RX-9やRX-VISIONについては「part.9」をご覧いただくとして、最も気になるのはその心臓部、ロータリーエンジンだろう。現状、ロータリーに関する数々の新しい特許が公開されていることから、着々と進行しているに違いない。ここではロータリーエンジンに詳しい専門家に、その現状から次世代ロータリーの核心に迫ってもらった。

文:ロータリー研究家 濱口康志(リアルテック)
ロータリーエンジン専門店「リアルテック」の代表、兼ロータリーエンジン研究家。ロータリーエンジンの過去・現在・未来について日々研究を行い、データの蓄積とさらなる性能向上の可能性を追求している。

SKYACTIV-Rに関するヒントは公開特許にあった

2015年の東京モーターショー(以下、TMS)でそのコンセプトが紹介された次世代ロータリーエンジン(以下、RE)「SKYACTIV-R」。このREなくして「RX」を名乗る新たなロータリースポーツカーの復活はない。

マツダのパワートレイン開発本部・RE開発グループは、2019年の市場導入が予定されるレンジエクステンダー用REと、次期ロータリースポーツとなるRX-9用のSKYACTIV-Rの開発を同時に進めている。そのためマツダでは、RE開発グループの人員を大幅に増員して、技術研究所でも基礎研究を進めている模様だ。

しかしTMS 2015でその名が明らかになったSKYACTIV-Rは、ウワサはあれど実態は、いまだほとんど見えてこない。数少ない情報の中、どのようなエンジンになるか方向を知るすべは、現在マツダが申請しているパテント(以下、特許)から予想することであろう。

画像: ※写真はイメージ

※写真はイメージ

特許といえば、2016年アメリカで先に公開された車両搭載用ロータリーエンジンに関するものは、ロータリーファンに大きな衝撃を与えた。その内容をおさらいすると、そこに記されているREはRX-8のレネシスエンジンと同じサイドポート式吸排気ポートを持つが、そのポート位置とスパークプラグの位置が出力軸に対し180度回転している。マツダロータリーエンジン史上、不変だった車両に向かって左側に吸気排気ポート、右側にスパークプラグという位置関係を覆してきたわけだ。さらに、シングルターボをエンジン上部に配置。これは車体パッケージの要望とエンジン効率の追求を、トータルした結果導き出されたレイアウトであった。

SKYACTIV-Rの開発テーマとなっているのは、他のSKYACTIVエンジンと同じく、燃焼の高効率化であることは間違いない。それはいかにロスなく熱エネルギーを動力に変換する割合を増やすかということにほかならない。

マツダ関係者の証言から、「SKYACTIVの名を語るからには、燃費がリッター10kmそこそこでは許されない!」と言われており、400psを超えるハイパワーユニットであっても燃費に関する開発目標値はかなり高いと思われる。

そこで燃費や低速トルク、環境性能の面からハイブリッド化の可能性も語られるが、マツダスポーツカーのキャラクターからすると採用の可能性は低い。

もし、RX-9がTMS 2015で公開されたRX-VISIONのようなロングノーズデザインとなるならば、3ローターや4ローターも搭載可能で、ロータリーファンとしては心が躍るが、エンジン本体の基本構成は、TMS 2007で出展された16Xベースの2ローターターボとみて間違いない。

ローター数を増せば、その分出力は出しやすいが、逆にローターが増えた分、シールなどの摺動抵抗も増えるので、現代の綿密なエンジンマネージメントをもってしても燃費面ではやはり不利である。

400㎰を超えても燃費性能を犠牲にしない!ロータリーに関する公開特許が続々!

ここ最近、ロータリーエンジンに関する特許が続々と公開されている。これらがエンジン開発のすべてではないはずだが未来像は見えてくる。図とはいえエンジン全体像は特徴的で、ポートの位置関係がよくわかる。アペックスシールは2分割、3分割どちらの可能性もありそう。現在のスカイアクティブ技術も積極的に採用されている部分もあり、ロータリーでは今まで採用されてこなかったクールドEGRの存在があるのも興味深い。排気ターボに関する申請が多いのも気になるところだ。

SKYACTIV-R開発のキモは、大きな16Xのネガ要素をいかに潰すか、ということ

エンジン内部の構成では、ローター頂部に位置するREの要であるアペックスシールも様々な形状をトライしている。

既存のREのトロコイド形状よりもひとまわり大きい16Xは、ローターが1回転する際、ローターハウジング内の移動距離が長くなった。そのため、ハウジング内壁で摺動するアペックスシールの移動距離も長くなる。さらにターボ化により過給を加えれば、そのぶんシールの背圧も上がり、摺動面に押し付ける圧力も上がるため、シールの磨耗が早まる。

そこでアペックスシールの形状を変更することで、シールの早期磨耗抑制とシール性能の安定化を図り、耐久性と出力安定に繋げる。さらにシール材質も今までの鋳鉄製に変わるセラミックなど異なる材質の研究もしているはずだ。

また、RE開発現場で長年の悲願であるアルミニウム製ローターの採用も否定できない。実際、アルミニウムローターに関する特許も申請されているところからすると、試作テストはしているはずだ。

これまでは鋳鉄製ローターを採用しており、世代とともに軽くなったとはいえ13Bレネシスでも1個当たりの重さが、4.2kgほどある。16Xサイズのローターとなれば、幅は狭まるが三角形は今までより大きくなり、同じ材質であれば重量面では不利だ。

画像: TMS 2007で次世代ロータリーエンジンとして出品された16X。それまでのロータリーでは40年近く不変だった偏芯量を変更しローターを拡大して、ロングストローク化。排気量を800cc×2とアップさせ、直噴化とも相まって弱点であった低速トルクと燃費を改善。さらに鋳鉄だったハウジングもアルミ製としてエンジン単体の軽量化も図った。

TMS 2007で次世代ロータリーエンジンとして出品された16X。それまでのロータリーでは40年近く不変だった偏芯量を変更しローターを拡大して、ロングストローク化。排気量を800cc×2とアップさせ、直噴化とも相まって弱点であった低速トルクと燃費を改善。さらに鋳鉄だったハウジングもアルミ製としてエンジン単体の軽量化も図った。

エンジンは回転体が軽ければそれだけロスも減るので、高回転化、燃費や出力に対するメリットは多い。REらしいスムーズなエンジンレスポンスはさらに磨きがかかる。

アルミローターは熱や圧力での歪みや磨耗などの面で、長時間安定したパワーを出すのが不可能で、現在まで未採用であった。しかし、これまで不可能を可能にしてきたマツダであれば、現在の表面処理や材料技術を駆使してクリアできるはず。このくらいの飛び道具があってこそSKYACTIV-Rの価値も上がるだろう。

ターボチャージャーについては電動ターボの採用も考えられるが、特許申請の図にもあるような排気ターボで開発を進めているようで、REの特性に合わせたエキゾーストマニホールドやターボハウジングの形状になりそうだ。

また、特許からは冷却方式の記述も多くみられる。REは作動室が回転とともに移動するため、吸気部と燃焼〜排気部では周辺の温度分布が大きく異なる。そこでCX-8の最新SKYACTIV-Dで採用されているような冷却水制御バルブを設け、冷却水の流れを適正化することで暖気促進と冷却効果を高めようという目論見であろう。

ところでマツダは「SKYACTIV-X」なる世界初の圧縮着火エンジンを実現した。「REの未来は点火方式の革新にある」と、RE開発者は語っていた。燃焼室形状が扁平なロータリーエンジンでは、いかに燃料を無駄なくクリーンに燃やすかがテーマとなり続けてきた。前述したすべての技術は、そこを達成するための積み重ねである。

もし、REでもSKYACTIV-Xと同じCI(コンプレッション・イグニション)技術が可能となれば、REで長年ネガティブファクターとされていた燃費と環境性能の面でも大変な革新となろう。その時はぜひ、『SKYACTIV-RX』として登場してほしいし、マツダはそこまでにらんで開発しているものと確信する。

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