世界的に盛り上がりを見せるフォーミュラEのすべてのレースは、サーキットではなく市街地で開催されているのを知っているだろうか。F1でも市街地レースはいくつかあるが、それはごく一部だ。フォーミュラEはなぜ市街地にこだわるのか、レースに詳しいモータージャーナリストの安井 信氏に聞いた。

電気自動車であることのメリットを最大限に活用すると、こうなる

FIA(国際自動車連盟)公認の電気自動車によるレース、「フォーミュラE」は2014年に始まった。シリーズは秋もしくは冬に開幕され、年をまたぎながら世界各国を転戦。だいたい夏を迎える季節に、1シーズンが終了となる。

現状F1のような世界選手権タイトルはかけられていないが、ドライバー個人とチーム部門ともに、シリーズチャンピオンが表彰されている。

そんなフォーミュラEの特色は、市街地のほぼド真ん中でレースが実施されること。では、なぜサーキットで開催しないのか?

画像: 市街地周辺のマンションから観戦する姿も。

市街地周辺のマンションから観戦する姿も。

要は、クルマ業界による地球の将来に向けた“ゼロ エミッション”のアピールだ。それが、フォーミュラE設立時の理念。無公害を大きくアピールするためには、すでにその問題に悩む都市部か、あるいは自然を観光資源とする世界的リゾートがベターだからだ。開催地としてふさわしいのは、このどちらかの要素を持った場所だ。サーキットのような、周囲から隔離された環境でやる意味は薄いのだ。

もうひとつの理由が集客だ。人の集まる都市部やリゾート地での開催は、動員を強く見込める。F1でも長年模索しているところだが、そのハードルはかなり高い。伝統的な開催地であるモナコは別としても、シンガポールやアゼルバイジャンといった近年の市街地レースは、いずれも観光客誘致を目的とした国家的支援を背景としている。

画像: ベルリンの古風な街並みと、フォーミュラEの先進性がコラボする。

ベルリンの古風な街並みと、フォーミュラEの先進性がコラボする。

その点、フォーミュラEは無公害であり(スキール音を除くと)ほぼ無騒音。周辺住民の理解も得やすいことで、開催のハードルは総じてF1よりも低い。

さて、この2018年末、ルノーの活動を引き継ぐ形で日産がフォーミュラEへの参戦を開始する。フォーミュラE日本開催の機運も高まるところだが、実現の可能性はどうなるか。これはもう先述のとおり、国なり開催都市の自治体なりの理解や支援を受けられるかどうか、ここにかかっているだろう。

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