2003年にデビューした2代目フィアット・パンダ(日本上陸は2005年)は、コンパクトながらも広い室内スペースを持つSUV風のクルマへと進化、2004年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど欧州での評価は高かった。そんなパンダに、2005年、4WDモデルが登場、さっそく日本にも導入されて評判を呼んだ。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年6月号より)

走り出すと、これがまた楽しい。こんなクルマ、なかなかない

パンダ4×4のルックスはなかなかいい。一気に65mmも上げられた車高は、黒モールに縁取られたホイールアーチ内のファットな14インチタイヤや、前後のバンパーに組み込まれた黒樹脂ガーニッシュによってSUVっぽく仕立てられている。が、ハードなマシンに感じられないのは、全幅より大きくなった全高のせいだろう。どことなくオモチャっぽい雰囲気を醸し出しているのだ。この気張ったところが微塵もないのがいい。

乗り込むと高くなった着座位置のため視界が新鮮に感じられる。さらに、左ハンドル+5MTが、パンダ本来のドライビングスタイルを教えてくれる。そう、ABCペダルを駆使してリズミカルにシフト操作をする本来のスタイルだ。フットレストをはじめ、ペダルレイアウトも自然なのがいい。もとより全幅が1.6mと小さいため、料金所などでも右手を伸ばせば事は足りてしまうから、左ハンドルゆえのハンデを感じることは少ない。また、グローブボックスの奥行きが大きかったり、助手席下には小物を収納できるボックスがしつらえてあったりと、右ハンドルのノーマルとの違いにも気づかされる。

走り出すと、これがまた楽しい。5MTは120kg増えた車重に備えてローギアード化されているため、頻繁なシフト操作を強いられる。でも、先述したように、そのシフト操作そのものが楽しいのだ。シフトがパシッと決まると、「やっぱりイタ車はMTに限る」と思てしまう。さらに、3速の守備範囲が広く、ノーマルのパンダの2〜3速の領域をカバーしてくれるから街中では重宝する。

ただし、ローギアード化は高速走行では裏目に出る。100km/h巡航は5速で3200rpm、4速では4200rpm、さらには3速では5800rpmに達してしまうのだ。とは言え、1.2Lエンジンは2000〜5000rpmが実用トルクゾーンだから高速巡航でも元気な走りを見せてくれる。

いい感じなのがブレーキの効きだ。ブレーキはノーマルでも結構いいタッチなのだが、フロントにベンチレーテッドを配した4輪ディスクとなったことで安定感が増している。

これには155から185へと30mmワイドになったタイヤの効果も大きいはずだ。このブレーキの効きの良さは、4WDと相まってパンダの新しい魅力になっている。

肝心の4WDはビスカスカップリングを介した実用タイプだ。それだけに4WDであることをさほど意識せずに走れるのがいい。今回は幸いなことに、試乗中にヘビーウエットも体験したが、とくに高速走行時での安心感は確認できた。タイトターン時にこそAWDゆえのブレーキング現象がちょっと顔を覗かせるが、それ以外は安定感が勝っている。軽快なノーマルの走りに対して、4×4の走りは落ち着きを感じるのだ。

コンパクトなボディにSUV的なイメージを持ったクルマってありそうでない。そうした意味でも今回のパンダ4×4の存在感は大きい。4WDといっても最近はオンロードが主体だ。それならば、高い経済性を備えたパンダ4×4は「あり」だと思う。電動サンルーフとアルミ付きの「プラス」も14.7万円高で用意されているから、一味違うコンパクトカーをお探しの方は、一度ショールームでチェックしてみることをお勧めする。(文:河原良雄/Motor Magazine 2005年6月号より)

画像: チョロQ的な可愛さが感じられるスタイリングがいい。気軽に4WDを楽しむのがパンダ流なのかも知れない。

チョロQ的な可愛さが感じられるスタイリングがいい。気軽に4WDを楽しむのがパンダ流なのかも知れない。

ヒットの法則のバックナンバー

フィアット パンダ4×4クライミング(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3570×1605×1635mm
●ホイールベース:2305mm
●車両重量:1060kg
●エンジン:直4SOHC
●排気量:1240cc
●最高出力:60ps/5000rpm
●最大トルク:102Nm/2500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:4WD
●車両価格:188万円8950円(2005年当時)

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