モータースポーツとの親和性の高いLSD(リミテッドスリップデフ)。もちろん昭和の時代から採用されている機構だが、どんな状況で作用するものだったのか。

文:飯嶋洋治

湿式多板式LSDは摩擦によって差動制御する

クルマが旋回している時に発生する内輪と外輪の距離差、これを吸収して結果的に乗り心地を良く、タイヤ摩耗を軽減するなどの効果を発揮する優れもの、デファレンシャルギア(通称:デフ)。しかし、1輪でもスリップしてしまうと駆動力がまったく伝わらない(空転)状態になる、というデメリットもある。

その空転を解消するのがLSD(リミテッド スリップ デフ)だ。とくにスポーツ走行で駆動力を失うことは致命的で、LSDをオプションで用意、もしくは標準装備するようなスポーツタイプのクルマも多く存在した。

画像: スバル インプレッサ WRX STIに搭載されていたリアの機械式LSD、そのカットモデルだ。

スバル インプレッサ WRX STIに搭載されていたリアの機械式LSD、そのカットモデルだ。

今でこそビスカス式LSDやトルセンLSDなど、さまざまな方式のLSDが存在するものの、昭和のとくに昭和50年代前半より以前のLSDは湿式多板式(いわゆるクラッチプレート式・機械式)のみだった。

この方式、左右輪に回転差が生じたときに差動制限するLSDであると、勘違いしている人もけっこういるが、正確にはトルクをかけたとき(加減速時)に差動制限する機構だ。その目的は、加速するためにアクセルペダルを踏み込んだときに内輪がスリップせず前に出ることや、減速時に姿勢が安定することを狙ったシステムである。ドリフト走行するクルマによく搭載されているが、実は多板式LSD=ドリフトというわけではないのだ。

画像: ジェミニZZ/Rは当初LSDはオプション、マイナーチェンジでは標準装備となり、モータースポーツシーンで好んで使われた。

ジェミニZZ/Rは当初LSDはオプション、マイナーチェンジでは標準装備となり、モータースポーツシーンで好んで使われた。

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