2005年6月に日本発表されたアウディA6アバント(3代目C6型)。プレミアムでスポーティなワゴンとして、その後、人気を集めることになるが、3.2FSIクワトロを主力に、V8エンジン搭載モデルやFFモデルを用意していたのも特徴だった。ここではアウディA6アバントのトップモデルとベーシックモデルをとおして、最先端を走っていた3代目アウディA6アバントを振り返ってみたい。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年9月号より、タイトル写真はA6アバント4.2クワトロ)

上質で緻密なV型8気筒エンジンを搭載した「4.2クワトロ」

アウディジャパンがA6アバントにV型8気筒エンジンを搭載した4.2クワトロを用意したことを、僕は高く評価したい。その理由は大まかに言ってふたつ。

ひとつ目は、ニーズが少ないからと決めつけて本国にあるラインナップを導入しないのは『プレミアム』ブランドのすることではないと思うから。

そしてふたつ目は、その出来映えがなかなかのものだからだ。その一番のポイントは、標準装備とされるアダプティブエアサスペンションである。サプライヤーが異なるらしいが、その概要はA8のものとほぼ同じで、車高だけでなく減衰力も自動で、あるいはMMIを用いて手動で調整することができる。その効果は明らかで、走り出してその乗り心地の洗練ぶりに気付くには、きっと50メートルも要らないはずだ。

A6の、というかアウディのサスペンションは全般にバネ勝ちの傾向が強く、ステアリングの初期応答が鋭い反面、車体の抑えが甘く常に上下に煽られ続ける傾向がある。A6も例外ではなく、特に先代の4.2クワトロではそれがかなり強く出ていた。

ところがこのアダプティブエアサスペンションは、そうした動きをほぼ解消してしまった。車体をフラットに保ったまま、サスペンションだけがきれいに上下して路面の凹凸をやり過ごすような乗り味を、ようやく獲得するに至ったのだ。

そうなるとV型8気筒エンジンの気持ち良さも、心ゆくまで味わえるようになるというもの。その回転の緻密さは絶品だし、十分な力強さを感じさせる低速域を過ぎて、回転計の針が半分を過ぎた頃から始まる鋭くキメ細やかな回転上昇とリニアなトルク感は、抜群の爽快感を味わわせてくれる。

もちろんコーナーを攻めるなんて走りをすれば、また印象は違うのだろうが、アバントはそういうクルマではないはず。そういうわけで、個人的にはA6アバント、この4.2クワトロが一番気に入った。

素の良さが感じられる、V6エンジンを搭載したFFの「2.4」

V型8気筒エンジンを搭載した4.2クワトロと対局にあるのが、ベーシックモデルというべきFFの2.4モデル。これがもしかすると一般的にはベストA6かと思えるほどバランスが良い。

まず好印象なのはパワートレーンだ。最高出力177psを発生する2.4Lエンジンは、上から下までフラットなトルクカーブを描き、しかも回転上昇がとても軽やか。おかげでアクセルを踏み込んで積極的に走らせるのが、とても気持ちが良い。

そんな特性のエンジンと、常にエンジン回転の一番おいしいところを引き出してくれるマルチトロニックのマッチングはまさに最良と言える。もちろん、車重が3.2FSIクワトロより120kgも軽いことも効いているはずだが、どんな場面でも痛痒を感じることのない爽快な走りっぷりは、やはりこのエンジンとパワートレーンの賜物だろう。

もちろん、その軽さはフットワークにも違いをもたらしている。身のこなしには独特の軽快感があるし、タイヤが16インチということもあって乗り心地も軽やか。アウディ特有のバネ上が常に上下に落ち着かない動きを見せる感じは確かにあるのだが、車重のせいかその程度はもっとも小さい。2.4にはアダプティブエアサスペンションは用意されないが、これなら許容してもいいかなと思わせる。

さらにこのA6アバント2.4、586万円という車両価格も注目である。ざっとE240ステーションワゴンより100万円、525iツーリングと較べても50万円ほども安い設定はなかなか戦略的。A6アバントの中で見ても、装備はバイキセノンヘッドランプがオプションとなること以外はそれほど差はないから、買い得感は高い。

ベーシックモデルほど出来がよく、買い得感が際立つようでは商売としては困るはずなのだが、A6セダンで見られたその傾向は、アバントでも変わっていなかった。(文:島下泰久/Motor Magazine 2005年9月号より)

画像: アウディA6アバント2.4はFF駆動。アダプティブエアサスペンションの設定はない。しかし、フットワークは軽快で、走りのバランスは悪くない。買い得感もあり。

アウディA6アバント2.4はFF駆動。アダプティブエアサスペンションの設定はない。しかし、フットワークは軽快で、走りのバランスは悪くない。買い得感もあり。

ヒットの法則のバックナンバー

アウディA6アバント4.2クワトロ(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4935×1855×1475mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:246ps/6600rpm
●最大トルク:420Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:941万円(2005年当時)

アウディA6アバント2.4(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4935×1855×1475mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2393cc
●最高出力:177ps/6000rpm
●最大トルク:230Nm/3000-5000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格:586万円(2005年当時)

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