2020年中旬から国内販売が始まる新型ヤリス。ヴィッツを改めヤリスとしてすべてを一新した世界戦略コンパクトカーの全貌を探る短期集中連載の2回目は、クラスを超越する走りを実現する新開発プラットフォームを中心に新開発パワーユニット、さらに欧州仕様との違いをご紹介しよう。
画像1: 【新型ヤリス詳解②】新型ヤリスを支える3気筒エンジン専用新開発プラットフォーム[GA-B]

GA-B〜軽量・高剛性・低重心、3気筒エンジン搭載を前提に完全新設計

2012年にその構想が明らかにされた「TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)」。“もっといいクルマづくり”を標榜し、基本性能を突き詰めたプラットフォームをベースに複数車種で共用することによって、基本性能を上げながらサイズや駆動方式ごとに「一括企画」する戦略だ。

2015年にデビューした4代目プリウス(GA-C)を皮切りに、C-HRやカローラスポーツ(同)、カムリ(GA-K)やRAV4(同)、クラウン(GA-L)など続々とTNGA採用車が登場している。

そして今回、ヤリスで初採用されたのが3気筒エンジン搭載車に特化した「GA-B」だ。低重心、ワイドスタンス、ショートオーバーハングなどTNGAに共通する特徴はそのままに、ホイールベースとトレッド、さらに最低地上高を可変とする基本設計により、適合車種(タイプ)やデザインの自由度を高めている。ヤリスでは、車両重量を50kg以上低減(現行型同クラス車比)。主要骨格を連結することでボディのねじり剛性を30%以上高めたほか、エンジン搭載位置も下げて重心高を現行型比で15mmも下げている。

画像: GA-Bとホワイトボディ(写真は国内仕様HYBRID)。

GA-Bとホワイトボディ(写真は国内仕様HYBRID)。

また足回り形式は前ストラット、後トーションビームを基本としながらも、後ろはマルチリンクなど独立懸架にも変更できるなど多彩なアレンジが可能とされている。ヤリスでは4WD車のリアサスペンションに新開発の2リンク式ダブルウイッシュボーンを採用。とくにハイブリッド車には、トヨタのコンパクトカーとして初めてのモーター駆動式4WDを搭載することができた。

画像: 4WD車のリアサスを2リンク式ダブルウイッシュボーンに。トヨタのコンパクトカーとして初の電動式4WD車設定が可能になった(HYBRID全車)。

4WD車のリアサスを2リンク式ダブルウイッシュボーンに。トヨタのコンパクトカーとして初の電動式4WD車設定が可能になった(HYBRID全車)。

プラットフォームを3気筒エンジン搭載に特化したことで、フロントストラットの取り付け角度が適正化されて摺動摩擦が低減されているのもポイント。さらに、全車に前後スタビライザーを標準装備するなど、スプリングレートを下げながらロール角度を現行型よりも減らすことに成功している。

文字どおり「土台」が一新されたことで、「ひとクラス上という感じはあるね。もっと走っていたい!(by豊田章男社長:テストコースにてコメント)」とうるさがたをも納得させる乗り味を実現している。その走りはまさにクラスレスなのだ。

ダイナミックフォース第3弾は1.5L 直3エンジン

搭載されるパワートレーンは3種類。1Lの1KR型こそ現行型の大幅改良だが、1.5LのガソリンNA(M15A-FKS型)と同ハイブリッド(M15A-FXE型)に搭載されるユニットは完全な新設計である。と言っても、すでに搭載車が発売されている2.5L&2Lの直4とTNGAの思想に基づいてモジュラー設計されており、ボア×ストローク=80.5×97.6のロングストロークは、レクサスUXやRAV4に搭載される2L 4気筒と同一だ。

画像: ダイナミックフォースエンジン第3弾は1.5リッター直3のM15A型。写真はNAガソリンのM15A-FKSで、発進ギア付ワイドレンジCVT(Direct Shift-CVT)との組み合わせでキビキビとした走りを実現する。

ダイナミックフォースエンジン第3弾は1.5リッター直3のM15A型。写真はNAガソリンのM15A-FKSで、発進ギア付ワイドレンジCVT(Direct Shift-CVT)との組み合わせでキビキビとした走りを実現する。

さらにNAのM15A-FKSと新開発ハイブリッドのM15A-FXE型では仕様が異なり、あたまのM15A までは同じだが、〜FKSは直噴、〜FXEはポート噴射を採用。さらに、〜FKSにはアイドル時の振動対策としてバランスシャフトが追加されている。また〜FKSに組み合わされるミッション[Direct CVTまたは6速MT]はいずれもヤリスに初めて搭載されるもので、いずれもコンパクトカー用に最適化。新開発のエンジンとともに気持ちの良い加速が味わえる。

画像: TNGA化にともない各部を大幅に改良した1リッターユニットの1KR-FE。CVTも小型/軽量化されている。

TNGA化にともない各部を大幅に改良した1リッターユニットの1KR-FE。CVTも小型/軽量化されている。

一方、現行型にも搭載されている1L 3気筒の1KR-FE型もCVTの改良とともにおよそ6kgも軽量化され、ヘッド回りを全面刷新して全域で希薄燃焼を可能とするなど基本性能が向上している。

画像: ハイブリッドユニットは小型化され効率をアップ。駆動用バッテリーもずいぶんと小さいが効率は従来比50%以上もアップしている(写真は欧州仕様)。

ハイブリッドユニットは小型化され効率をアップ。駆動用バッテリーもずいぶんと小さいが効率は従来比50%以上もアップしている(写真は欧州仕様)。

注目のハイブリッド車は、トランスアクスル、パワーコントロールユニット、駆動用バッテリーともにコンパクトカー用に最適化された高効率・軽量タイプを新開発。なかでも駆動用バッテリーは効率を50%以上もアップすると同時に、システム総出力も16%アップ。その結果、動力性能を向上させながら世界最高レベルの燃費を実現しているという。

【こぼれ話】GA-Bにはナローとワイドが存在!? 国内仕様と欧州仕様の違い

余談になるが、GA-Bには足回りの設定により2種類が存在する。国内仕様に採用されるGA-Bナローと、欧州仕様に採用されるGA-Bワイドだ。あくまでトヨタ社内での呼称とのことだが、取り回し性能とドライビングの愉しさの両立を狙った国内仕様と、高速性能を重視する欧州仕様では自ずと仕様が異なるらしい。もっとも具体的な違いは足回りのみで、プラットフォーム本体は同じである。主な違いは以下の通り。

<国内仕様:ナロー>
・ボディ全幅:1695mm
・トレッド:前1480mm/後1475mm
・ホイールベース:2550mm
・4穴ホイール

画像: 国内仕様の全幅は1695mm。ホイールも軽量化のため4穴となっている。

国内仕様の全幅は1695mm。ホイールも軽量化のため4穴となっている。

<欧州仕様:ワイド>
・ボディ全幅:1745mm
・トレッド(15インチ装着車):前1530mm/後1526mm
・トレッド(16&17インチ装着車):前1520mm/後1516mm
・ホイールベース:2560mm
・5穴ホイール

画像: こちらが欧州仕様。フェンダーの拡張は明らかだが、国内仕様とイメージは変わらない。ホイールは5穴だ。

こちらが欧州仕様。フェンダーの拡張は明らかだが、国内仕様とイメージは変わらない。ホイールは5穴だ。

トレッド拡大版の通称GN-Aワイドは、サスペンションアーム類の変更で実現されている。このパーツ類に実はひとクラス上のGA-Cのパーツ(カローラ系?)が使用されているようだ。また欧州仕様のホイールベースが10mm長いのは、高速域での直進安定性を重視してキャスター角度を大きくした結果である。フェンダーも拡幅されているので、結果的に欧州仕様のほうが重い。搭載されるパワートレーンのラインアップは同じなので、加速性能では国内仕様が有利ではある。もっともその差はわずかとなるように、エンジンの出力特性は若干異なるようにチューニングされているとのこと。

次回は日本車離れしたデザインの秘密とクラスを超えた先進の安全安心装備にフォーカスする。

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