自動車業界100年の変革期と言われる昨今、若者のクルマ離れや所有からシェアリングへの転換など、新車販売台数の伸び悩みの要因となりかねない課題が多く存在する。その一方で、国内の自動車保有台数は増え続けているというデータもある。日本の自動車市場がいま、どのような状況にあるのか。

新車販売台数は30年弱で3割も減っている

日本の新車販売市場が縮小傾向にあるのはご存じだろう。新車販売台数は1990年の777万台をピークに、2018年は527万台で3割減となっている。一方で、日本国内の自動車保有台数は1990年の5527万台に対し、2018年は7794万台で3割増加している。この数字の裏側には、どのような事情が隠れているのだろうか。

これを解説をする前に、まずは1991年から現代まで日本の自動車市場にまつわるデータを見てみよう。それぞれの新車販売台数/当年保有台数を比較(下記)してみると、新車販売台数が頭打ちなのに対して、保有台数が増えていることが分かる。

年:新車販売台数/保有台数
1991年:753万台/5776万台
2000年:596万台/7186万台
2010年:496万台/7518万台
2018年:527万台/7794万台

新車販売台数が頭打ち、自動車保有台数が伸びている要因は複数考えられる。ひとつは廃車台数の減少である。1991年に531万台だった廃車台数が、2016年に465万台と66万台減少している。

近年、自動車の耐久性は向上している。それなら先進安全装備の装着有無を無視すれば長期間に渡って使用できるはずだ。この予測を裏付けるデータが車齢である。一般財団法人自動車検査登録情報協会が公開している車齢によると、1991年の乗用車の平均車齢が4.5年であったのに対し、2018年では8.6年と倍近くに伸びている。

耐久性の向上だけが原因ではないが、1990年前後に製造された日産のR32型GT-Rやホンダの初代NSX、マツダのFD3S型RX-7などが、ほぼ30年経った現在でも中古車市場で高値で取引される事実でもそれがわかる。この頃から車両のシャシやボディの剛性感をセールスポイントに挙げる車種が増えた。ユーザーの目に見えない部分に開発費をかけ、自動車本来の「走る・曲がる・止まる」の各性能を磨き込むクルマ作りになっていった。この姿勢はスポーツカーやフラッグシップカーだけでなく、小型車にもフィードバックされ、国産車全般の耐久性向上につながっているのだ。

もうひとつは日本経済の停滞だ。バブル崩壊後の1994年以降、車齢が前年度を下回ることがなくなった。しかも1994年の車齢は4.8年、2006年で6.9年、2018年が8.6年と、12年ごとに車検回数が1回ずつ増えている。1994年ごろは2度目の車検前に車を入れ替えていたが、2006年には3度目の車検前、2018年には4度目の車検前になっている。つまり以前は定期的にクルマを買い換えていたユーザーが、節約志向のために長期間使用するようになったということも言えるだろう。

廃車台数の減少と車齢の長期化が保有台数増加の主因で、その結果がデータとして現れているのだ。

ただし、この傾向もいずれは転換するだろう。保有台数の増加は緩やかになりつつあり、やがて頭打ちから減少に転じることが予想される。これは高齢化社会によって、運転免許を返納するドライバーが増えることや、カーシェアリングのように個人所有せずクルマを使うサービスが増えていくと考えられるからだ。(文:猪俣義久)

This article is a sponsored article by
''.