東洋ゴム工業は、独自のゴム材料開発基盤技術「Nano Balance Technology (ナノバランステクノロジー」の継続的な技術革新を続けているが、今回新たな開発プロセスを確立したと発表した。

ナノバランステクノロジーとは?

ナノバランステクノロジーとは、ゴム材料をナノ(分子)レベルで観察/予測/機能創造/精密制御することで、理想的なゴム材料を開発していく東洋ゴムの基盤技術だ。

2011年に確立したこの技術を駆使し、二律背反するタイヤ性能である●低燃費性能と●ウエットグリップ性能を高次元で両立した低燃費タイヤ「NANOENERGY(ナノエナジー)」を発売したほか、フラッグシップブランド「PROXES(プロクセス)」にも採用している。またトラック・バス用タイヤにおいても発熱性の優れた低燃費トレッド配合を採用した商品を投入している。

画像: 左は2012年に発売のナノエナジー0。日本で初めてラベリング「AAA-a」を取得した。中央はプロクセススポーツ。高性能な低燃費タイヤ。右は今年3月1日から発売開始された最新のTBオールウェザータイヤ、ナノエナジーM676。

左は2012年に発売のナノエナジー0。日本で初めてラベリング「AAA-a」を取得した。中央はプロクセススポーツ。高性能な低燃費タイヤ。右は今年3月1日から発売開始された最新のTBオールウェザータイヤ、ナノエナジーM676。

トラック・バス用タイヤが進化する

トラック・バス用タイヤ(TBタイヤ)がさらなる低燃費化を進めるためには、「フィラーをゴム内部でいかに高分散させるか」がポイントとなる。ちなみに東洋ゴムのいう「フィラー」とは、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填剤のこと。「高分散させるか」とは、より均一に、ダマにならないように固形ゴムとフィラーを混合することをいう。

東洋ゴムでは、透過型電子顕微鏡や、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」を活用し、ゴム中のフィラー分散性を分析している。

TBタイヤの主原料に用いるのは天然ゴム。従来はミキサーによってコンパウンドを作っても、フィラーが均一に分散せず、塊になって残ってしまうことを「ナノ分析」によって確認した。この状態で走行しゴム変形が加わるとエネルギーロスが発生、燃費にも影響を及ぼす要因になるという。

今回、より高度にフィラーを分散させるために「コンパウンド作成前に固形ゴム中のフィラー構造を最適化する」という新たなアプローチによって加工プロセスを開発/確立した。これにより、天然ゴムのような固形ゴムにおいても、フィラーの塊は飛躍的に低減、理想的な状態を確保することが可能になる。

具体的には、コンパウンド作成の前工程として、カーボンブラックを特殊な液中で解砕しながらナノレベルに分散、同時に天然ゴムラテックスと攪拌、共凝固させるというものだ。


これにより、天然ゴムを使用したコンパウンドにおいて、耐摩耗性能を維持しながら従来に比べてエネルギーロスを約20%抑制できるゴム配合技術に成功したという。

画像: フィラーの粒子分散状態のシミュレーション(左:従来プロセス、右:新プロセス)。従来プロセスはより大きな塊が見られるのに対し、新プロセスではフィラーの塊は見られずより均一に分散されているのがわかる。

フィラーの粒子分散状態のシミュレーション(左:従来プロセス、右:新プロセス)。従来プロセスはより大きな塊が見られるのに対し、新プロセスではフィラーの塊は見られずより均一に分散されているのがわかる。

東洋ゴムのマレーシア工場の敷地内に研究開発設備棟を設置し、すでに研究開発/実証を完了している。今夏、生産ラインとして整備、年内をメドに新たなトラック・バス用タイヤの開発と生産に向けて実用化する予定だ。

画像: 東洋ゴム工業マレーシアタイヤ工場敷地内にある研究開発設備棟。

東洋ゴム工業マレーシアタイヤ工場敷地内にある研究開発設備棟。

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