2004年に公開された8輪のEV(電気自動車)エリーカ(Eliica)。見た目だけでなく、そのハイスペックな性能にも驚かされた人も多いだろう。あの発表から15年……開発がどうなったのか追った。

まるでスーパーカーのようなスペックを持ったEV、エリーカのそのさき

慶應義塾大学の清水浩教授(当時)を中心に開発されたEV、エリーカ(Eliica:Electric Lithium-Ion Car)が、多くのメディアに取り上げられていたのを覚えているだろう。

これがただのEVであれば、2004年の発表当時であっても注目されなかったかもしれない。しかし、このクルマは8輪という外観的特徴のうえに、インホイールモーターという技術的特徴を備えていた。

さらにいえば、0→約160km/h加速でポルシェ 911ターボに勝り、最高速度は370km/hにまで及ぶという、スーパーカー顔負けのスペックまで持ち合わせるオマケ付き。

画像: 車両重量は2400kgとかなりの重量級。にも関わらず、加速力でポルシェ911ターボ(当時)にまさったという。

車両重量は2400kgとかなりの重量級。にも関わらず、加速力でポルシェ911ターボ(当時)にまさったという。

EVという環境性能の高さもあり、テレビや新聞などの各種メディアで次世代自動車として取り上げられ、市販化への道筋を取りざたされていた。実際に試乗した元F1レーサーの片山右京氏が「すごい加速が、途切れることなく続いていく」と評していたことを覚えている。

しかし、計画されていたはずのエリーカ市販化の続報や、インホイールモーター技術は結局どうなったのか、知る人は少ないかもしれない。結論を先に言うと、まだ市販化に結びついていない。ただ、エリーカに採用されたEV技術のいくつかはいまも活きている。

画像: エリーカのコクピット。開発中だったためか、配線がむき出しになっている部分もある。

エリーカのコクピット。開発中だったためか、配線がむき出しになっている部分もある。

そもそも、自動車の研究開発に莫大な資金がかかることは知られているが、そのなかでも信頼性や耐久性、安全性の証明が大きな山場だという。たとえ10億円で試作車を作ってナンバーを取得できたとしても、衝突テストや耐久テストなどのためにさらなる台数が必要になるからだ。市販化までに数百億円もの資金が必要だと言われている。

しかもエリーカは、車体やインホイールモーター、サスペンションなど、多くの専用設計パーツで構成されている。市販車両からの流用ができなかったため、製造コスト削減に不利に働いたとも言われている。つまり、開発チームは資金を調達できなかったということだ。

画像: 全長5.1m×全幅1.9mのボディは、当時のメルセデスベンツ Sクラスよりひとまわり大きく、車両重量も2400kgとヘビー級だ。

全長5.1m×全幅1.9mのボディは、当時のメルセデスベンツ Sクラスよりひとまわり大きく、車両重量も2400kgとヘビー級だ。

2009年8月に清水教授が主体となったベンチャー企業で、インホイールモーター式EVのメーカー「シムドライブ」が設立されるも、やはり同じ理由で2017年6月に解散している。

ちなみにシムドライブはいくつか試作車を発表し、2014年3月に4モーターで349ps/2480Nmを発生し、航続距離404.1km(JC08モード)を達成する第4号「SIM-HAL」を完成させた。シムドライブ解散後の現在、こうした技術はモンスター田嶋氏率いるタジマEVの事業に引き継がれたという。

画像: タジマEVが開発中の「モンスター E-ランナー Kode6」は、6つのモーターで2020hpを発生するという。2019年夏に発表予定。

タジマEVが開発中の「モンスター E-ランナー Kode6」は、6つのモーターで2020hpを発生するという。2019年夏に発表予定。

画像: 「モンスター E-ランナー Kode6」にエリーカの技術が投入されているか、まだわからない。2019年夏の正式発表に期待だ。

「モンスター E-ランナー Kode6」にエリーカの技術が投入されているか、まだわからない。2019年夏の正式発表に期待だ。

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