2018年8月、三菱はアウトランダーPHEVをマイナーチェンジさせる。モーターからバッテリー、エンジンやボディなど多くの部分を改良し、よりスポーティな走行性能を獲得している。その発表を前にクローズドコースで、新型と従来モデルを比較試乗することができた。

SUVのプラグインハイブリッドでもスポーツしたいという声に応えて

今回、三菱がアウトランダーPHEVに施した改良は多岐にわたる、ビッグマイナーチェンジと言ってもいいほどだ。ただし、エクステリアはフロントバンパーやヘッドライトなどを若干のブラッシュアップをしているものの、大きな変更ではない。

画像: 左が新型アウトランダーPHEV。右が従来モデル。

左が新型アウトランダーPHEV。右が従来モデル。

それよりも注目はパワートレーンの刷新とボディの高剛性化だ。プラグインハイブリッドモデル(PHEV)のパワートレーン刷新と聞くと“より低燃費になるような改良か”と思いがちだが、そこは最重要ポイントではない。むしろ、もっとスポーティな走りを実現するための改良が多く施されているような内容だ。

画像: 今回のマイナーチェンジで、エンジン排気量を2.4Lに変更。

今回のマイナーチェンジで、エンジン排気量を2.4Lに変更。

■進化のポイントは6つ
 ①駆動用バッテリーの容量と出力のアップ
 ②エンジンの排気量を2L→2.4Lにアップ
 ③リアモーターの最高出力アップ
 ④足まわり変更やボディ接着剤追加による剛性感の向上
 ⑤ドライブモード「SPORT」の追加とS-AWCの進化
 ⑥ドライブモード「SNOW」の追加

①の駆動用バッテリーの容量は、2017年モデルと比較して約15%拡大してEV航続距離を65km(従来は60km)に延長、エコ性能を高められている。また、EV走行最高速がこれまでの125km/hから135km/hに高められている。ただ、これを日本の公道で試すことはできないので、主に欧州市場向けの性能だろう。

②の排気量アップによって最高出力は128ps(+10ps)に、最大トルク199Nm(+13Nm)に向上している。しかし狙いはモアパワーではなく、あくまで静粛性と発電効率の向上だ。開発者のひとりは「走行中にエンジンがかかると、“ああ燃費を悪くしてしまった”とガッカリしてしまうんです。そのネガティブ感情をなくしたかった」という。

画像: 新型アウトランダーPHEV。

新型アウトランダーPHEV。

そのため、低回転を維持しながらも発電量を高められる、2.4Lのアトキンソンサイクルエンジンを採用したのだ。さらに、吸気系や排気系にも改良を加えて静粛性を高めているので、実際に乗り比べてみるとその差は歴然。街中の速度域において、音や震動でエンジンの始動に気づくことは少なそうだ。

常用回転域における静粛性は高まったのだが、逆に高回転域においてはエモーショナルな音が強調されている。おもしろいことにエンジン出力計で50kW(タコメーターはないが、おそらく3000rpmあたり)を超えると、排気音が変化して耳に届くようになるのだ。競合他車も含めてPHEVは全般的にエコカーのイメージの強いモデルだが、スポーツ走行も楽しみたいというユーザーの声も多かったのだという。

画像: タコメーターはなく、出力計が備わる。その右側、“50kW”を超えると排気音が変わってくる。

タコメーターはなく、出力計が備わる。その右側、“50kW”を超えると排気音が変わってくる。

この声は、上記のポイント③/④/⑤にも反映されている
とくに③のリアモーターの最高出力アップと、⑤の「SPORT」モードの組み合わせは予想以上に強烈で、速度域の高いサーキット(今回の試乗会場)でも威力を発揮するほどだ。

リアモーターの最高出力は10kW(約14ps)高められて70kW(約94ps)を発生する。これはモーターそのものを変更したわけではなく、従来モデルでは最高出力を60kWに抑えていたコンピューター制御を“リミッター解除”するように書き換えたのだという。

さらに、今回追加された走行モード「SPORT」はアクセルレスポンスを向上させて鋭い加速を強調してくれる。しかも、四輪のトルク配分やブレーキを統合制御するS-AWCが、よりスポーツ走行向けの制御に切り替わることで、高い旋回性能を発揮。通常であればアンダーステアが発生するコーナリング中の加速でも、走行ラインを大きく膨らませることなくグイグイと引っ張ってくれる。

画像: センターコンソールに「SPORT」ボタンが設置されている。

センターコンソールに「SPORT」ボタンが設置されている。

背が高く、車両重量が約1900kgもあるクルマで、こんな走り方ができるとは正直思ってもみなかった。前述したS-AWCの効果が高いことはもちろんだが、新型ではボディの構造用接着剤の塗布面積を拡大して剛性を高められていることもポイントだ。もうひとつ、前後サスペンションの径を拡大して操縦安定性も確保していることから、ねじれるようなロールが従来モデルよりも大幅に減少し、コーナリング安定性は格段に高まっているように感じる。

画像: アグレッシブな走りにも対応してくれる新型アウトランダーPHEV。エコだけが取り柄のプラグインハイブリッド車とは異なる路線を走っているように感じる。

アグレッシブな走りにも対応してくれる新型アウトランダーPHEV。エコだけが取り柄のプラグインハイブリッド車とは異なる路線を走っているように感じる。

今回の試乗で試すことはできなかったが、⑥のドライブモード「SNOW」の追加もトピックだ。低μ路で必要になるデリケートなペダル操作をサポートするように、アクセルレスポンスや駆動力制御を行ってくれる。発進から旋回、停止まで安定性が向上したという。

画像: 今回新設された「SNOW」モード。

今回新設された「SNOW」モード。

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