2013年9月、当時の最新RSモデルでオーストリアのクラーゲンフルトからアルプスを超えてモナコまで往復する「ランド オブ クワトロ アルペンツアー」が開催された。アウディRSの真髄が感じられるドライビングツアーとして、いまなお語り継がれるイベント、その模様を当時の記事をもとに振り返ってみよう。(Motor Magazine2013年11月号より)

アルプス44の峠を越え、4440kmを走破するという壮大なイベント

ランド オブ クワトロ アルペンツアーの主役はクワトロ社、現在のアウディスポーツ社だった。その“クワトロ”にちなみ、4つのRSモデルで、44の峠を越え、4440kmを走破するという壮大な規模のイベントだ。この時用意されたのは、RS 6アバント、RS7スポーツバック、RS5カブリオレの3車種に加え、日本には翌2014年に上陸することになるRS Q3の4モデル。

まず乗ったのは、RS 7スポーツバック。流麗な5ドアクーペに搭載されるエンジンは、560ps/700Nmという怒濤の力を発生する4L V8ツインターボだった。

「RSモデルのコアマーケットはもちろんヨーロッパですが、このRS 7スポーツバックは北米や中国も非常に重要な市場になるでしょう。今はアウディに対する、RSモデルに対する期待が大きくなっています。多くのバリエーションを用意し、かつハイパフォーマンスも、実用性も、快適性も、もちろん燃費も、考え得るすべての要求に応えていくのがRSなのです」と、クワトロ社のマーケットディレクターであるミヒャエル・ヴィンダー氏が前日のディナーの席で語っていたが、なるほど、RS 7スポーツバックの街乗りでの乗り味は、21インチの30サイズという超扁平タイヤを履いているとは思えないほどにコンフォータブル。ハニカム柄の本革スポーツシートの座り心地やスイッチ類の触感も、さすがにアウディらしい緻密さを備えている。家族4人を乗せて余裕の長距離高速移動、というシーンがRS 7スポーツバックに一番合うと感じられた。

オートルートを降り、ズステン峠、ゴッタルド峠という2000m級のワインディングに向かう。コンフォートに設定していたアウディドライブセレクトをダイナミックに変更する。するとどうだろう。ダンパーは引き締まり、ギアは高回転まで引っ張り、アクセルペダルに対する反応もよりセンシティブになり、エキゾーストノートまで野太く変わった。急勾配ながら細かいコーナーの続くワインディングを、その大きなボディの存在を感じさせずに事もなげにクリアする。RSモデルは二面性を持つと言われるが、そのなかでもコンフォートとスポーツの振れ幅がいちばん大きいモデルがRS 7スポーツバックではないかと感じた。

続いて乗ったのはRS 6アバント。搭載されるエンジンはRS 7スポーツバックと同じ4Lツインターボ。0→100km/h加速は3.9秒と、こちらもRS 7スポーツバックと同じパフォーマンスを誇る。

基本的な走り味はRS 7スポーツバックと共通するが、RS 6アバントのほうがよりスポーツ方向に振った味つけだ。

タイヤは1インチ小さい20インチ、扁平率は同じ30サイズだったが、アウディドライブセレクトをコンフォートに設定しても、路面からのインフォメーションは高い。またスポーツ側に設定すると、先代/先々代RS 6アバントを彷彿とさせる高揚感を味わうことができる。アクセルペダルをグッと踏み込むと最大700Nmのトルクがシートバックに身体を押し付ける。トルコン式ATである8速ティプトロニックも、滑り感がなくレスポンスの良さにひと役買っていた。

RS 6アバントの魅力は、そのデザイン性もさることながら、機能性も兼ね備えていることだろう。定員乗車時でもVDA式で560Lを確保する荷室は、バカンスへの移動にもその能力を発揮する。あるときは街乗りでファミリーユース、あるときはワインディング路を楽しみ、またあるときはサーキットを走行すると、1台で何役もこなすのがRSモデルだとすれば、このRS 6アバントはまさにその“代表格”と呼ぶことができるモデルだ。

画像: RS 7 スポーツバック。搭載エンジンは4LV8TFSIツインターボ、トランスミッションも8速ティプトロニック。

RS 7 スポーツバック。搭載エンジンは4LV8TFSIツインターボ、トランスミッションも8速ティプトロニック。

画像: RS6アバント。ライトウエイトと高剛性を兼ね備えたアルミハイブリッドボディを採用。最高出力560ps/最大トルク700Nmの4LV8TFSIツインターボを搭載し0→100km/h加速3.9秒。

RS6アバント。ライトウエイトと高剛性を兼ね備えたアルミハイブリッドボディを採用。最高出力560ps/最大トルク700Nmの4LV8TFSIツインターボを搭載し0→100km/h加速3.9秒。

アルプスの峠でも快適で粘りのあるロール感を発揮

続いて乗ったのは、RS 5カブリオレ。こちらは4.2L V8自然吸気エンジンを搭載していた。オープンエアでダイナミックモードを選択して走ると、エキゾーストノートの高まりを直に感じられ、楽しい。このモードだと相当に乗り味がハードになり細かい上下動が続く。ただ、自然吸気らしい高回転まで淀みなく回るエンジン、そして横Gに対してグッと踏ん張るその足は、クラシカルで普遍的な楽しさがあると感じられた。ワインディング走行で心地よい汗をかいた後は、電動ソフトトップを閉めてコンフォートモードを選択すれば、すぐ日常に戻ることができる。

フランス・メジェーヴに一泊ののち、モンブラントンネルを抜けてモナコに向かったその足は、RS Q3。Qシリーズとしては初のRSモデルで、2.5Lの直5ターボエンジンを搭載する。ハンドルを握ると、背の高いコンパクトSUVとは思えないスポーティな走りに驚く。一般道では快適性に不満はないレベルの足まわりだが、アルプスの峠を攻めても粘りのあるロール感で、RSの名に相応しいスポーティな走りを見せた。

多板クラッチ式センターデフを持つ電子制御式クワトロシステムだが、 自然な駆動力と5気筒のサウンドがマッチしている。RS Q3はここヨーロッパアルプスで走行テストを行ったという。ブレーキング→ハンドル操舵からのノーズの入り方が、まさにスポーツモデルの動き。QシリーズとRSという組み合わせに、乗る前には違和感を覚えたのだが、なるほど納得できる出来だった。

アウディのブランドスローガンである「技術による先進」。洗練、革新、そしてスポーティというアウディのアイデンティティ。それをもっともバランス良く表現しているのがRSモデルだ。ラリーモンテカルロのSSとしても名高いチュリニ峠など8つもの峠を越えるルートでそれを実感することができた。(文:根岸 誠)

画像: RS5カブリオレ。自然吸気らしい淀みない回転フィールが魅力の4.2L V8FSIエンジンを搭載。荷室容量はオープン時はVDA式で320L、クローズド時は380L、最大で750L。

RS5カブリオレ。自然吸気らしい淀みない回転フィールが魅力の4.2L V8FSIエンジンを搭載。荷室容量はオープン時はVDA式で320L、クローズド時は380L、最大で750L。

画像: Qシリーズ初のRSモデル、RS Q3。2.5L直5ターボエンジンの粒が立った独特なエンジンサウンドが心地よかった。その加速感もその走りもRSの名に相応しい。

Qシリーズ初のRSモデル、RS Q3。2.5L直5ターボエンジンの粒が立った独特なエンジンサウンドが心地よかった。その加速感もその走りもRSの名に相応しい。

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