2018年8月30日にデビューしたルノーの新型メガーヌR.S.は、従来の背の低い3ドアハッチバックスタイルを捨て、ボディ剛性や車両重量で不利といわれる5ドアハッチバックにスイッチしてきた。その新型に試乗することができた。

とにもかくにも、コーナーが楽しい!

ルノーやホンダ、フォルクスワーゲンなど、いくつもの自動車メーカーがラップタイム更新を狙うニュルブルクリンク北コースでのFF市販車最速記録。その王座争奪戦から、ルノーは一歩引いてしまったのだろうか。新型のエクステリアを見たら、こんなことを思う人もいるだろう。

しかしよく見れば、全幅をベースモデルから60mm拡大するフロントのブリスターフェンダー(リアは45mm拡大)やリアスポイラーで武装され、フロントバンパーも変更されている。スポーティではあるが、デザインは思ったよりも“大人しい”ものだ。

というのも近年、日本も含めた世界的に“どこに乗って行っても恥ずかしくない、普段使いもできるスポーツモデル”の人気が高まり、いかにも“やる気満々”なエクステリアデザインは敬遠される傾向にあるという。5ドアを採用したのも、“普段使い”における利便性の向上が理由だ。

画像: センター出しマフラーとリアデフューザー、ベースグレードと比較すると大型のリアスポイラーを装着。

センター出しマフラーとリアデフューザー、ベースグレードと比較すると大型のリアスポイラーを装着。

エンジンはダウンサイジングされた1.8L 直4ターボで、279ps/390Nmを発生する。従来のメガーヌR.S.273より6ps/30Nmパワーアップしているのは、5ドアになったことと、6速DCTを採用したことによる重量増に対応するため。0→100km/h加速は0.1秒向上して5.8秒をマークするが、劇的な変化を体感できるほどではない。

このスペックで王座争奪戦を戦えるのか気になるところだが、新型の真価はこうしたスペック値や加速性能ではなく、電子制御式後輪操舵システム「4コントロール」を採用したことによる“コーナリングマシン”としての性能だ。

この4コントロールは60km/h以下(ドライブモード「RACE」で100km/h以下)の低速域で後輪に最大2.7度の逆位相の操舵を働かせて旋回性能を大幅に向上させる。低速コーナーの多かった試乗会場では、トラクションをしっかり効かせたままノーズがグイグイとイン側に向かせてくれる。ちょっと不思議な感覚だが、一度味わったら病みつきになりそうだ。

これだけキビキビ回頭するのだから、足まわりにどれだけハードなセッティングを施したのかと、心配になるかもしれない。しかし、ワインディングでも一般道でも乗り心地がすこぶる良い。

画像: 赤のアクセントがいたるところに配置された新型ルノー メガーヌ R.S.のコクピット。

赤のアクセントがいたるところに配置された新型ルノー メガーヌ R.S.のコクピット。

実はこの乗り心地の良さにも4コントロールが活きている。車速や舵角、操舵スピードなどいくつもの項目を管理するこのシステムは、先述の逆位相と最大1.0度の同位相によってロールを抑える機能も備えているのだ。

そのためコーナーでは少ないロールで路面に張り付くように走り抜け、一方で「R.S.」だからといってサスペンションのバネレートを高める必要もなかったのだ。だからこそ、前席はもちろん後席でもベースモデル同等の快適さを保てるのである。

もうひとつ乗り心地の良さに寄与しているパーツが、4輪に採用されているHCC(ハイドロリック コンプレッションコントロール)だ。いわゆるダンパーinダンパーで、セカンダリーダンパーをダンパー内に備えている。バンプストップラバーを大幅に薄くして、空いたスペースに減衰力を発生させるピストンを内蔵させているのだ。

画像: 画像右側がセカンダリーダンパー内部。

画像右側がセカンダリーダンパー内部。

もともとはラリー車両用に開発し、従来のメガーヌR.S.やルーテシアR.S.のフロントサスペンションに採用されてFF最速王者の足元を支えてきた。そして、この新型ではじめて4輪に搭載されたのだ。

高速道路の継ぎ目や上下動のウネリが続くような道路などで快適性を体感できるが、その真価はやはりグリップ性能とトラクション性能の確保だ。バンプストップラバーだけでは対応できなかたダンピングのリバウンドや振動などを抑制し、限界領域を拡大してくれる。

このコーナリングマシンは、今後登場するであろう「トロフィ」シリーズで宿敵ホンダ シビックタイプRを蹴落とし、FF最速の座奪還を虎視眈々と狙っている! こちらも楽しみである。

ルノー メガーヌR.S.の主要諸元

●全長×全幅×全高:4410×1875×1435mm
●ホイールベース:2670mm
●重量:1480kg
●エンジン型式・種類・排気量:M5P・直4DOHCターボ・1798cc
●最高出力:279ps/6000rpm
●最大トルク:390Nm/2400rpm
●JC08モード燃費:13.3km/L
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●トランスミッション:6速DCT
●タイヤサイズ:245/35R19
●価格:440万円

ちなみに、新型メガーヌR.S.の性能を公道での試乗会で試すことはできないが、実はルノースポールのテストドライバー ロラン・ウルゴン氏がクローズドコースでアタックする様子を助手席で体験させてもらうことができた。ウエット路面にもかかわらず、とんでもない速度でコーナーに突入していく様から、記録の更新を期待してしまう。

助手席から撮った動画があるので、ご堪能ください。

※手持ちスマホでの撮影であること、フロントガラスの雨粒にAFが反応してピントが甘いということ、あらかじめご了承ください。

画像: 新型ルノー メガーヌR.S.をテストダライバーがアタック。修善寺サイクルスポーツセンター2018年8月24日 youtu.be

新型ルノー メガーヌR.S.をテストダライバーがアタック。修善寺サイクルスポーツセンター2018年8月24日

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