ボルボは日本でもグローバルでも販売台数を大きく伸ばしている。その主役は、新しいプラットフォーム“SPA”や“CMA”を使った新世代ボルボだが、2018年9月、そこにまた新たに注目モデルが1台加わった。新型V60である。ここではそのV60の進化ぶりをじっくりと確認する。(Motor Magazine 2018年11月号より)

日本市場の要望に応えて全幅1850mmを前提に開発された

新型V60にも、最新のボルボデザインが投入された。一見、V90と似ているが、そのフラットなサイドの面構成に対して、V60は彫りの深さにより陰影が美しく際立ち、また、フェンダーを強調するような曲線的なラインも特徴的だ。

先代はスポーティなイメージを前面に押し出していたが、そこからイメージチェンジを図ったことが一目瞭然だ。無駄がなく、エッジが効いていて、水平基調が美しい。佇む姿を眺めていると、けっしてボクシーではないのに、どこか850を彷彿とさせるような「ボルボエステート」の本流を受け継ぐスタイリングであることがうかがえ、デザインの妙に感心する。

今でこそXCシリーズのSUV人気も高いが、ひと昔前は、ボルボ=エステート(=ワゴン)、と言ってもよいほど、圧倒的な人気で、ワゴンのイメージが強かった。その時代を思い起こさせるかのようで、一見して“実用性の高さ”を感じさせるデザインでもある。

街中で、いまも850を大事に乗っている人を見かける。あるいは、V70オーナーが、スポーティ路線にシフトした先代V60への乗り換えに躊躇したのもわかる。が、新型V60は、新たなボルボファンを増やすとともに、行き場を探していたロイヤルカスタマーにも十分魅力的に感じるだろう。

もう一点、注目すべきはボディサイズだ。今やモデルチェンジの度、当然のようにボディサイズが大きくなっていく。が、V60は、全長こそ伸びたが、全幅、全高は先代より狭く、低くなっている。それでいて、室内空間やユーティリティは犠牲にされないのだから、とくに、駐車場などに制限のある日本においては使い勝手が良く、ありがたい限りだ。

画像: V60 T5は余裕あるパワー&トルクを生かし全域でパワルフな印象。

V60 T5は余裕あるパワー&トルクを生かし全域でパワルフな印象。

寛げる室内空間とそれを作り出すインテリアデザイン

室内に乗り込むと、クリーンで心地良い空間が広がる。北欧を旅すると、空港に降り立った瞬間、ウッディでナチュラルなマテリアルを用いたシンプルなデザインに心奪われるが、ボルボのインテリアは、まさにそんな“スカンジナビアンデザイン”が凝縮された空間だ。中でも「ドリフトウッド」と呼ばれるウッドパネルは、素材感や色味が素敵で癒される。そしてホワイトレザーとのコンビネーションも良く、ゆったりと寛げる雰囲気を作り出している。

運転席に座ると、機能面でまず目に入るのが、縦長のコントロールパネルだ。ナビをはじめ、エアコンやオーディオもすべてこの画面から設定できる。ボルボの最新インフォテインメントは直感的に操作でき、さらに使用頻度の高いものはハンドルにスイッチとしてレイアウトされるため、運転を妨げることなくストレスを感じさせない。また、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応しているので、お気に入りの曲をかけたり、アプリをパネル上で操作することもでき、利便性にも優れる。

リアシートも、ニースペース、ヘッドクリアランスともに十分なスペースがあり、ファミリーユースも快適にこなす。中でも、パノラマガラスルーフは面積が広く、リアシートはまるでサンルームのように明るい。熱や紫外線を遮断するティンテッドガラスが採用され、さらに、駐車中に外気温が25度以上になると自動的にサンシェードが閉まるという親切な機能も付いているので、暑い夏の日差しも心配ない。

画像: メインディスプレイに多彩な機能を集中させることで室内のスイッチ類を極力少なくしている。明るい色調のインテリアがボルボの特徴。

メインディスプレイに多彩な機能を集中させることで室内のスイッチ類を極力少なくしている。明るい色調のインテリアがボルボの特徴。

画像: インスクリプションはフロントベンチレーションとマッサージ機能を標準装備。シートは大型のヘッドレストで心地いい。

インスクリプションはフロントベンチレーションとマッサージ機能を標準装備。シートは大型のヘッドレストで心地いい。

画像: リアシートヒーターを全車にオプション設定。エアコン温度の調整も可能。

リアシートヒーターを全車にオプション設定。エアコン温度の調整も可能。

操作に忠実で気持ちいい走りは高い安心感を与えてくれる

ところで、V60には、「SPA」という新しいプラットフォームが採用されている。先に発売されたXC90、V90/V90クロスカントリー、S90、そしてXC60も同じプラットフォームを使用しているため、第5弾となる。それだけに、V60としては初登場ながら初めから“熟成”のメリットを感じる。従来のV60と比較すると、その乗り味は、一気に2世代分進化したと思わせるほど洗練されている。

ひと言で言えば、ワゴンらしい乗り味だ。たとえば、XC60はゆったりとした癒し系だが、V60はそれよりもシッカリしたサスペンションチューニングとなっている。低い車高を生かし、姿勢変化を抑えた動きでもある。さらに、ワゴンなのでリアに重い荷物を載せても走りのバランスを失わないよう、シッカリ感を保つ。

足元には、18インチタイヤを装着する。最近は、ルックスやデザインも重視し、比較的大径のタイヤが奢られる。これも快適性志向のタイヤで、専用設計されているため、乗り心地を犠牲にすることなく、シッカリ感のある走りと見事にシンクロしている。

その一方で、過剰なスポーティさは排除される。ハンドルを切れば素直に曲がるが、過敏さやタイトさはない。アクセルペダルやブレーキペダルなどの操作系も、ドライバーの操作に忠実で“気持ち良く”走れるが、それは気分を高揚させる種類のものではなく、高い安心感を感じさせるものだ。

試乗したのは最初に導入されるグレードである「T5」。2Lターボエンジンは、254ps/350Nmのパワー/トルクを持ち、8速ATが組み合わされる。動力性能的にも、過不足のない走りを見せる。高速道路では、100km/H巡航時1600rpmで静粛性も保たれる。一方、ワインディングロードでは、上りでも十分なトルクを発揮しながら爽快に走り、ストレスフリーな走行フィールが味わえた。実用車らしく、でも、気持ち良く走らせる、というのは普通に聞こえるが実は難しい。むしろ、思い切りキャラの立ったクルマの方が、おそらく作り手としてはラクなのではないだろうか。

というのも、V60は、「ボルボのど真ん中」と言えるコアモデルだ。なので、作り手にとっても、冒険できるモデルではない。実際、「XC」は90/60/40でそれぞれにキャラクターが異なり、それが際立っているが、「V」モデルは“実直なワゴン”として「質」を重視し、正攻法で作られている印象だ。

ワゴンとしては、ラゲッジルームの実用性も重要なポイントとなる。フラットな荷室は、529Lあり、リアシートを倒せばかなり広いスペースができる。リアシートは60:40分割で、荷室内に、電動可倒スイッチがある。また、パワーテールゲートはハンズフリー機構も装備され、実用性も高い。

そして、最新のボルボの安全装備もフル装備される。ボルボV60はドライバーのみならず、乗員全員の快適性、安全性が考慮された高い実用性と気持ちの良い走りを併せ持つクルマだ。(文:佐藤久実)

画像: 試乗車V60 T5 インスクリプションに搭載されるDrive-E 2L4気筒直噴ターボエンジンは、レスポンスよく高回転まで反応してくれた。

試乗車V60 T5 インスクリプションに搭載されるDrive-E 2L4気筒直噴ターボエンジンは、レスポンスよく高回転まで反応してくれた。

画像: ラゲッジルーム容量は529〜1441L。従来モデル同様に床下収納やフロアボードを立ててパーティション機能としても使うことができる、グローサリーバックホルダーも採用する。

ラゲッジルーム容量は529〜1441L。従来モデル同様に床下収納やフロアボードを立ててパーティション機能としても使うことができる、グローサリーバックホルダーも採用する。

主要諸元:ボルボV60 T5 インスクリプション

全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm
ホイールベース:2870mm
トレッド:1600/1600mm
最小回転直径:5.7m
車両重量 1700kg
トランクルーム容量:529/1441L
エンジン:直4DOHCターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0×93.2mm
圧縮比: 10.8
最高出力:187kW(254ps)/5500rpm
最大トルク:350Nm/1500-4800rpm
燃料・タンク容量:プレミアム・55L
JC08モード燃費:12.9km/L
駆動方式:FF
トランスミッション:8速AT
ステアリング形式:ラック&ピニオン
サスペンション:ダブルウイッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ:245/45R18
車両価格:5,990,000円

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