2018年2月6日に日本でお披露目されたランボルギーニ ウルスが、ついに日本にやってきた。すでに世界中で大ヒットとなっているスーパーSUVに、さっそく試乗してみた。(Motor Magazine 2018年12月号より)

ランボルギーニ の流儀に沿った独特なエンジンのスタート方法

ウルスを見て「それほど巨大な感じではないな」と感じた。全長5110mm×全幅2010mm×全高1640mmで、ホイールベースが3003mmというディメンジョンからかなりの巨漢を想像していたのだが、全高を抑えている上にルーフラインが後方になだらかに引き落とされるクーペ風のフォルムを採用し、サイドウインドウも面積を絞り込んでいるので、大型SUVにありがちな威圧感が意外なほど少ない。むしろ軽快にすら感じさせるのがランボルギーニの作品らしい。

さっそく左ハンドルのドライバーズシートに乗り込んで走り出そうとしたが、ウルスはスタート前にちょっとしたコクピットドリルが必要だ。

まずエンジンの始動は、センターコンソールの中央にある赤いフラップを引き上げ、その下にあるプッシュボタンを押す。その上方にRと書かれた幅広のパドルがあるが、これはギアをリバースに入れる時だけ前方に倒すレバー。スタートボタンの左右にはPとMと書かれた小さなボタンがあり、これがパーキングとマニュアルを意味するのはわかるが、肝心なDボタンが見当たらない。

しかし、これこそがランボルギーニの流儀なのだ。Dレンジへのシフトは、右側のパドルシフトをワンクリックすると完了する。

プッシュボタンで目覚めたエンジンは、これまで多気筒の自然吸気を貫いてきたランボルギーニにとって、初の過給機付き4L V8ツインターボ。フォルクスワーゲングループ内で多くのSUVが共有するパワーユニットだが、もちろんそれぞれのブランドが独自の味付けをしている。

スーパーカーメーカーのランボルギーニにとって、300km/hの最高速度は必達項目だったようで、ウルスに積まれるV8ツインターボは、もっともチューニングの度合いが高度だ。カイエンやベンテイガに搭載されるのは、いずれも550ps/770Nmというパワースペックなのに対し、ウルスは650ps/850Nm。その結果、最高速度305km/h、0→100km/h加速は3.6秒を達成している。

そんなパフォーマンスを知るとスパルタンな乗り味を想像しがちだが、高速道路を走り出したウルスは拍子抜けしてしまうほど扱いやすいクルマだった。

まず、高めの着座位置が良好な視界を生み出している。前方向はもちろん、後方視界もリアウインドウが寝ているわりにはしっかりと確保されている。しかもウルスはSUVらしく、地上高もたっぷりとあるため、ミッドシップ系モデルのようにノーズの低さなどに神経質になる必要もない。こんなに普段感覚で走れるランボルギーニは確かに初めてだ。

画像: 随所に盛り込まれたY字をモチーフとしたアイコン的なデザインを採用する。ランボルギーニ初のターボエンジンとリアステアがスポーティな走りをもたらす。

随所に盛り込まれたY字をモチーフとしたアイコン的なデザインを採用する。ランボルギーニ初のターボエンジンとリアステアがスポーティな走りをもたらす。

画像: レザー、アルカンタラ、ウッド、アルミなどの素材の組み合わせで自分好みのウルスが生まれる。フル液晶メーターは様々な情報を表示する。暗闇で人を認識するナイトビジョンも設定。

レザー、アルカンタラ、ウッド、アルミなどの素材の組み合わせで自分好みのウルスが生まれる。フル液晶メーターは様々な情報を表示する。暗闇で人を認識するナイトビジョンも設定。

画像: 中央の赤いカバーの下に設けられたスタート/ストップボタン。その上にあるレバーを手前に引くとリバースに入る。左側のレバーでドライブモードを選択する。

中央の赤いカバーの下に設けられたスタート/ストップボタン。その上にあるレバーを手前に引くとリバースに入る。左側のレバーでドライブモードを選択する。

画像: ヘッドレスト一体型の電動シートは、ボディカラーと同じイエローのステッチが施される。マッサージ機能も備わる。

ヘッドレスト一体型の電動シートは、ボディカラーと同じイエローのステッチが施される。マッサージ機能も備わる。

画像: 完全セパレート仕様のリアシートもオプション設定で用意される。

完全セパレート仕様のリアシートもオプション設定で用意される。

重量級のボディながら呆れるほど軽い身のこなし

ウルスの身のこなしはすべてが軽やかだ。比較的軽めな車量重量と太いトルクのせいで、アクセルペダルの踏み込みに対する反応が素早い。減速では大径のカーボンセラミックブレーキが、自然で軽やかなフィールと共に確実に速度を落とす。つまりハイスペックのパワーやパーツ類が、重量級のウルスを余裕で走らせてくれるのだ。8速ATを介する100km/h巡行時の回転数は1500rpmほど。静粛性は高いし、乗り心地にも尖った所はなく、極めて平穏にワインディングロードに到着した。

ここでドライブモードの切り替えを行った。リバースギア用のパドルの左右に配されたふたつのレバー。左側は「ANIMA」と書かれており、手前にワンクリックするごとにストラーダ(ノーマル)、スポーツ、コルサ(サーキット)、サビア(砂地)、テッラ(マッド)、ネーヴェ(スノー)とドライブモードが切り替わる。それぞれの路面で最大限のパフォーマンスが得られるようにプリセットされたモードを選ぶわけだ。右側の「EGO」と書かれたレバーは、トラクションコントロール、ハンドル制御、サスペンションの減衰力を個別に3段階調整ができる、言わばインディビデュアル設定である。

スポーツを選択してアクセルペダルを深く踏むと、ウルスは異なった顔を見せた。加速感はまさに爆発的。6500rpmからレブリミットとあまり高くないこともあって、すぐにフケ切るのでマニュアルシフトでは忙しくシフトアップを行う必要があった。

スーパースポーツSUVながら静かで快適な乗り心地を実現

スポーツモードでは足まわりも“ピシッ”と締まり、ストラーダよりもハンドリングなどがシャープになる。驚いたのはコーナーで呆れるほど軽い身のこなしだ。

ウルスは前40%:後60%の駆動力配分を基本とするトルセン式フルタイム4WDを基本に、後輪ステアの4WSやトルクベクタリング、アクティブアンチロールバーなど、数々の運動性能向上アイテムを装備する。それらの相乗効果は間違いないが、とにかくターンインがとてもシャープで、定常旋回中もマスの大きさを感じさせず、最小限のロールでコーナリングしてしまう。車体の重さや重心の高さなどをまったく意識することがない。これは今までに味わったことのない体験だった。

コルサモードも試したが、アクセルペダルのレスポンスが敏感になり過ぎる感があり、一般道の荒れた路面では正確な操作が難しい。やはりこれはサーキットで使うべきだろう。公道ではスポーツモードがもっとも扱いやすく、かつ軽快だ。

ウルスの実用性にも触れておこう。今回の試乗したモデルの後席はセパレートの2シーター仕様。個別にスライドとリクライニング機構が備わっており、スライドを前に出すとやや足元が狭くなるものの、大人4人がゆったり寛げる空間は十分確保されている。4シーター仕様は後席を折り畳むことはできず、ラゲッジルーム容量も5人乗りの616Lに対して874Lに減じるものの、これだけの容量があれば十分だろう。

ミッドシップモデルでは味わえない使い勝手を備えつつ、走りの鋭さは、まさしくランボルギーニと感じさせるウルス。同社の成長戦略は磐石と言えそうだ。(文:石川芳雄)

画像: 4L V8ツインターボエンジンの最高出力は650psを発生。0→100km/h加速は3.6秒、最高速度305km/h。

4L V8ツインターボエンジンの最高出力は650psを発生。0→100km/h加速は3.6秒、最高速度305km/h。

画像: Y字デザインが採用されたオプションの22インチアルミホイール。ブレーキにはカーボンセラミック製ディスクを装着。エアサスペンションを装着するウルスは、ドライブモードの種類で最低地上高が158〜248mmの間で変わる。

Y字デザインが採用されたオプションの22インチアルミホイール。ブレーキにはカーボンセラミック製ディスクを装着。エアサスペンションを装着するウルスは、ドライブモードの種類で最低地上高が158〜248mmの間で変わる。

画像: パワーテールゲートを開けるとラゲッジルーム容量616Lの広大なスペースが出現。4シーターは574Lとなる。

パワーテールゲートを開けるとラゲッジルーム容量616Lの広大なスペースが出現。4シーターは574Lとなる。

ランボルギーニ ウルス 主要諸元

●全長×全幅×全高=5110×2010×1640mm ●ホイールベース=3003mm ●車両重量=2360kg ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=3996cc ●最高出力=650ps/6000rpm ●最大トルク=850Nm/2250-4500rpm●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=2607万5736円(2018年11月12日現在)

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