2005年、現在のメルセデス・ベンツGLEにつながるMクラスが2代目へとフルモデルチェンジしている。この時、Mクラスは大きく変わったと言われるが、どうだったのだろう。デビュー間もなく、フランス・ニースで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年5月号より)

モノコックを採用し広い室内空間を実現

1997年、アメリカの南部アラバマ州タスカルーサで生産を開始したメルセデスMクラスは、当時SUVブームの真っ只中であったアメリカ市場に対して、現地生産を行うという理に適った戦略で成功し、今日までにアメリカ市場ばかりでなくヨーロッパやアジアも含め62万台という、当初の計画を15万台も上回る成功を収めた。

もちろんこの8年の間に改良が行われ、特に2001年には大掛かりなフエイスリフトで時代に即した進化は遂げて来たが、今年はいよいよフルモデルチェンジの時となった。

珍しく雪に見舞われた南仏ニースに並んだ2世代目のMクラスは、旧型の面影が強く、ちょっと見ただけでは具体的な違いを挙げるのが難しい。旧型のオーナーを無視しない、いつものメルセデスの手法である。

しかし、サイズは明らかに異なり、長さが150mm延長され4780mmに、幅が71mm広がって1911mm、そして反対に高さが5mm低くなって1815mm、さらにホイールベースは95mm伸びて2915mmとなった。その結果、室内で前後のシート間隔が15mm広くなって880mmに、リアの膝まわりは35mm、また肘まわりも32mm拡大している。またトランク容量も30L増大し、通常で551L、リアシートを倒せば2050Lのカーゴルームができる。

これは新しいMクラスが旧型のラダーフレームを廃しモノコックを新たに採用したことで得られた。8年前に旧態然としたラダーフレームを使用した理由は、どうやら未知の国において確実な生産を期すために保守的な構造を選んだのと、初期にはピックアップなど別の派生モデルも考えていたためだろう。

いずれにせよ、新しいボディ構造でML500の単純比較で100kg近く軽量化され、同時に空力特性もCd値0.39から0.32へと向上している。

インテリアも見事にスポーティ志向に洗練されている。正面の2連メーターはSLK風で、表示はやや細かいが、ハイメカな雰囲気が質感の向上に貢献している。

サイドサポートがスポーツカー的にしっかりしているシートに乗り込む。キーレスゴーなので発信機能の付いたキーは、ポケットかカップホルダーにでも入れておけばよい。続いてシフトレバーを探すが、これがまるでBMW7シリーズのようにステアリングコラムから生えているレバーを利用する。メルセデスの名付けたダイレクトセレクトは7G卜口ニックをエレクトロニック・リモー卜コントロールするもので、マルチファンクションステアリングホイールにあるスイッチでマニュアルシフトモードを選択すると、ステアリング裏側のセレクトスイッチがアクテイブになって、積極的なシフトワークが可能になる。

画像: 初代モテルのイメージを強く残したエクステリア。 SUVと言えども、安易にそのスタイリングイメージを変えないのは、メルセデスならでは。

初代モテルのイメージを強く残したエクステリア。 SUVと言えども、安易にそのスタイリングイメージを変えないのは、メルセデスならでは。

格段に進歩したサスペンションで快適

ML500に搭載されている5L V8エンジンは、排気量には変化がないがファインチューニングによって旧モデルの292psから306psになっている。このV8エンジンは怒涛のような460Nmのトルクを広範囲に発生し、またパワフルであるにもかかわらず躾がよく、どんなギアとの組み合わせでもスムーズだ。このML500では静止から100km/hまでの加速所要時間は6.9秒、最高速は240km/hに達する。

ところで4WDシステムは基本的に旧型と同じで、センターデフによって駆動を前後50:50に固定して振り分けられる。そしていずれかのタイヤが空転すると、ブレーキ介入によってトラクションのあるタイヤへトルクが伝わる4ETS(エレクトロニック・トラクションシステム)が働く。

さらに新たにDSR(ダウンヒル・スピード・レギュレーショ)やスタート時の後退を防ぐスタートアシストなどもオプションで用意される。また、本格的オフロード走行を目指す人たちにはオフロードパッケージが用意されており、これにはエクストラギア、センターおよびリアデフロック、さらには地上高を30cmまで高めることができるエアサスペンションなどが含まれる。

慎重に乗り出して気が付いたのだが、このML500に装備されているエアサスペンションは旧モデルと比較すると石器時代と現代ほどの大きな差がある。いかなる路面からの影響も難なくこなし、路面快適走行性は格段にアップしている。

さらにこのエアサスペンションはアダプティブ・ダンピング・システム(ADS)と連結して、走りの状況に応じてドライビング環境に合ったダンピングフォースを瞬時に決定する。また、ボディの改良にともない、サスペンションもフロントにダブルウイッシュボーン、リアに4リンクが採用されているが、この新しい足は路面をしっかりと捉えて、同時に快適な走行を約束してくれる。

ステアリングは適度にシャープで、コーナーではニュートラルである。しかし、たとえばカイエンやX5と較べると、ML500の方が快適指向になっており、高速長距離移動ではこちらの方が楽である。

ところでこのMLクラスの性格をさらに特徴づけているのが、SUVとしては初のプリセーフの標準装備化である。すでにSクラスに採用されているアダプティブエアバッグやサイドバッグ、さらにウィンドウバッグに加えて、シートベルトテンショナーからなる安全システムだ。クルマに不当な力が掛かって事故が起こりそうになるとシートベルトが締まり、開いているスライディングルーフやウィンドウは全て閉じられ、さらにまた乗員が座っているフロントシートはエアバッグに最適な位置まで移動する。そしてその後起こりうる事故によるパッセンジャーヘの損傷をできる限り軽減させるのである。

このニューMクラスは、オンロードの快適性が格段に進歩した、まさに現代の誰もが求めているSUVに正常進化したといえるだろう。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年5月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

メルセデス・ベンツML500(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1911×1815mm
●ホイールベース:2915mm
●重量:2100kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4966cc
●最高出力:306ps/5600 rpm
●最大トルク:460Nm/2700-4750rpm
●トランスミッション:7速AT
●最高速:240km/h
●0→100km/h加速:6.9秒
※欧州仕様

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