ハイエースが登場するまで、日本の物流は主にトラックが担ってきました。しかし、雨が降れば積み荷はびしょ濡れ。当時は道路事情も悪く未舗装路も珍しくなかったので、目的地に到着する頃には、埃まみれになることもしばしば。そこで、そんな物流の諸問題を解決すべく、1964年(東京オリンピック開催年)に開発がスタートしたのがトヨタのハイエースです。日本初のキャブオーバー後輪駆動のバンとして発売されたのは1967年10月のことでした。(写真:井上雅行)

2017年10月、日本で初めてのキャブオーバーバンとして産声を上げたハイエースが生誕50周年を迎えた。累計602万台(兄弟車のレジアスエースを入れれば633万台)という販売台数が物語るとおり、乗用車しか乗ったことのない人には想像もできないビッグセラーなのだ。

一般的に商用車と呼ばれるけれども、ロードレーサーやモトクロッサーのトランスポーターとして、またキャンピングカーのベースとして、バン、ワゴンを問わず、予想以上にパーソナルユースも多い。ドレスアップパーツなど、カスタマイズも盛んで、いち商用車の枠を超えて「ハイエース」という独立したカテゴリーを築いていると言えるのだ。そういえば、救急車「トヨタ・メディック」も、もとはハイエースのファミリー。つまり、一般的な乗用車ではカバーしきれないニーズに応えてきたのがハイエースだったというわけだ。

ここまでは国内市場での話。実はハイエース、隠れたグローバルカーなのだ。トヨタが声高にアピールしないものだからピンとこない人もいるかもしれないけれど、実は海外で活躍しているハイエースの方が多い。月販台数でみると、国内は約7000台/月で、海外は約9000台/月だ。その主な輸出先は、アセアン(フィリピンン、タイほか)、南アフリカ、中東、オセアニアなど全部で150か国にも及ぶ。

かの国々では、実は我々が想像もつかないような使われ方をしている。商売の道具ではなく、人々の足として活躍していることが多い。その証拠に、日本での販売比率はバンとワゴンの比率が85:15で商用ユースがメインだが、海外では30:70でワゴンユースが逆転する。しかも本来の使い方ではなく、長距離バスや乗り合いバス(タクシー)や山間部へ物資を運ぶトランスポーター等など、休むことなく人やモノを運び続けるのだ。当然ながら、過積載が日常化しているし、乗車定員が守られるわけもない。日本では荷物を運ぶ物流の担い手でもあるハイエースだけれど、海外では予想以上に「人流」を支えているのだ。

初代H10系[1967年10月〜] 日本初・新カテゴリーのキャブオーバーバン誕生

画像: 写真のモデルはヒンジドアだが、発売翌年には日本で初めてのスライドドアも採用した。

写真のモデルはヒンジドアだが、発売翌年には日本で初めてのスライドドアも採用した。

日本初のキャブオーバー、低床ビルトインモノコックフレームを採用した新カテゴリーの商用車としてデビューしたハイエース。当初のラインアップはワゴン、バン、そしてトラックもあった。ほぼ同時期に開発されていたRT40系コロナのデザイン要素=アローラインを取り入れ、いかにもビジネスユースのクルマというよりも、より洗練された乗用車ライクなデザインが好評だった。68年にはスライドドアを初採用(左側のみ)。以後、今日に至るまで、このスタイルがワンボックスタイプ(ミニバンを含む)のスタンダードとなった。4列シートのコミューターや救急車など、さまざまな用途に応じた派生車を生み、初代にして早くも今日に至る原形が固まった。

2代目H20系[1977年2月〜]ビジネスユースだけでなく、RV的要素を盛り込む

画像: 多人数乗車ができるRV的としても人気を博した2代目ハイエース。

多人数乗車ができるRV的としても人気を博した2代目ハイエース。

初代同様、バン、ワゴン、トラックをラインアップ。コミューターや救急車仕様も当初から設定されている。注目すべきは、この世代から早くもハイセンスな都市型商用車として、またRV的な要素を前面に打ち出してところ。すでに初代もキャンピングカーのベース車として使用されるなど、ビジネスユース以外の「性能」に注目が集まっていたが、トヨタはこの型から本格的にRV的な要素を打ち出してきた。また、初めて4速ATを搭載したのもトピック。さらに1979年には折からのオイルショックに対応し、いち早く2.2ℓディーゼルエンジンを搭載している。なお翌80年には全車にディーゼルエンジン搭載車を拡大した。

3代目H50系[1982年12月〜]バンはバンらしく、ワゴンはワゴンらしく…ニーズの多様化に対応

画像: バンとワゴン(写真)で外装の大幅な差別化を図った。

バンとワゴン(写真)で外装の大幅な差別化を図った。

バンはバンらしく、ワゴンはよりワゴンらしく。それぞれの用途と目的により特化することで、結果的にふたつのフロントマスクをもつことになる。従来型のイメージに近いバンに対して、ワゴンはウレタンバンパーを採用して、より乗用車ライクなディテールを身につけることになる。モデルライフ中期には、当時流行りつつあったハイソカーブームの影響もあってか、ワゴンには角型ヘッドランプが採用されよりゴージャスな内装と相まって、今日のLクラスミニバンを髣髴とさせる内外装へとバンとの差別化が一層進んだ。その背景には、当時開発が始まっていた次世代100系へとスムーズな移行ができるように、との配慮があったと言われている。

4代目H100系[1989年〜]使いやすさと豪華さを追求したトップ・オブ・ワンボックス

画像: 今日のアルファード/ヴェルファイアにも通じる威風堂々たる風格を身につけた4代目(写真は後期型)

今日のアルファード/ヴェルファイアにも通じる威風堂々たる風格を身につけた4代目(写真は後期型)

バンとワゴンの差別化はこの世代で頂点を迎える。パワースライドドアの採用に代表される豪華・快適でより乗用車ライクな内外装で固めた「高級ワンボックス」へと進化したワゴンに対して、あくまでビジネスユースに特化したバンは、一見すると別のクルマに見えたほど。1992年にはV8エンジンを搭載した高規格救急車のトヨタ・ハイメディックも発売された。1998年には大掛かりなマイナーチェンジが実施され、グリルとバンパーの形状が一変した(下の展示車参照)。なお1999年よりハイエースはトヨペット店の専売車種となり、ビスタ店(現ネッツ店)ではほぼ同じ仕様がレジアスエースとして販売されることになった(ただし、レジアスエースはバンのみで、ワゴンは設定されていない)。

そして現行型となる5代目H200系は2004年8月に登場。時代の変化に対応した商用車の新たな規範になるべく、安全性能と環境性能を一層強化した「新基準ビジネスパッケージ」として発売された。さらに2017年11月22日には、「Toyota Safty Sense P」の採用や、2.8ℓディーゼルエンジン搭載車を設定するなど、まだまだ進化し続けている。

12月10日発売のホリデーオート2018年1月号では、開発総責任者へのインタビューも含め、ハイエースのすべてをガッチリ特集しています。お楽しみに!

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