自動車博物館で時代を振り返るというのも楽しい。愛知県長久手市にあるトヨタ博物館で、しばし1960年代のトヨタのスポーツカーに思いを馳せるのもいいだろう。(Motor Magazine 2016年9月号より)

1960年代、のちに名車と呼ばれる数多くのスポーツカーが誕生した

国産スポーツカーの本格的な生産は、日産が1962年にダットサンフェアレディ(sp310)を発表したのに始まり、1963年にホンダS500、1964年にいすゞベレットGT、1965年にトヨタS800、日産シルビア、1967年にトヨタ2000GT、1600GT、1968年にいすゞ117クーペ、1969年にスカイライン、フェアレディZが発表され、レーシングライクなスカイラインGT-R、フェアレディZ432なども誕生した。

こうしたモデルたちに共通していたのが高性能エンジンの搭載で、ツインキャブ化の次に来たのがDOHC化だ。ヘッドをチューンして、より高回転を実現してパワーアップを図った。その多くは2バルブDOHCだったが、1.6Lで最高出力110~120ps、直6の2Lで150~160psというハイスペックを手にした。さらにトランスミッションは5速化が進み最高速は200km/hを実現した。

1970年代に入るとスポーツ性能に加え個性が求められ始めた。その代表格と言えるのが国産初のスペシャリティカー、トヨタ セリカだ。外装、内装、エンジン、トランスミッションを自在に選ぶことが可能なフルチョイスシステムを採用。1960年代のフォードマスタングに倣ったものだが、オプションやボディカラーを含めれば3000万通りもあった。実際はディーラーで組み合わせサンプルを設けていたが、クルマ選びの楽しさを知らしめてくれたのだった。

セリカがもたらしたものは大きかった。まずはモノコックでありながらセダン版カリーナとフロアパンをともにしていたことだ。今に繋がるプラットフォームの共通化である。さらに1600GTに搭載された2T-G型エンジンは価格面でDOHCをより身近な存在にすることに成功した。それは1972年のレビン&トレノによって一気に開花し、その後の“トヨタ=DOHC”のイメージ構築に大きく寄与することとなる。

トヨタ博物館にはこの時代のスポーツカーが集められたコーナーがある。

トヨタ スポーツ800 (UP15型)

パブリカをベースに1965年4月に登場したスポーツカー。空冷フラットツインのツインキャブ45psながら580㎏の軽量ボディゆえ155km/hの最高速を可能としていた。脱着可能なトップやフードなどはアルミ製で軽量化に寄与。1967年の富士24時間レースでは2台のトヨタ2000GTに次ぐ3位に入賞した。空気抵抗の少なさと低燃費ゆえの高性能だった。価格は59.5万円で1969年まで生産された。

画像: トヨタ スポーツ800 (UP15型)

トヨタ スポーツ800 (UP15型 1965年式)主要諸元

●全長×全幅×全高=3585mm×1465×1176mm
●ホイールベース=2000mm
●エンジン=空冷水平対向2気筒OHV
●排気量=790cc
●最高出力=45ps/5400rpm
●車両重量=580kg
●車両価格=59.5万円(1965年当時)

トヨタ2000GT(MF10型) 

国産初の本格GTカーとして1967年5月に登場。リトラクタブルヘッドライトを埋め込んだロングノーズに、ヤマハと共同開発した150psの直6DOHCエンジンを収め、5速MTを介して最高速220km/h、0-400m15.9秒を誇った。シャシはX型バックボーンフレームでサスペンションは4輪ダブルウイッシュボーン。238万円という価格はクラウン約2台分に相当した。デビュー前の66年10月には谷田部テストコースでスピードトライアルに挑戦。72時間、15,000km、10,000マイルを平均206km/hで走り、世界記録を樹立した。また映画「007は二度死ぬ」にオープンボディを提供して注目を集めた。1969年8月にドライビングライトの小型化などマイナーチェンジ。1970年8月まで337台を生産した。トヨタ博物館には1968年仕様が展示されている。

画像: トヨタ2000GT(MF10型)

トヨタ2000GT(MF10型 1968年式)主要諸元

●全長×全幅×全高=4175×1600×1160mm
●ホイールベース=2330mm
●エンジン=水冷直列6気筒DOHC
●排気量=1988cc
●最高出力=150ps/6600rpm
●車両重量=1035kg
●車両価格=238.0万円(1968年当時)

画像: 空力に優れた美しいスタイルはいつ見ても美しい。

空力に優れた美しいスタイルはいつ見ても美しい。

画像: ローズウッドのパネルにずらりとメーターが収まる。

ローズウッドのパネルにずらりとメーターが収まる。

トヨタ1600GT(RT55型) 

トヨタ2000GTの弟分として1967年8月に登場。ツーリングカーレースのRTXの市販版で、ヤマハの手になる110psの1.6L DOHCを搭載。4速MTのGT4、5速MTのGT5を用意する。一見コロナHTのように見えるが、フェンダーのアウトレットが識別点となる。約1年で2222台が生産された。

画像: トヨタ1600GT(RT55型)

トヨタ1600GT(RT55型 1967年式)主要諸元

●全長×全幅×全高=4125×1565mm×1375mm
●ホイールベース=2420mm
●エンジン=水冷直列4気筒OHC
●排気量=1587cc
●最高出力=110ps/6200rpm
●車両重量=1035kg
●車両価格=100.0万円(1967年当時)

トヨタ カローラ スプリンター(KE15型) 

カローラセダンのデビューから1年半、サニークーペに遅れること2カ月、1968年5月に登場したファストバッククーペ。全高をセダンより35mm落とし、専用フロントグリルや横長テールランプの採用によってスポーツ性をアピールした。とはいえ1.1Lエンジンは共通で定員も5名を確保。ヒットした要因は人気のツインキャブ73psのSLベースで、わずかプラス3万円でセダンとはひと味違うクーペライフが楽しめたことにある。1969年9月にセダン同様1.2Lへスープアップ。SLは77psにアップするも最高速160km/hに変わりはなかった。70年5月にKE20系へのフルチェンジを機にカローラに対するスポーティなスプリンターとして袂を分かつ。

画像: トヨタ カローラ スプリンター(KE15型)

トヨタ カローラ スプリンター(KE15型 1968年式)主要諸元

●全長×全幅×全高=3845×1485×1345mm
●ホイールベース=2285mm
●エンジン=水冷直列4気筒OHV
●排気量=1077cc
●最高出力=60ps/6000rpm
●車両重量=730kg
●車両価格=48.7万円(1968年当時)

トヨタ セリカ(TA22型)

国産初のスペシャリティカーとして1970年12月にデビュー。特徴はエンジン、外装、内装などを自由に組み合わせるフルチョイスシステムの採用にあった。ただし1600GTはエンジンが2T-G型DOHC、外装にGTストライプが付き、パワーウインドウも装備していた。1972年8月に走りに徹したGTV、73年4月にLB(リフトバック)を追加。同時に18R-G型2L DOHC搭載の2000GTも登場した。排ガス規制をクリアしつつ1977年まで販売された。

画像: トヨタ セリカ(TA22型)

トヨタ セリカ(TA22型 1970年式)主要諸元

●全長×全幅×全高=4165×1600×1310mm
●ホイールベース=2425mm
●エンジン=水冷直列4気筒DOHC
●排気量=1588cc
●最高出力=115ps/6400rpm
●車両重量=940kg
●車両価格=87.5万円(1970年当時)

トヨタ博物館

日本最大級の自動車ミュージアム。トヨタ創立50周年を記念して1989年に開館した。自動車の歴史を伝える施設として、今回紹介SITAトヨダAA型、トヨペットスーパーRHN型、トヨペットクラウンRS型、トヨペットマスターRR型をはじめ、トヨタ2000GT、1600GT、セリカなどトヨタの名車のほか、1951年式ジャガーXK120、1955年式メルセデス・ベンツ300SL、1955年式フォード・サンダーバードなど、国内外、世界の名車を約160台展示している。欧米車、日本車とりまぜて時系列に展示する常設館のほか、企画展示、日本車コーナー、ライブラリー、生活文化展示などもあり、1日ではとてもすべて見ることができなほどの充実ぶり。クルマ以外にも、芸術的なカーマスコットを展示したコーナーなどもあり、行くたびに新鮮な出会いがある。

画像1: トヨタ博物館
画像2: トヨタ博物館
画像3: トヨタ博物館

●住所:愛知県長久手市横道41-100
●入館料:大人1000円、シルバー500円、中高生600円、小学生400円
●休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始、開館時間9時30分〜17時(入館受付は16時30分まで) 
●駐車場:あり
●問い合わせ先:☎0561-63-5151
●アクセス:地下鉄東山線藤が丘駅よりリニモに乗り換えて芸大通知駅下車、徒歩5分。名古屋瀬戸道路、長久手ICより西へ0.4kmグリーンロード沿い。東名名古屋IC、名二環状本郷ICより東へ4kmグリーンロード沿い。
●展示車両は入れ替えの場合あり。

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