BMWのスポーツイメージを牽引する“Mモデル”とは、いったいどういうクルマなのか。どのように生まれ、どのように進化してきたのか。この連載企画ではその誕生から最新作までを紹介しながら、その本質、魅力を探ってみた。

ランボルギーニと共同で開発されたBMW M1

現在のBMW M社の前身、BMWモータースポーツ社(BMW Motorsport GmbH)が設立されたのは1972年。そこで最初に誕生したのは1973年の「3.0CSL」だった。

3.0CSLはレース用ホモロゲーション(グループ2)を取得するために開発されたモデルで、3.0CSをベースに、ドアとエンジンフードをアルミニウム製とし、5速ギアボックスにはマグネシウムハウジングを採用。エンジンはデビュー当初は3.0CSと同じ2985ccのSOHCだったが、3003cc、3153ccに排気量を拡大、レース仕様では3340ccの排気量から最高出力360psを実現していた。

「3.0CSL」は1973~1979年にヨーロッパツーリングカー選手権で6回優勝、ル・マン24時間耐久レースでクラス優勝を果たすなど、10年近くにわたってツーリングカーシーンを席巻した。

そして3.0CSLの後、初めて「M」の名称が付けられた車両が登場したのが、1978年のパリサロンで発表された「M1」だった。

「M1」は当時スポーツカーレースで圧倒的な強さを誇ったポルシェ935に対抗すべく開発が進められたモデルで、ベースとなった車両はなく、その設計と生産はミッドシップのノウハウを持っていたランボルギーニに委ねられた。意外にもBMWには市販のミッドシップスポーツカーを製作した経験がなかった。

シャシの設計はランボルギーニ・ミウラなどを手掛けたジャンパオロ・ダラーラ、デザインはジョルジョ・ジウジアーロが率いるイタルデザインが担当、1972年に3.5L 直列6気筒エンジンをミッドに搭載したプロトタイプが完成するが(当初は4.5L V12気筒エンジンを搭載する計画もあった)、ランボルギーニが財政難に陥ったことももあり、生産作業はなかなか進まなかった。

そこで、FIAグループ4のホモロゲーションを取得するため(24カ月以内に400台以上生産)、スペースフレームをマルケージ社、カーボンファイバーのシェルはT.I.R.社に委託。内装を含めたボディワークをイタルエンジニアリング社が製作し、BMWモータースポーツ社が最終的な組み付けを行うことになった。

画像: F1グランプリの前座として開催されたPro Carシリーズで人気を博したBMW M1。

F1グランプリの前座として開催されたPro Carシリーズで人気を博したBMW M1。

M1はホモロゲーション取得を待たず、F1グランプリの前座として開催されたPro Carシリーズに参戦し、ニキ・ラウダなどのドライブで人気を獲得している。

しかし、ようやくホモロゲーションが取得できた時にはグループ4のレースがすでに終了していたため、排気量を3.2Lに縮小しターボと組み合わせたグループ5仕様で世界スポーツカー選手権に参戦、1981年のニュル1000kmで宿敵ポルシェ935を一蹴、米国のIMSA GTOクラスでも大旋風を巻き起こしている。

結局、M1は1981年までにレース用を含め約3年間で477台を生産された。

BMW Mの系譜のバックナンバー

BMW M1(1980)

●全長:4360mm
●全幅:1824mm
●全高:1140mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1300kg
●エンジン:直列6気筒 DOHC
●排気量:3453cc
●最高出力:277ps/6500rpm
●最大トルク:320Nm/5000rpm
●駆動方式:MR
●トランスミッション:5速MT

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