最近よく耳にする「オールシーズンタイヤ」。これ、名前どおりにとらえると、春夏秋冬1年をとおして履き続けることができるタイヤだから履き換えもいらないし、メリットだらけの気がするけど…。今回、横浜ゴムが主催した冬季タイヤ勉強会で、オールシーズンタイヤとスタッドレスタイヤの違いを実際に試すことができた。

オールシーズンタイヤ、ってなに?

まずは、オールシーズンタイヤの基本的な知識から。

オールシーズンタイヤとは、主にヨーロッパで販売されている乗用車用タイヤのカテゴリーだ。春/夏/秋の路面では、サマータイヤと変わらないドライ/ウエット性能を発揮することに加え、冬の雪道も走ることができる。つまりはサマータイヤ/ウインタータイヤの履き換えなしに、1年中履いていられることから、「オールシーズン」タイヤ、と呼ばれている。

たとえばドイツでは、気温が7℃以下になると冬用タイヤの装着が義務づけられている。夏タイヤは気温の低下にともないゴムが硬くなるため、結果グリップ力が小さくなってしまう。そのため、安全を考えると、低い気温でも柔軟性を保つゴムでグリップ力を確保する冬用タイヤが必要なのだ。

ちなみにヨーロッパでは日本の道のように、路面が凍結してアイスバーンになる場所は少ないから、冬用タイヤは日本や北欧などで販売される「スタッドレスタイヤ」ではなく、より高速志向の「ウインタータイヤ」と呼ばれるタイヤが中心となる。

オールシーズンタイヤは1970年代中ごろから登場したのだが、一年中履き換えいらずという利便性で、ここ数年人気が上昇。いまではドイツでのタイヤ販売の10%以上がこのジャンルになっているという。

画像: 2018年にヨーロッパで発売されたヨコハマの最新オールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21(日本未発売)。高いスノー性能とウエット性能の両立、さらにドライ/摩耗性能の確保など、通年利用できる走行安全性を実現している。

2018年にヨーロッパで発売されたヨコハマの最新オールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21(日本未発売)。高いスノー性能とウエット性能の両立、さらにドライ/摩耗性能の確保など、通年利用できる走行安全性を実現している。

オールシーズンタイヤにはどんな商品があるの?

日本でオールシーズンタイヤとして有名なのは、グッドイヤーの「ベクター フォーシーズンズ」だろう。国内で2008年より展開しており、現在44サイズを用意している。また今シーズンは同じグッドイヤーからSUV用オールシーズンタイヤ「アシュアランスウェザーレディ」、そしてミシュランからも「クロスクライメート」シリーズが計78サイズと本格展開されるなど、日本でも徐々にではあるがその存在が知られてきている。

現在、横浜ゴムをはじめとした国内タイヤメーカーは、このオールシーズンタイヤを日本市場では展開していない(住友ゴムはFALKENブランドで国内展開)が、もちろんヨーロッパの市場ではどのブランドも販売中だ。

そんなオールシーズンタイヤって、いったいどんな特徴があるのか。スタッドレスタイヤとはどう違うのか。今回、2018年にヨーロッパで販売されたばかりの横浜ゴムの最新オールシーズンタイヤ「ブルーアース4S  AW21」を、雪上/氷上テストコースで試すことができた。

画像: ヨコハマのオールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21。ヨーロッパで冬用タイヤとして認証されたスノーフレークマークも付いている。

ヨコハマのオールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21。ヨーロッパで冬用タイヤとして認証されたスノーフレークマークも付いている。

画像: 左はヨコハマのスタッドレスタイヤ、アイスガード6 iG60、右がオールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21。トレッドパターンは大きく異なる。

左はヨコハマのスタッドレスタイヤ、アイスガード6 iG60、右がオールシーズンタイヤ、ブルーアース4S AW21。トレッドパターンは大きく異なる。

スノー路面は、難なく「ふつうに」走ることができる

まずはスノー路面(圧雪路)でのスラローム走行から。

当日、テストコースの天気は快晴で無風。気温は9:40の時点でマイナス14.3℃、雪温マイナス11.1℃と、絶好のテスト日和だ。

まずは、横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード6 iG60」を装着したマツダCX-5に乗る。タイヤサイズは225/65R17 102Qだ。もちろん冬道に特化したスタッドレスだから、その効きには安心感がある。スラロームのヨコ方向のグリップも、発進/加速のタテ方向も申し分ない。

続いてオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」。225/65R17と同サイズだが、102Hとロードインデックスと速度記号が異なる。ちなみに速度記号の「Q」レンジは160km/h、「H」レンジは210km/hとなる。

いや、実際ブルーアース4S AW21でも、スノー路面でのグリップは高い。制動/駆動はアイスガード6の方が手応えがあるが、とくにスラロームでのヨコ方向の粘りはアイスガード6と遜色ない。そのグリップ感は期待以上。これほど雪道に強いとは思わなかった。

画像: 圧雪路ではオールシーズンタイヤのブルーアース4Sでも「ふつうに」走ることができる。冬タイヤ規制でも走行が可能だ。

圧雪路ではオールシーズンタイヤのブルーアース4Sでも「ふつうに」走ることができる。冬タイヤ規制でも走行が可能だ。

さすがにアイス路面は苦手

続いて、氷盤路でアイスブレーキング性能/スラローム性能を試す。試乗車はスノー路面でテストしたのと同じCX-5。オールシーズンタイヤの「ブルーアース4S AW21」、スタッドレスタイヤの「アイスガード6 iG60」とも同サイズの225/65R17だ。

まずはアイスガード6。数あるスタッドレスの中でも、アイスブレーキング性能に関しては評判の高いタイヤだから、制動/駆動の前後方向はなんの不安もない。スラローム走行でもしっかりと氷をつかみ、横方向のグリップは常に安定している。もちろん急なハンドル操作をするとスッと抜けてしまうが、人が歩くこともままならないアイス路面で、これだけ「走る/曲がる/止まる」ができるのは、よく考えてみたら驚きだ。

続いてオールシーズンタイヤのブルーアース4S。アイス性能は、はっきり言い切ってしまうが、スタッドレスタイヤと比較すると低い。もちろんサマータイヤと比べたら性能的には良いのかもしれないが、効きの良いアイスガード6と比べてしまうとブレーキング性能は雲泥の差だ。いや、ブレーキング性能が低いということは発進性能も低いということだから、そもそも氷の上ではなかなかクルマが前に進まない(速度が出ない)。

スラローム走行でもそう。アイス路面では横グリップも低く、そろりそろりと曲がっていくしかない。アイスガード6では安心して運転できたが、ブルーアース4Sでは、このスケートリンクのような路面では運転するのが怖い。

画像: スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤのアイス路面での制動性能の違い(イメージ)。やはり氷を掴む手応えはアイスガード6のほうが上だ。

スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤのアイス路面での制動性能の違い(イメージ)。やはり氷を掴む手応えはアイスガード6のほうが上だ。

画像: アイス路面でスラロームテスト。オールシーズンタイヤのブルーアース4Sでは横のグリップが不足している。

アイス路面でスラロームテスト。オールシーズンタイヤのブルーアース4Sでは横のグリップが不足している。

画像: スタッドレスタイヤのアイスガード6では、ハンドル操作とともにクルマが曲がっていく。上のオールシーズンタイヤと同じような写真アングルだが、実際はクルマの走行速度が違う。

スタッドレスタイヤのアイスガード6では、ハンドル操作とともにクルマが曲がっていく。上のオールシーズンタイヤと同じような写真アングルだが、実際はクルマの走行速度が違う。

オールシーズンタイヤは“万能”か?

ということで、こうして冬用テストコースで走ってみると、1年中履いていられるというコンセプトのオールシーズンタイヤでも、決して「万能なタイヤ」ということではないことがわかる。とにかくアイス路面は苦手。だから北海道や東北、日本海側の降雪地域では、冬はスタッドレスタイヤが必須だろう。

じゃ、オールシーズンタイヤは「都会派ユーザー向き」か? と言われれば、これもまたそう断言するのは難しい。東京や大阪など大都市部でも、一度雪が降ってしまうと幹線道路以外の裏道は、何日もアイスバーンになる場所が多い。だから、「降雪地域にはスタッドレス、非降雪地域ではオールシーズン」という言い方は間違いだ。

もちろん1年中履き換えがいらないということは、タイヤの保管場所がいらないということだし、タイヤ履き替えの手間やコストもかからないということ。だからオールシーズンタイヤを選ぶメリットも多くある。

スタッドレスタイヤと比べるとアイス性能は落ちるし、多くのサマータイヤに比べると静粛性やエコ性能も低い場合が多いオールシーズンタイヤ。だが、前出のとおりユーザーメリットも多い。あとは自分がどのようなウインターカーライフを送っているのか、送りたいのか。そこをユーザー自身がよく理解した上で選択すべきだろう。

画像: 突然の雪。サマータイヤではグリップしない。安心安全のウインタードライブのために、冬用タイヤは必須だ。

突然の雪。サマータイヤではグリップしない。安心安全のウインタードライブのために、冬用タイヤは必須だ。

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