Dセグメントのセダンながら4ドアファストバックというボディ形状を採用し、大胆不敵なデザインをまとった新型プジョー 508。今回はトップグレードのディーゼルエンジン搭載車を試乗してみた。

Dセグ・セダンはジャーマンスリーだけじゃない!

オペルとボグゾールも傘下に収め、いまやヨーロッパ市場では18%のシェアを誇るPSA(プジョー・シトロエン・グループ)。そんなプジョーのセダンというと、1980年代後半に登場した405 MI16など、一部のマニアには注目されることはあったものの日本では大きな人気を集めたことはなかった。やはり、プジョー=小型車のイメージが日本では強いのだろうか。

2019年3月、2代目にフルモデルチェンジされたプジョーのDセグメントセダン、508が日本に導入された。余談だが、プジョー車の車名は3ケタの数字で(SUVなど一部の車種は4ケタ)、真ん中は常にゼロ、百の位はクラス(サイズ)、一の位は世代を表していたが、現在はすべての車種で一の位は「8」となり、世代が進んでも車名は変わらないことになっている。

画像: LEDヘッドランプから下に伸びるデイランプは、ライオンの牙をイメージしている。

LEDヘッドランプから下に伸びるデイランプは、ライオンの牙をイメージしている。

というわけで、2世代目となった新型508だが、従来型とはまったく別のクルマになった。サイズ的には従来型より80mm短く、5mm幅広く、35mm低い。

2014年の北京モーターショーで発表されたコンセプトカー「イグザルト」の流れを汲むスタイリングは、プジョー自ら大胆不敵と呼ぶほど。どちらかといえば女性的でもあった従来型の優しいスタイルから、新型は男性的かつアグレッシブなものになった。

しかも、パッと見は4ドアセダンだがリアにハッチゲートを備える5ドア。プジョーでは「4ドアファストバック」と呼んでいる。

日本では5ドアハッチバックは中途半端なイメージで人気を呼んだモデルは少ないが、この一見セダン実は使い勝手の高い5ドアというスタイルは、けっこう注目を集めるかもしれない。

画像: クーペ風にも見えるがリアにはわずかなノッチを持つ。テールゲートは電動開閉式。

クーペ風にも見えるがリアにはわずかなノッチを持つ。テールゲートは電動開閉式。

インテリアは、最近の208や308などと共通の新世代のもの。小径ステアリングの上から見るメーターはデジタルのフルディスプレイで、センターダッシュにタッチスクリーンが備わる。

メーターの表示はカスタマイズが可能で、操作系はアクセスに一部クセがあるので覚えないと使いにくい部分もあるが、慣れてしまえばブラインドでも操作できる。

今回の試乗車は、2Lのディーゼルターボを搭載した508GT。日本仕様ではトップグレードとなる。イグニッションボタンを押して、エンジンをかける。窓を開けているとディーゼル独特の音が車内にも入ってくるが、閉めているとあまり聞こえない。振動も少ない。

画像: 小径ステアリングの上から全面モニターのメーターを見る独特のインパネ。ステアリングはパドルシフト付き。

小径ステアリングの上から全面モニターのメーターを見る独特のインパネ。ステアリングはパドルシフト付き。

8速になったATのセレクターをDに入れ、スタート。ドライブモードは、スポーツ/コンフォート/エコ/ノーマルと変更でき、エンジン/ミッション/アクティブサス/パワステなどの特性を制御できる。

ノーマルとコンフォートは、サスの硬さ以外は変わらない。普通に乗るならノーマルで十分、少し路面が悪い道ならコンフォートで。

ノーマル(コンフォートも)の発進加速は鋭すぎず、街中では扱いやすい。スポーツでは、積極的に下のギアを使って加速し、アクティブサスは適度に締まり、ステアリングも少し重くなる。

今回、ワインディングをスポーツモードで走る機会があったのだが、なかなか秀逸。硬すぎず粘りのある足回りは、プジョー伝統の「猫足」そのものだった。

燃費重視のエコでは、市街地の発進などで痛痒感があるし、夏場はエアコンの効きも悪くなるので、使う機会は少ないかもしれない。

画像: 2000rpmで400Nmの最大トルクを発生する2.0Lの直4ディーゼルターボ。

2000rpmで400Nmの最大トルクを発生する2.0Lの直4ディーゼルターボ。

ATは8速だが80km/hクルーズだと6速1600rpmくらいでホールドし、7速より上には入らない。100km/hクルーズでは8速1500rpmに入っても直に7速1650rpmに落ちるといった具合で、日本の道では8速に入る機会は少なそうだ。

ラテンのクルマというと先進運転支援装備は遅れがちだったが、新型508はアクティブセーフティブレーキをはじめ、レベル2の自動運転が可能なシステムを備える。その精度も高く、レーンキープのステアリング操作は少し違和感があるものの、ロングツーリングでの疲労を軽減してくれる。

画像: アルカンターラとレザーのコンビシートは電動アジャストで、マッサージ機能付き。

アルカンターラとレザーのコンビシートは電動アジャストで、マッサージ機能付き。

今回の試乗では370kmほど走行(高速6割、市街地3割、ワインディング1割といったところ)したところ、平均燃費計は15.8km/Lを表示した。

例によってエコランはせず、エアコンは入れっぱなし、ドライビングモードはほとんどノーマル(ワインディングだけスポーツ)。高速だけなら20km/Lオーバー、市街地だけでも12〜13km/Lの燃費を表示した。アイドリングストップはクルマが完全停止する前に作動する場合もあるが、再始動はスムーズだ。

小径ステアリングの上から見るドライビングポジションは、最初は違和感があるものの慣れてしまうと意外と見やすいし、パワステのフィールも悪くないので不満はない。

そのスタイルゆえリアシートのヘッドスペースは、身長170cm以上の大人には十分とはいえないが、ラゲッジスペースは開口部が広く容量も大きいので、ワゴン的にも使える。

Dセグメントの輸入セダンは、Cクラス、3シリーズ、A4のジャーマンスリーが圧倒的に強い。だが、この新型508もパフォーマンス的にはドイツのライバルに引けは取らない。加えて、プジョー独特のスタイリングと5ドアならではの使い勝手の高さはアドバンテージになるだろう。

しかも、性能や装備がほぼ同じながら価格は十分以上にリーズナブル。Dセグメント輸入セダンの購入を考えているなら、ぜひ候補の1台に加えて欲しいモデルだ。(文:篠原政明/写真:森山良雄、ほか)

試乗記一覧

画像: Dセグ・セダンはジャーマンスリーだけじゃない!

プジョー 508GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4750×1860×1420mm
●ホイールベース:2800mm
●重量:1630kg
●エンジン種類:直4 DOHCディーゼルターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:130kW<177ps>/3750rpm
●最大トルク:400Nm<40.8kgm>/2000rpm
●WLTCモード燃費:16.9km/L
●トランスミッション:8速AT
●タイヤ:235/45ZR18
●税込み価格:492万円

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