昨年の東京モーターショーに展示された実車を見た読者諸氏も多いだろう。
イケヤフォーミュラが独自に開発し、公道走行のためにナンバーも取得した「IF-02RDS」。
ホリデーオート & Webモーターマガジンでは、このクルマを初めて公道で試乗することができたのだ!

シームレストランスミッションを世に広めるために

2017年秋の東京モーターショーに姿を現した真紅のマシンに、誇らしくナンバープレートが付けられていたことに多くの関係者がまず驚いた。それが想像を絶するほど大変であることを知っているからだ。
「イケヤフォーミュラ」は、自動車に関する幅広い分野の金属加工を主な生業とする技術志向のメーカーで、かつては社名のとおりフォーミュラマシンの製作も手がけていた。
同社がこうして「IF-02RDS」を生み出したいきさつとして、まず同社が考案し特許も取得している「シームレストランスミッション」の存在がある。これをPRするにあたって、やはり現物を搭載した車両があるべき、というところから始まる。
そして、せっかくやるからには、目にした人が振り返るような、できるだけインパクトのあるデザインにしたいとの思いから、レーシングカーを彷彿とさせる流線形のフォルムとし、ドアをガルウイングとした。
デザインはすべて社内で線を引き、CADによる空力の解析もぬかりなく行なったという。かくして構想を現実のものとすべく、プロジェクトは着々と進められていった。

画像: どう見てもプロトタイプレーシングカーそのもののスタイルだが、保安基準などをクリアしてナンバーを取得した。

どう見てもプロトタイプレーシングカーそのもののスタイルだが、保安基準などをクリアしてナンバーを取得した。

実は5年前、2013年の東京モーターショーにも、今回の「IF-02RDS」の基になるシームレストランスミッションを搭載した車両を展示している。しかし、そこからナンバーを取得するまでは苦労の連続だった。
当初は取得方法がわからなかったので専門の業者に依頼したところ、その業者は他の分野では実績があったものの、レーシングカーのようなIF-02RDSはあまりにかけ離れていたためノウハウが活かされず、1年以上かかってもナンバーの取得にはいたらなかった。
それなら自分たちでやってみようということになり、まずは国交省をたずねてみたところ、最初のうちは門前払い。「そんなのは無理!」の一点張りで、ロクに話を聞いてもらうこともできずじまいだったという。

画像: 最低地上高は95mmあり、前後のクリアランスも確保されているので、普通の路面なら問題なく走行できる。

最低地上高は95mmあり、前後のクリアランスも確保されているので、普通の路面なら問題なく走行できる。

ナンバーが取れたのは東京モーターショーの開幕10日前!

ところが、回数を重ねていくうちに、徐々に話を聞いてもらえるようになる。そのときに大きな役目を果たしたのが件のシームレストランスミッションだ。これを海外にも売っていきたい。そのためにはこういうクルマが必要である。その熱い思いが相手方にも徐々に伝わっていった。
また、国交省の職員の中にもクルマ好きな人がいたおかげで、こちらの話にもますます耳を傾けてもらえるようになってきた。そうしたひとつひとつ積み重ねにより、しっかり話のできる関係が構築されるにいたった。
そして晴れてナンバーを取得することができたのは、なんと東京モーターショーの開幕10日前のこと。最初に1年あまり、さらに3年ほどかかったので、実に約4年がかりである。

「間に合わなかったらどうしようかと思った」と胸をなでおろした池谷社長だが、「宇都宮」ナンバーを見て、ショーの場では地元の来場者から声をかけられることも多々あり、それもまた本当にうれしかったという。
さらにはナンバーが付いたことから、イケヤフォーミュラの取り組みは地元の「ものづくり」の象徴として、自治体のポスターにも登場するほどとなった。2017年末には、IF-02RDSを駆り鹿沼市長とともに栃木県知事を表敬訪問し、その模様は地元の新聞やテレビでも紹介されたという。

シームレスな変速は、ほかにはない「快感」!

そんな「IF-02RDS」を、正真正銘、業界で初めて公道でテストドライブすることが許された次第である。
ドアを跳ね上げ、タイトなコクピットに入ると、低い位置で寝そべる感じのシートポジションはレーシングマシンそのもの。目線はものすごく低く、両サイドにフェンダーが盛り上がっている。
右ハンドルだがシフトレバーも右側にあり、ニュートラルから前方に押すとリバース、後ろに引くと1速→2速…とシフトアップする操作自体はシーケンシャルと同じ。普通に乗るときにはクラッチを踏んで変速するが、シームレスシフトするときにはクラッチを踏まない。逆にシフトダウンはクラッチを踏まないとできない。

エンジンはホンダのK20A型。これにHKSのGTタービンを組み合わせ、モーテックで制御している。軽量な車体に2Lターボゆえ性能的には申し分ない。
まずは普通に流して感触を掴んだあと、本命のシームレスシフトを試す。エンジン回転数が5000rpmを超えたあたりまで引っぱり、そのままクラッチを踏まずにシフトノブを後ろに引くと、まさしくシームレス! 
まったく駆動力が途切れることなく、またエンジンサウンドも息つくことなく、電光石火のごとく瞬時にシフトアップできてしまう。そしてGを維持したまま勢いよく加速していく。

これは本当に快感! 他にはないシームレス感を味わうことができる。あまりの気持ち良さに、思わず何度も試したくなってしまったほどだ。
なお、東京モーターショーでも展示された、自前で開発した4LのV10エンジンを搭載する計画もあるので、そちらも非常に楽しみだ。
最低地上高が95mmあり、前後端の地上とのクリアランスも確保されているので、段差でもちょっと気をつければ擦る心配はない。ブレーキもノンアシストながら意外なほど扱いやすくて苦もなくドライブできた。
パイプフレームを組み合わせた車体はフォーミュラと同じくエンジン等が直付けされているため振動がそのまま伝わってくるし、同じくフォーミュラゆずりのプッシュロッド式の足回りも公道を走るにはややハードなセッティングとなっていたが、そうしたスパルタンな雰囲気も、このクルマの持ち味のうちだ。

こんなクルマが走っているのだから、すれ違うクルマに乗る人や通行人から注がれる視線はものすごかった。ドライブした本人にとっても、シームレスシフトの独特の走りはなかなか印象深いものがあった。
池谷社長によると、価格の目安は約3300万円で、すでに数件の具体的な購入希望があり、10台に達したら生産を始められるとのこと。
1日も早くIF-02RDSの生産が始まり、その雄姿を公道で見ることのできる機会が増えるよう、期待してやまない。
(文:岡本幸一郎 写真:MazKen)

イケヤフォーミュラ IF-02RDS 主要諸元

全長×全幅×全高:4660×1975×1080mm
ホイールベース:2750mm
重量:1150kg
パワーユニット:直4DOHCターボ・1998cc
最高出力:220〜260kW<300〜353ps>(推定)
最大トルク:未公表
ミッション:5速シームレストランスミッション
駆動方式:縦置きMR
タイヤ:前275/30R19、後335/30R20
価格:未定

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