1967年に登場したマツダ コスモスポーツに搭載されてから、ロータリーエンジンは誕生50周年を迎えた。では、「マツダはなぜ、そんなにもロータリーにこだわる」のだろうか。東京モーターショーネタからは少し離れるが、ロータリーのナニがそんなにイイのか改めて考察してみた。

文:ロータリー研究家 濱口康志(リアルテック)
ロータリーエンジン専門店「リアルテック」の代表、兼ロータリーエンジン研究家。ロータリーエンジンの過去・現在・未来について日々研究を行い、データの蓄積とさらなる性能向上の可能性を追求している。

ロータリーエンジンにかける情熱がマツダを成長させた!

1967年5月30日のコスモスポーツ発売から始まったマツダ ロータリーエンジン(以下、RE)は、2017年で50周年を迎えた。今ではマツダの代名詞というべきREだが、開発期間を含めれば50年以上にもわたる開発の歴史は、数え切れないほどの苦難の連続であった。

開発初期にはアペックスシールの振動が引き起こすチャターマーク、過大なオイル消費、低回転走行での激しい振動など、性能・信頼性確保に関するさまざまな問題が起こった。そして発売から程なくしてマスキー法をきっかけとした排出ガス規制対策、オイルショックから波及した大幅な燃費改善、当時はどれも改善が不可能と思われるほど高いハードルであったにもかかわらず、マツダはその技術と情熱でことごとくクリアしてきた。

80年代後半には販売チャンネルの多様化からバブル崩壊後に会社経営は傾き、提携先のフォードに実質的な経営権を譲渡した後は、当時の環境規制に適応できず、ロータリー開発部門も消滅の危機にあった。しかし、残された数人の開発メンバーの地道の努力で環境規制に対応した新たなNAロータリーの完成まで漕ぎ着けた。

画像: ロータリーエンジンにかける情熱がマツダを成長させた!

2012年のRX-8生産終了から市販されていないRE車であるが、今もなおマツダはREの開発を続けており、次世代REとなるSKYACTIV-Rを搭載したRX-9の登場を、全世界のロータリーファンが待ちわびている。

しかし、そこまでの苦難苦境を乗り越えてまで、マツダはなぜREというものにこだわり続けるのだろうか。

まずひとつに、マツダのエンジニアの多くがREに特別な思いを持ってマツダに入社しているということが挙げられる。とくに現在、上級エンジニアの世代にはREを作りたい、REを搭載したスポーツカーに携わりたいという志を持って入社した人も多い。現在、ロードスターアンバサダーとして活躍されている山本修弘氏もRE開発に憧れて入社し、REの進化に携わったひとり。もちろん、どの世代にもそのような志を持ったエンジニアが数多くいると聞く。

さらにREはマツダのクルマ作りの信念と情熱の象徴でもある。マツダ・REの生みの親である山本健一氏の「飽くなき挑戦」という言葉にもあるように、どんな困難があってもけっして諦めず挑戦し続ければ、望む最良の結果につながるというものだ。

高い耐久性を見せ、日本車初の優勝を飾ったル・マン24時間レースも、世界一のレシプロエンジン車を作るという旗印の下、圧倒的な低燃費、優れた環境性能を持つ高効率エンジンと走る楽しさを両立させたSKYACTIVテクノロジーの成功も、RE実用化の成功というマツダの技術的礎があったからこそではないだろうか。

ロータリーエンジンはコンパクト。だからこそ実現できる、美しいボディデザイン

REは熱効率だけ考えれば、レシプロに劣るところも多いが、それには代えられないREならではのメリットや特徴がある。

エンジン本体はレシプロに比べて部品点数が非常に少なくコンパクトに仕上がり、そのうえハイパワーを発生する。そのコンパクトさで車両レイアウトの自由度も増すので、理想的な重量配分で車両に搭載できるというメリットは、スポーツカーのエンジンとして適切である。さらにレシプロエンジンではなし得ない美しいボディデザインのスポーツカーの実現も可能だ。

そして、RE特有のエンジン回転数に左右されないフラットなエンジントルクによって、スムーズでどこまでも回り続けるようなエンジンフィーリング。回転運動のみでパワーを生み出すため振動は少なく、エンジンを構成する作動パーツの少なさからメカニカルな騒音も低い。さらには唯一無二なエンジンを操っているという特別感は、ロータリーマシンを操る者の心を奪う。

残念ながらRX-8の13Bレネシスエンジンは、年々厳しくなるエンジンに要求される排ガス規制や燃費性能に対応しきれずその生産を終了した。しかし、そこでマツダがREの進化を止めてしまったら、この世界からREの灯が消えてしまう。今までREやマツダを支持してくれた人たちの期待を裏切りたくないという使命感や、レシプロエンジンでは他メーカーが達成できなかった領域を達成できたという自信と技術力で、REでも現在の厳しい環境規制や燃費性能をクリアしてやるという技術屋の意地もあるだろう。

画像: RX-8に搭載されている13Bレネシスエンジン。

RX-8に搭載されている13Bレネシスエンジン。

マツダ関連のサーキットイベントでは、そのほとんどでREがメインとしてフィーチャーされ、多くのロータリーファンが集まる。REのレーシングカーが奏でるそのエキゾーストノートを聞いたファンからは、自然と拍手が沸きあがる。

いつの時代でも人はマツダといえば、やはり「ロータリーエンジンのマツダ」と思うのである。RX-9の発売は、SKYACTIV-Rの登場、ひいてはREの復活である。それは、ロータリーファンのみならず、マツダの開発スタッフたちみんなの望みでもある。

現在マツダでは、エンジン性能だけでなく、シャシ性能、ボディデザイン、価格設定など、すべてにおいて途方もない難題をひとつひとつクリアして、完成度の高い走る歓びを与えてくれるクルマを作っているところだ。

「飽くなき挑戦」でこの難局を乗り越え、ロータリーエンジンの歴史にSKYACTIV-Rの名を刻んでもらいたい。

コスモスポーツからロータリーの歴史が始まった!

2ローターロータリーエンジンを世界で初めて搭載したのがこのコスモスポーツだ。10A型のロータリーエンジンを搭載し、110㎰/13.3㎏mのスペックだったが、940㎏という軽い車重もあって、その走りの良さは高く評価された。

画像: コスモスポーツからロータリーの歴史が始まった!
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