電車が往来しない、廃線となった踏切を、一時停止せずに渡ることは交通違反になるのだろうか。警察に問い合わせてみた。

電車は走っていなくても線路と踏切はある

横浜市内のとある踏切を、多くのクルマたちは一時停止せずに通り抜けていく。一般的に考えれば、道路交通法や安全性などの観点からありえない光景に見えるが、ドライバーたちはなぜ交通違反になることをしているのか。

実はこの踏切とその周辺の交差点は、昔から渋滞の名所として知られていた。幹線道路に近く、付近に警察署や区役所、図書館などの公共施設が立ち並び、大型スーパーやホームセンターなどに多くの人が集まる地域である。しかも、駅までの距離が近く電車も速度を緩めるので、そもそも踏切の閉まっている時間は長かった。

と、渋滞を長くする要素がこれ以外にも多く存在するのだ。雨天の通勤時間帯は、それこそ遅刻覚悟でクルマ移動しなくてはならなかった。

しかもまわりは住宅地。小学校や幼稚園、保育園などが点在するため、安全性を求める声も多かったようだ。この状況を改善するべく横浜市道路局と鉄道会社は、一帯の駅や線路を高架化・立体交差させることで渋滞を解消する策に打って出たのだ。

過去数年にわたって高架化事業が進められ、つい数カ月前に完了したように見えた。昔のような長い長い渋滞を見ることはなくなり、今では、使われなくなった線路と踏切がポツンと置かれているだけだ。

画像: 高架化が完了した相鉄線 星川駅近くの踏切。もちろん、これは一時的なものでまもなく撤去された。

高架化が完了した相鉄線 星川駅近くの踏切。もちろん、これは一時的なものでまもなく撤去された。

ホッとしたのもつかの間、ひとつの問題が浮上した。「電車の往来がない踏切で、一時停止すべきか、否か」

そもそも踏切をクルマで通行するときは、
・踏切の直前、もしくは停止線で一時停止
・踏切の先のスペースと左右を確認
・運転席の窓を開けて警報機が鳴っていないか確認
以上を実施しなくてはならない。

画像: 踏切はあるものの、線路は繋がっていない。この踏切で、一時停止しますか?

踏切はあるものの、線路は繋がっていない。この踏切で、一時停止しますか?

では、今回のケースではどうだろう。電車が通過しないとわかっている踏切で窓を開け、“来るかな? 来ないかな?”と確認するのは正直バカバカしい。ここを一時停止せずに通行することは交通違反になるのかどうか、この地域を管轄する警察署に電話で確認してみた。

すると担当者は「踏切がある以上、一時停止していただきます」と返答があった。そして、その理由は「ルールだから」というお役所的なものではなかった。

画像: 廃線でも線路があることに変わりはなく、路面には段差がある。

廃線でも線路があることに変わりはなく、路面には段差がある。

というのも、踏切の画像を見るとわかるとおり線路は敷設されたままで、これによる路面の隆起も残っている。もしここを制限速度(40km/h)で抜けようものなら、ハンドルをとられたり、クルマの姿勢を崩すなど事故の原因になってしまう可能性もある。そこで、路面を平らにするまでは踏切を残して安全な通行を促しているのだという。

では、キッチリ一時停止しなければ交通違反になるのか、もう一度聞くと「原則的には交通違反ですが、われわれも臨機応変に対応します。もし、危険・悪質なドライバーがいればルールに則り対処します」とのことだ。

もし今回のケースのような踏切を見つけたら、必ず一時停止しよう。交通違反になるからだけでなく、実際に危険だからだ。ちなみに、この横浜市の踏切と線路は取材後まもなく撤去された。

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