新型Gクラスの日本デビューを前に、現行型Gクラスの乗り納めをしてみることにした。試乗車は、現行型最後の特別限定モデルだ。

Gクラス39年のヘリテージをモチーフにした限定463台

かつては「ゲレンデヴァーゲン」とも呼ばれていた究極のオフローダー、メルセデス・ベンツ Gクラス。1979年のデビュー以来、今まで大きな変更をせずに作り続けられていたが、プラットフォームまで刷新した新型が、間もなく日本でもデビューする。
メルセデスは、なぜか新型Gクラスをフルモデルチェンジとはアナウンスしていないのだが、いずれにせよ現行型Gクラスの新車に試乗できる最後のチャンス!というわけで乗り納め?をしてきた。

画像: プロフェッショナルブルーというソリッドカラーに、ルーフ、フェンダー、ミラーなどをブラックにペイントして、さらに精悍なGクラスに。

プロフェッショナルブルーというソリッドカラーに、ルーフ、フェンダー、ミラーなどをブラックにペイントして、さらに精悍なGクラスに。

試乗車は、「G350d ヘリテージエディション」という日本限定463台の特別仕様車。463という数字は、Gクラスのコードネームでもある。
3LのV6ディーゼルターボを搭載したG350dをベースに、Gクラスの長い歴史の中で特に人気が高かったボディカラー5色を設定し、ブラックペイントの18インチホイールなど随所にオブシディアンブラックのアクセントを加える「ナイトパッケージ」も特別装備している。取材車のボディカラーは、160台限定のプロフェッショナルブルー。

画像: 前後バンパーやスペアタイヤカバーリングもブラックに。18インチ5ツインスポークのブラックペイントアルミホイールも専用装備だ。

前後バンパーやスペアタイヤカバーリングもブラックに。18インチ5ツインスポークのブラックペイントアルミホイールも専用装備だ。

ボクが初めてGクラスに試乗したのは、もう30年くらい前になるだろう。2.3Lの直4ガソリンエンジンを搭載した230GEで、いきなりオフロードの特設コースで急斜面の登坂などを体験したのだが、その悪路走破性の高さに感動させられた。
その後、5LのV8を搭載した500GE、電動開閉ソフトトップを備えたG320カブリオ、そして前2輪・後4輪で史上最強のオフローダーと呼ばれたG63AMG 6×6など、さまざまなGクラスに試乗してきた。どのモデルにも共通しているのは、圧倒的なボディ剛性の高さとオフロードでの安定感、そしてメルセデスとしては豪華すぎない質実剛健なインテリアだった。

金庫の扉のようなガッチリした開閉感のドアを開けてコクピットに乗り込む。目線の高さは小型トラック並み。このあとGLCに乗り換えたら、まるでスポーツカーに乗ったような錯覚を覚えたほどだ。
最新のメルセデス車同様にコマンドシステムなどを備えて近代化されたが、ATはフロアシフトだしパーキングブレーキはハンド式。
600Nmという、4LのガソリンV8ターボ並みの大トルクを発生するディーゼルターボだから、スロットルを踏み込めばガバッと出る…と思ったが、さすがに2.5トンを超える車重ではそうはいかず、発進はおとなしい。そしてわずかなタイムラグの後、ターボが効き出すと2次的曲線の勢いで加速する。このフィールには少し時代を感じる。
アクセルとブレーキのペダルはオフセットしていて素早い踏み替えは苦手だから、渋滞のようなストップ&ゴーの繰り返し時は運転支援システムのディストロニック・プラスを使うとスムーズに走ることができる。

もともと軍用車両がルーツだし、乗り心地は良いほうではないが、Gクラスだから…と割り切って乗れるのはこのクルマならでは。現代のラージSUVと比べればサイズはさほど大きくはないし、あまり小回りは効かないが、目線が高いしオプションのカメラを使えば視界は良いので街中でも運転しやすい。
箱っぽいボディだが高速走行では横風に強く、直進安定性も悪くない。車高は2m近くあるのでコーナリング時のロールは大きく感じられるが、けっこう安定している。

乗り心地は悪い、小回りは効かない、ディーゼルでも燃費はあまり良くない。でも、圧倒的な剛性感と比類なき悪路走破性の高さを考えると、もし天変地異が起きてもコイツに乗っていればサバイブできそう。そんな気にさせてくれるのがGクラスだ。
新型は、そんなフィロソフィとスタイルを受けつぎ、さらに乗り心地が良くなっているという。従来型Gクラスに名残を惜しみつつ、新型への期待は大きくなる。
(文:篠原政明 写真:玉井 充)

メルセデス・ベンツ G350d ヘリテージエディション 主要諸元

全長×全幅×全高:4575×1860×1970mm
ホイールベース:2850mm
重量:2580kg
エンジン:V6DOHCディーゼルターボ・2986cc
最高出力:180kW<245ps>/3600rpm
最大トルク:600Nm<61.2kgm>/1600-2400rpm
ミッション:7速AT
駆動方式:フルタイム4WD
JC08モード燃費:10.3km/L
タイヤ:265/60R18
価格:1190万円

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