2005年に日本上陸を果たした5代目E90型3シリーズは好調な販売を見せていた。ただそんな中、主力モデルと目されていた325iの導入は遅れていた。そこでドイツを訪れた際にテストを敢行、ここではその時のレポートをお送りしよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年9月号より)

330iほどのトルクはないが、むしろ穏やかで扱いやすい

BMW3シリーズがフルモデルチェンジしてE90型になり、好調に販売台数を伸ばしている。6気筒エンジン搭載モデルは、330iと325iの2種類が設定されている。330iは価格もいいが、スポーツカーのようなパフォーマンスを期待できる。それでは325iはどんなクルマなのか? 日本ではまだ試乗車が用意されていない325iにドイツで乗ることができたので、その印象をお伝えしよう。

N52B25Aというのが325iのエンジンコードである。BMWがニュージェネレーションと呼ぶスロットルバタフライがないバルブトロニックの2.5Lで、特殊マグネシウム合金のシリンダーブロックを採用した最新の直列6気筒ガソリンエンジンである。

試乗車は日本仕様と同じ6速ステップトロニックATだった。まずは普通にDレンジで走行してみる。市街地走行でのエンジン音は少しボーボーという感じの歯切れの悪い音だが、ガシャガシャした金属音がないまろやかなものだ。停止からアクセルペダルを踏み込むとアイドリング回転数からトルクがあり、アクセルペダルに従った加速が得られる。330iより穏やかだから扱いやすくて、ボクはこの方が好きだ。325iに乗ると330iが過剰なほどのトルクがあることがわかる。

制限速度が50km/hの市街地ではATがスムーズにシフトしていって、エンジンは低回転域を使うだけだ。かといってアクセルレスポンスに不満はない。低回転域でも必要にして十分なトルクがあるからだ。

100km/hまで出せる郊外の道では直列6気筒エンジンの美味しさが出てくる。交差点を曲がったあとやロータリーを抜けたあとにアクセルペダルを床まで踏み込むと、エンジン回転はグーンと上昇して気持ちのいい加速感が味わえるのだ。各ギアで目一杯引っ張ると1速は55km/h、2速は95km/hまで伸びる。

タコメーターは6750rpmからゼブラゾーンで、7000rpmからがレッドゾーンだ。アクセルペダルを床まで踏み込むとオーバーシュートで過回転になるのを防ぐためか、6800rpmでシフトアップすることもあったが、基本的には7000rpmまで引っ張って自動シフトアップする。

フラットトルクでどの回転域でも力があり高回転になっても躊躇なく元気良く回る。330iほどの太さはないものの、E90のボディを押し出すのに不満はない。回転はスルスルッと滑らかで、その中に1シリンダーずつのプルプルしたトルクを感じることができる。回転が上がると低回転域にあったボーボーとした音は小さくなって連続したビィーンという音が強くなる。

画像: BMW325i。E90型の代表車種になるのではないかと思うほどバランスがよかった。アウトバーンの速度無制限区間でも試乗することができた。200km/hまでは一気に加速するが、そこから230km/hくらいまでジワジワと伸びていく感じだ。

BMW325i。E90型の代表車種になるのではないかと思うほどバランスがよかった。アウトバーンの速度無制限区間でも試乗することができた。200km/hまでは一気に加速するが、そこから230km/hくらいまでジワジワと伸びていく感じだ。

サスのしっかり感とボディの良さを感じる

アウトバーンを走ってみる。100km/h時の各ギアでの回転数は3速4700rpm、4速3500rpm、5速2700rpm、6速2100rpmという具合だ。通常の流れでは150km/h程度までだから、6速は3200rpm程度でトルクも太い領域だからストレスなく走れる。

飛ばそうとしたとき、200km/hまではけっこう速い。3速は150km/hまで伸び、4速は200km/hまで引っ張れる。そこで5速に入れると5500rpmくらいだが、空気抵抗が大きくなっているので加速はジワジワという感じだ。230km/hくらいまでは体感したが、200km/hオーバーの領域では確実に330iの方が速い。

試乗した325iが履いていたタイヤはミシュラン・プレマシーZP ☆だ。ZPはゼロプレッシャーの意味でパンクしてもしばらく走れるランフラットタイヤだ。サイズは205/55R16 91Wで、車両指定空気圧は前2.2、後2.6である。

このタイヤは乗り心地が気持ちいい。もうランフラットタイヤの硬いイメージはない。16インチタイヤのメリットだろう。路面の不整にタイヤが当たったときの角はなく、伝わってくる振動にはまろやかさがある。

さらにスコスコとよく動くサスペンションが、大きなうねりを吸収してくれる。かといってソフトな感じではない。ふわふわする感じは一切なく、腰があってしっかりしている。ハンドルを切ったときにはしっかりした感じなのに、凹凸の吸収はちゃんとしてくれるのだ。

市街地走行ではサスペンションが硬い感じがしないのに、ほとんどロールを感じないから気持ち良く走れる。アウトバーンを飛ばしているとうねりで上下に大きく動くことがあるが、こんなときでも収まりがいい。着地のときもフルバンプ感はなく、スッと一発できれいに収まる。揺れが残らず揺れ幅が小さいから楽だ。長距離ドライブでも疲れないだろう。

ワインディングロードやアウトバーンのランプウェイを走るときに、ボディのしっかり感とサスペンションの良さを感じる。コーナリングの初期にすぐロールしないで、横Gを感じるようになる頃、少しずつロール角が大きくなる。そのロール角を保ちながらきれいなコーナリングができる。あるところで腰が抜けてしまうことがなく踏ん張っているのだが、その踏ん張りが強過ぎない。コーナリング中のふらふら感がなく、安定しているから安心できる。

この感じは単にバネとダンパーのチューニングが良いためだけでなく、ボディそのものがしっかりしていることで生まれるものだと思う。ボディがよじれないので、サスペンションが本来の仕事をしっかりできるのだ。

320iと330iの間に位置する325iだが、E90型の代表車種ではないかと思うほどバランスが取れていた。スポーツカーのような330iに対して、普通に乗るにはちょうど良く上質な味わいがあるのが325iだと思った。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2005年9月号より)

画像: フラットトルクで非常に扱いやすいN52B25A型2.5Lストレート6エンジン。3Lエンジンは過剰なほどトルクがあることが比較試乗でわかった。

フラットトルクで非常に扱いやすいN52B25A型2.5Lストレート6エンジン。3Lエンジンは過剰なほどトルクがあることが比較試乗でわかった。

ヒットの法則のバックナンバー

BMW 325i(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1817×1421mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2497cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
※欧州仕様

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