2005年、大きな注目を集める中、フランクフルトモーターショーでデビューした5代目メルセデス・ベンツSクラス(W221型)。そのワールドプレミアに先駆けてまず基本スペックや写真が公開されたが、それに続いて、新たに投入された技術的内容が明らかになった。少しずつ公開されるSクラスの驚異の全貌を振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年9月号より)

今回も数多くのハイテクを満載、とくに安全性を重視

これまでの新型発表時、必ずそうであったように、メルセデス・ベンツのシンボルであるSクラスには、今回も数多くのハイテクが搭載されている。とりわけこのモデルでは安全に関係する新機構が多いようである。

それを列記してみることにしよう。まずブレーキ・アシスト・プラスだが、このシステムはミリ波レーダーをクルマ前方に隈なく発射することによって先行車との距離、あるいは接近スピードを測定する。そして搭載されたコンピュータが衝突の危

険があると判断すると、ブレーキ・アシスト・プラスは瞬時に働いて減速を行う。

それはたとえドライバーがブレーキペダルを踏むのを躊躇していても遂行される。メルセデスはこのシステムの搭載が追突事故の明らかな減少につながると信じてい

る。同時にアダプティブ・ブレーキ・ライトも採用されるが、これはエマージェンシー・ブレーキの適用時にブレーキライトが点滅して後続車両に注意を促すものだ。

このブレーキ・アシスト・プラスはメルセデスがこれまでパイオニア的な役割をしてきたユニークな乗員保護システムであるPRE-SAFE(プリセーフ)と同調するように新たに設計された。すなわちブレーキによる減速加速度がある程度の数値を超えたり、スキッドを起こしそうになると、シートベルトを巻き上げシートサポート形状を膨らませ、さらに新たにサイドウインドウを閉めるプログラムも追加された。

また自動車間調整装置も改良されディストロニック・プラスとして再登場する。レーダーによって作動するこのシステムは、新たにスピードレンジを0から200km

/hまでに設定された。これによって渋滞時のストップ・アンド・ゴーにおいても自動的に前車との定められた間隔を保ち、さらに前が停車すればこちらもブレーキを掛けて止まる。そして前車が発進すればこちちらも再スタートする。

このブレーキ・アシスト・プラスとディストロニック・プラスとのパッケージで提供されるのがパーキング・アシストである。このシステムはウルトラソニックに変わってレーダーセンサーが使われるために精度が格段に向上している。

画像: 今回も数多くのハイテクを満載、とくに安全性を重視

すべての乗員が快適に過ごせる余裕のキャビン

ナイトビュー・アシストはニューSクラスの大きな売りもののひとつである。このシステムはフロントにある2基の赤外線ランプが暗闇の中に不可視光線を照射する。これにより、対向車のドライバーの目を射ることなく、ロービームの状態で150m以上先までの様子をドライバーに見せることができる。この結果、闇夜でも歩行者や駐車場のクルマ、そしてドイツでは夜間に頻繁に遭遇する動物も捕らえることができる。

これらの対象を感知をする赤外線カメラはウインドシールドの内側にあって、赤外線の反射した前方のイメージをメーター内にディスプレイする。

また、操作系に関してもより細かな情報が届いている。新しい操作系のコンセプトはより進んだ人間工学と知覚行動心理学に基づいている。具体的には、これまでセンターコンソールに集中していた小さな同じような形状のコントロールスイッチ系を大きく2つに分けたことにある。

まず頻度の高い機能、主に空調などのスイッチをセンターコンソール、エアアウトレットの下に一列に整然とレイアウト。ダイレクト・セレクションスイッチと名付けられたコントロールユニットによって、ドライバーは視線を大きく下げることなく、また上下左右に探す行為をすることなく操作を行うことができる。

また、これまでメルセデスが採用してきたコクピットのマネージメントとデータ・システム、COMANDも新しくデザインされている。新たにコマンドコントローラーといわれる操作ダイヤルは、センタートンネルの上、これまでシフトレバーのあった場所に新しくレイアウトされている。

まさにBMW7シリーズのiドライブを思わせる形状だが、機能はシンプルでオーディオやナビゲーションなどに限られる。この機能はダッシュボード中央付近まで延長されたメータークラスター内にある8インチカラーモニターに表示される。

ところで本来ここにあるべきシフトレバーは、ステアリングコラムに移動した。ダイレクトセレクトと呼ばれるこのシフトシステムは、すでにMLクラスで市場投入が行われている。これらの装備に関しては、開発中に何度もメルセデスオーナーと接触し、使いやすさに関して徹底的な意見交換ののちに導入されたと伝えられる。それゆえに7シリーズ導入時に起きたパニックは起きないと予想されている。しかし正直いってダッシュボードの意匠やコマンドコントローラーの形状など7シリーズとの近似性は免れない。

最後に前回お伝えできなかった細かな室内のデータについて記述しておこう。全体的にわずかに大きくなった新型Sクラスだが、室内は想像以上に広くなり、すべての乗員に最高の快適性が用意されている。

まずショルダーとひじ部分の変化は旧モデルに対してプラス39mm、ヘッドルームは5mm拡大している。またリアコンパートメントを特に重視しているロングホイールベース版では、前席と後席の間隔がさらに10mm増し、ニールームは11mm広がっている。

快適性の向上に対しては新たにデザインされたマッサージ機能付きのマルチコントゥアーシートが採用される。さらにサスペンションは改良されたAIRMATICエアサスペンションシステムが最良の快適性を提供する。

またドライバーはスイッチひとつでコンフォートとスポーツを選択することができる。さらに旧モデルと同じように120km/h以上あるいはスポーツモードでは車高が自動的に20mm低くなりハンドリングとエアロダイナミックを向上させる。

こうした装備を満載したニューSクラスは、世界でもっとも洗練された革新的なラグジュアリカーの座を一般公開の前にすでに確保したといっても良いかもしれない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年9月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

メルセデス・ベンツS500(2005年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:5076×1871×1473mm
●ホイールベース:3035mm
●重量:1960kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:388ps/6000rpm
●最大トルク:530Nm/2800-4800rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前4リンク後マルチリンク
※欧州仕様

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