1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は1997年の第32回ショーを振り返ってみたい。

乗用車と商用車をまとめて展示。エコへの注目度も高まる

1997年の第32回ショーは、これまで別展示だった乗用車と商用車をまとめてメーカー別展示としたことや、展示規制の緩和で2階建てブースが多く見られたのが特徴だ。展示車両は、発売間近のトヨタ プリウスを筆頭に、日産 スタイリッシュ6、三菱 エムキャット、ホンダ J-VX、スバル エルテンなど、各社からハイブリッドのコンセプトカーが出品され、エコへの注目度が高まっているのが実感できた。一方で、トヨタ MR-S、マツダ ロードスター、スズキ C2などコンパクトスポーツも健在で、それぞれ走りの楽しさを訴求した。

■スズキ C2(タイトル写真)

カプチーノの基本思想を継承し、より進化させた小型オープン2シータースポーツ。驚くのは新開発のパワーユニットで、1644ccの90度V8 DOHCツインターボ(!)と超弩級なのだ。最高出力は250ps/7000rpmを発生。これを全長3650×全幅1650×全高1220mm、ホイールベース2230mmというコンパクトなボディのフロントに搭載するため、エンジン設計にはオールアルミ化のほか、中空カムシャフトやダイレクトチェーンドライブ採用など、スズキが培ってきた小型・軽量化技術を結集したという。

250psのパワーは6速MTまたは5速ATを介して後輪を駆動するが、これを確実に路面に伝えるため、足まわりは4輪ダブルウイッシュボーンと205/50R16タイヤが組み合わされている。コクピットはドライビングに集中できる環境にするため運転席と助手席をセパレート。プッシュ式スタータースイッチやタコメーターを中心に配したシンプルなメーターパネルなどで、スポーツカーを操る高揚感を掻き立てる演出が取り入れられている。回転収納式ルーフは重量増を嫌い手動式を採用するが、ワンピースにして操作性を高めた点にカプチーノからの進化が見える。

画像: スズキ C2はコンパクトなボディに1.6LのV8DOHCツインターボを搭載。

スズキ C2はコンパクトなボディに1.6LのV8DOHCツインターボを搭載。

■トヨタ MR-S

「トヨタスポーツ800の再来」と銘打って展示されたコンセプトモデルのMR-Sは、ハンドリングがピーキー過ぎるSW20型MR2の後継モデルとして開発された。MR2と同じ手法でミッドシップ化されるが、エンジンはハイパワーを追わず、1.8L自然吸気の1ZZ-FE型(140ps)を選択している。一方で、ボディサイズは2代目マツダ ロードスターとほぼ同じながら、185mm長いホイールベースと前65mm/後30mmも広いワイドトレッドを与えることで横滑り限界速度を高めた。

加えて、前後ストラットサスペンションのセッティングを後車軸寄り重量配分に対応したものにすることで、ミッドシップらしい旋回性能と安定性の両立を図っている。トランスミッションは新開発の5速スポーツシーケンシャルを搭載。クラッチ操作が不要なだけでなく、ステアリングのボタンでシフト操作(表がダウン/裏がアップ)ができたことから、トヨタは「気分はF1ドライバー」と謳った。このコンセプトモデルは細部の手直しを受けて1999年10月に発売される。発売当初は5速MTのみだったが、2000年には待望のシーケンシャルMTが追加設定されることになる。

画像: トヨタ MR-Sは、ほぼこのままのスタイルで1999年10月に発売された。

トヨタ MR-Sは、ほぼこのままのスタイルで1999年10月に発売された。

■日産 ハイパーミニ

「21世紀のクルマ社会で期待される新しい基準、楽しさを創造する」プロジェクトから生まれた、ピュアEVコミューター。乗用車の利用実態調査で約9割が、1日の総走行距離70km未満、乗員1~2名という結果に基づき車両サイズを可能な限り小型化。全長2500×全幅1475×全高1550mmという背の高いボディの四隅にタイヤを配置したプロポーションの中に、ゆったりとした2名分の空間と十分なラゲッジスペースを確保している。市街地での機動性を高めるためホイールベースを1790mmに抑え、最小回転半径3.5mを実現していた。

電源は高密度のリチウムイオンバッテリーをフロア下に搭載。後車軸上にマウントした小型パワーユニット(20kWの同期モーターとコントローラーを一体化)で後輪を駆動する。性能は最高速度100km/h、1回の充電での航続距離は130km(10・15モード)と公称した。室内はインパネ中央に速度、電池残量など車両状態を表示する大型液晶をセット。運転席左後方にオフセット搭載される助手席はウオークスルーのほか、クッションの折りたたみやシート自体の脱着も可能にしてさまざまな用途に対応するなど、コミューターとしての利便性を高める工夫が盛り込まれている。この後、1999年に量産型を発表。2000年に発売開始して、型式認定を得て市販された日本初の電気自動車となった。

画像: 日産 ハイパーミニは日本初の型式認定を得て市販された電気自動車となる。

日産 ハイパーミニは日本初の型式認定を得て市販された電気自動車となる。

■ダイハツ FR-X

当時としても珍しかったFRレイアウトを採用した2+2の軽自動車。まさに、世界最小クラスのFRライトウエイトスポーツだ。ただしエンジンは850ccに排気量をアップして、インタークーラーとターボを装着。100psと12kgmのパワースペックを発生していた。車重もわずか750kgと軽量で、発売されれば人気を呼んでいたかもしれない・・・。

画像: ダイハツ FR-Xは、往年の名車トヨタスポーツ800を彷彿とさせた。

ダイハツ FR-Xは、往年の名車トヨタスポーツ800を彷彿とさせた。

懐かしの東京モーターショーバックナンバー

This article is a sponsored article by
''.