディティ化を防ぐ。守るべきはブランドの価値

画像: Honda Meeting 2017の主役たち。「ダイナミック スタディ」は、存在感でもタイプRに負けていなかった

Honda Meeting 2017の主役たち。「ダイナミック スタディ」は、存在感でもタイプRに負けていなかった

こうした新部署が作られる背景には、「ホンダらしい個性」が薄れかけていることに対する危機感がある。たとえば走りの楽しさなどは人によって好みも違うし、それをどこまで深く追求していくかについては、それぞれの開発現場に任意で任されてきた。そのために同じホンダ車でも味付けの差が如実に出てしまい、結果として「最近のホンダは走りの方向性がバラバラ」で「つまらない」という評価につながってしまったことに対する、反省がある。

同時に、FCVからPHEV、フルバッテリーEVまで、多彩な角度から電動化へのアプローチをかけているホンダが恐れているのは、コモディティ化によるブランドバリューの喪失だ。自動車メーカーだけではなく、さまざまな業態からの電気自動車市場参入が予想される時代に、どう差別化していくかはどのメーカーにとっても共通する課題となっている。その差別化の要件のひとつとしても、「感性価値」というファンクションが今後、重要視されるようだ。

画像: 「感性価値の高い」商品・サービスとは…… 素材など見えないところまでに及ぶ「こだわり」、ものに込めた「趣向」、「遊び」、「美意識」、新しい使い方やライフスタイルを提案する「コンセプト」、場合によっては「企業の価値観そのもの」が、技術、デザイン、信頼、機能、コスト等によって裏打ちされ、 「ストーリー」や「メッセージ」を持ったものとして「可視化」され (もの語り)、 これが、生活者に、驚き、わくわく感、どきどき感、爽快感、充足感、 信頼感、納得感、安らぎ、癒しなど「感動」や「共感」をもって受け止められるもの <経済産業省「感性価値創造イニシアティブ」骨子(案)より抜粋>

「感性価値の高い」商品・サービスとは……

素材など見えないところまでに及ぶ「こだわり」、ものに込めた「趣向」、「遊び」、「美意識」、新しい使い方やライフスタイルを提案する「コンセプト」、場合によっては「企業の価値観そのもの」が、技術、デザイン、信頼、機能、コスト等によって裏打ちされ、 「ストーリー」や「メッセージ」を持ったものとして「可視化」され (もの語り)、 これが、生活者に、驚き、わくわく感、どきどき感、爽快感、充足感、 信頼感、納得感、安らぎ、癒しなど「感動」や「共感」をもって受け止められるもの
                    <経済産業省「感性価値創造イニシアティブ」骨子(案)より抜粋>

そもそも「感性価値」は、経済産業省が提案した「感性価値創造イニシアティブ」という産業振興プログラムの中で、わかりやすく定義されている。要は「いい商品、いいサービスを提供する」ための付加価値としての「感性」の活用ということ。「それは決してダイナミック性能に限らない」と、研究所のスタッフのひとりが語ってくれた。「スイッチの押し心地ひとつまで気持ち良くする」ために「商品・感性価値企画室」の活動が、これから本格化していくという。その結果として、「ホンダ車らしい」魅力の意味合いが、さらに広がり、深化していくことは間違いない。

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