クルマが停止した状態でハンドルを切ってはいけない、と指摘を受けたことはないだろうか。このいわゆる「据え切り」はホントに“悪”なのだろうか。

「据え切りはNG」という教えは確かにあった

1980年代より以前、クルマが今よりまだまだアナログな製品だった時代、当時は「クルマが止まっている状態でハンドルを切る」、いわゆる「据え切り」は、やらないのが基本であった。

その理由は簡単で、パワーステアリングという便利な機能は、まだ普及しきっていなかったからだ。そのため据え切りは、ものすごく力の必要な行為であり、ちょっとでもクルマの運転に慣れた人間なら、やらないことが当然だった。

つまり、「やってはいけない」ではなく、「やると大変だからやらない方がいい」というのが実情だった。

ただし、「据え切り」には悪い面も実際にある。地面と接しているタイヤの一部だけを、グリグリとこじって摩耗させてしまうのだ。また、パワーステアリングを採用していても、据え切りを繰り返すことでシステムに負荷をかけてしまう。だから、やらないことにこしたことはないだろう。

とはいえ、決してやってはいけないというほどではない。一度や二度据え切りをしたところで、異常摩耗するほど最近のタイヤはヤワではない。もちろんパワーステアリングも同様だ。

画像: 据え切りをするとタイヤの一部分だけを摩耗させてしまう。このような模様がつくが、この程度では問題にはならない。

据え切りをするとタイヤの一部分だけを摩耗させてしまう。このような模様がつくが、この程度では問題にはならない。

ただし、度が過ぎるのはもちろんNGだ。以前にドライビングの講師役として出席したあるイベントで、朝から延々と据え切りをしていた。すると昼頃、メーターに異常を知らせるワーニングとともに、パワーステアリングが効かなくなった。想定外の使い方をしたからだ。あくまでも、使い方を間違えると今どきのクルマでも壊れてしまうよ、という例だ。

逆に言えば、今どきのクルマを普通に使っていて駐車場で据え切りをしたから壊れた、なんていう話は聞いたことがない。

そういう意味では、駐車の苦手な人や一気にUターンをしたいときなどは、据え切りを使うのもいいだろう。かつて言われていた「据え切りはNG」という教えを守る必要は、すでになくなっているということだ。(文:鈴木ケンイチ)

画像: 筆者が経験したパワーステアリングの停止も故障したわけではなく、フルードの温度が下がれば再始動した。

筆者が経験したパワーステアリングの停止も故障したわけではなく、フルードの温度が下がれば再始動した。

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