2005年8月の日本正式発表を前に、3代目マツダ・ロードスターに試乗することができた。場所は筑波サーキット、クローズコースでロードスターはどんな走りを見せたのか、振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年10月号より)

ふくらむ期待に容易に応える高い実力

新型ロードスターに乗るのは今回が2度目。初回は今年2005年6月にハワイ島で開催された北米仕様MX-5の試乗会で、ここでは格段にしっかりしたボディ、乗り心地とハンドリングに奥行きが出た足まわり、トルクフルだがもう少しパンチが欲しいエンジン、操作が簡便でスッキリした収納性を得たソフトトップ、質感と居住性は向上したが小物を置く「隙間」が消えたキャビンなどの印象を得た。

こうやって羅列すると功罪相半ばといった感もあるが、ロードスターの命である軽快で愉しい走りは変わらず、しかも総合性能は確実に進化しており、概ね好印象。ただ、ハワイ島は天気晴朗にして風光明媚でオープンエアの爽快さは堪能できたものの、道は直線路が主体で、ハンドリングをめいっぱい楽しめなかったのが心残りだった。

そんな欲求不満を見越したのか、マツダは今回ロードスターのホームコースとも言うべき筑波サーキットでの先行試乗会を開催してくれた。パドックに並んだ新型ロードスターは、僕が初めて接する右ハンドルの日本仕様。早速乗り込む。

左ハンドルでは気にならなかったが、右ハンドルはペダルが右側に寄っている感が強い。フロントミッドで後方にエンジンを積む上に、エキゾースト系を取り回すためだろう。ドラポジが極端に偏向しているようなことはないのですぐ馴れるが、いずれにせよペダルルームはタイト。ただし適切なペダルデザインもあってヒール&トゥはやりやすい。

チルトステアリングとシートリフターで適切なポジションを得た後、いよいよコースイン。ちなみに今回の試乗車は6速MTにビルシュタインサスを組み合わせたRSである。

ピットロードからメインコースに合流した直後の1コーナーは取りあえずインベタ。そこから緩いS字を直線的に抜けて第1ヘアピンにはイン側からアプローチするのだが、S字で縁石を軽く踏んだところで、早くも先代との違いが体感できた。衝撃のいなしがしっかりしているのだ。

先代は路面から大きな入力を受けるとボディが「揉まれる」感じがあったのだが、新型はドンと一度でいなし、後に変な余韻が残らない。センタートンネルの上面を強固なフレーム構造とし、これをサイドメンバーとつなげることで剛性を上げた効果がはっきりと感じられた。

第1ヘアピンの進入は路面がやや荒れていて、ここでハードなブレーキングを行うと浮き気味になった後輪が暴れることがあるが、そういった場面での接地性も非常に高かった。ブレーキ自体もコントローラブルで効き味も良く安心して攻められる。

続いて右にスパッと切り込む中速コーナーのダンロップブリッジ下。ここでの応答性も満足いくものだ。先代に較べると少しだけキレ味はマイルドになっているが、それでも十分軽快。しかもテールスライドに至る過程がとてもわかりやすく、時間的な余裕も大きく感じられて安心感がある。先代ではスライドがいつ起こるか身構える感があったのだ。

ダンロップ後は大きな左コーナーをトレースし奥の第2ヘアピンへ。それ以前のコーナーでも感じていたのだが、新型のRSは6速MTを得たのに各コーナーで2速か3速かで迷うことがままあった。2Lとなりギアもクロスしたのだから、もっと適切なギアリングが得られるかと期待したのだが、瞬発力を考慮したのか全体にローギアードなのだ。

また、エンジン自体もサーキットという明確な目的を持って走るステージなので思いきり回せて、ハワイの時よりもパンチを感じられたものの、やはり中〜高速域の伸びがもう少し鋭いとベターだと感じられた。

エンジンとシャシの絶妙なバランスこそがロードスターの魅力だが、新型はシャシが勝っている領域がやや大きく感じられるのである。

そんなことを考えながら、筑波の勝負どころ最終コーナーへ。高速の複合コーナーで出口がきつくなっているため緊張感が高まる場所だが、ここでも新型は不安感なく4輪ドリフト状態に持ち込める懐の深いハンドリングを堪能させたのだった。

レースでタイムを削るような走りでは、また違った世界が見えてくるのかも知れないが、エンジンとシャシを一新した3代目ロードスターは先代の持っていたバランスの良さを大きく崩すことなく、相変わらず一級品の愉しさを維持している。

実は、大型化してパワーも上がったことで、僕レベルの腕でも筑波サーキットをめいっぱい攻めた満足感に浸れた先代の「ちょうど良さ感」がどう変化したのか心配だったのだが、これは良い方向に裏切られた。

安定性とコントロール性がさらに向上した新型は、先代以上にチャレンジしがいのある奥行きを持つスポーツカーだ。本来だったらそれをメディア対抗4時間耐久レースで存分に楽しめたはずなのだが、今回は都合で参加できない。それが返すがえすも悔しく感じられるほど魅力的なニューモデルである。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2005年10月号より)

画像: 初めて日本で試乗することができた3代目マツダ・ロードスター。写真はロードスターVS。ちょっと複雑だが、試乗車はロードスターRSにビルシュタインサスを組み合わせたモデルだった。

初めて日本で試乗することができた3代目マツダ・ロードスター。写真はロードスターVS。ちょっと複雑だが、試乗車はロードスターRSにビルシュタインサスを組み合わせたモデルだった。

画像: ロードスターVS。マツダ伝統のT字型インストルメントパネル。32mmの調整幅を持つチルトステアリングが初搭載され、適切な運転姿勢がとれる。

ロードスターVS。マツダ伝統のT字型インストルメントパネル。32mmの調整幅を持つチルトステアリングが初搭載され、適切な運転姿勢がとれる。

ヒットの法則

マツダ・ロードスターRS(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3995×1720×1245mm
●ホイールベース:2330mm
●車両重量:1100kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:170ps/6700rpm
●最大トルク:189Nm/5000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●車両価格:250万円(2005年当時)

マツダ・ロードスターVS(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3995×1720×1245mm
●ホイールベース:2330mm
●車両重量:1100kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:166ps/6700rpm
●最大トルク:189Nm/5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:260万円(2005年当時)

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