スバルがメディアに向けてさまざまな技術や施設の見学、試乗などを行う「テックツアー」。今回は、スバルが開発に携わったボーイング 787に試乗?してきた。

機体の半分はCFRP製。中央翼をスバルが製作

スバルの前身は第二次大戦中の名戦闘機「隼」などを製作した中島飛行機。1917年が創業だから、2017年はスバルの創業100年にあたる。
その中島飛行機の流れを受け継いで、現在もスバルには「航空宇宙カンパニー」という部署がある。ここでは、回転翼機(ヘリコプター)や無人機、そして固定翼機の主翼開発などが行われている。
今回のスバル テックツアーのメインイベントは、スバルが製造に携わっている最先端旅客機「ボーイング787(以下787と略)」の試乗というわけだ。まあ、実際に操縦できるわけではないけれど。

画像: ボーイング787-8は全長56.7m×全幅60.1m×全高16.9m。航続距離は1万5200km。JAL国際線では、座席数は161。写真のカラーリングはイメージで、残念ながら実機にはスバル車のイラストは描かれていない。

ボーイング787-8は全長56.7m×全幅60.1m×全高16.9m。航続距離は1万5200km。JAL国際線では、座席数は161。写真のカラーリングはイメージで、残念ながら実機にはスバル車のイラストは描かれていない。

787という飛行機をかんたんに説明すると、アメリカのボーイング社が開発・製造した新世代の双発中型ジェット旅客機で、愛称は「ドリームライナー」。日本では2011年から就航している。
その787の、左右の翼と胴体をつなぐ中央翼と呼ばれる部分をスバルが製作している。
ちなみに、主翼は三菱重工、胴体の一部は川崎重工が製造するなど、日本をはじめ世界各国の多くのメーカーが開発・製造に携わっている。機体構造の50%がCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製で、従来のアルミやチタンなどの合金が主体のボディより軽く剛性も高い。
スバルが製作している中央翼は機体の中心に配置され、長さ約9m×幅約6m×高さ約6mと、けっこう大きなもの。左右は外翼、前後は胴体と結合され、上部は中部胴体の床面となり、後部は主脚収納部、内部は燃料タンクとなっている複雑な構造。

画像: 前後の胴体と左右の翼を繋ぐ部分が中央翼。青く塗られているのはイメージで、実際には外からはわからない。100枚以上ものCFRPを積み重ねて作られる。

前後の胴体と左右の翼を繋ぐ部分が中央翼。青く塗られているのはイメージで、実際には外からはわからない。100枚以上ものCFRPを積み重ねて作られる。

中央翼は東レ製の炭素繊維を用いたCFRPを100枚以上も積み重ねて作られ、CFRPとアルミ合金は接着しないので、間にチタンを挟んで結合される。
数百トンもの大荷重にも耐える軽量構造設計で、内部の燃料タンクは万全の液密&耐雷設計がなされている。飛行中、主翼の翼端は地上に停止時より3mほどたわんでいるのだが、これが9〜10mたわんでも壊れることはないという。

画像: 中央翼周辺を近くから見る。残念ながら?どこにもSUBARUのロゴは入っていない…。

中央翼周辺を近くから見る。残念ながら?どこにもSUBARUのロゴは入っていない…。

さて空港を飛び立ち快適なフライトを楽しんでいると、まず787の窓が従来の旅客機より大きいことに気がついた。これも機体のCFRP化で剛性が高められたからだ。機体表面は平滑化されているので空気抵抗も少なく燃費も良いらしい。
また、高い機体剛性のおかげで機内の減圧が弱められた。従来の旅客機の機内は富士山の5合目くらいの気圧に下げられたが、787は3合目くらいの気圧だ。おかげで、離着陸時に高度が変わっても耳の中がツンとなることが少なくなった。
CFRPは腐食にも強いため、機内の湿度も従来ほど下げずにすむ。キャビンアテンダントのお姉さんは「国際線など長時間のフライトだと、お肌のカサつきが全然違うんですよ!」と、うれしそうに教えてくれた。

画像: タイトル写真に写っているWRXは撮影用車両だが、奥のBRZは実際に787に積載された。787はライバル機と比べ胴体が太いので、車両の輸送が可能になった。

タイトル写真に写っているWRXは撮影用車両だが、奥のBRZは実際に787に積載された。787はライバル機と比べ胴体が太いので、車両の輸送が可能になった。

スバルは現在、777の改良機777-Xの中央翼や新多用途ヘリコプターなどを開発中だ。またWRカーやGTカーの空力やCFRPパーツには、航空機の技術がフィードバックされている。
飛行機造りに裏打ちされたスバルのクルマ造り。これからも大いに期待できそうだ。
(文:篠原政明/写真:SUBARU)

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