昭和は遠くなりにけり、か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ カムリ/ビスタ」だ。

トヨタ ビスタ/カムリ(SV10型):昭和57年(1982年)3月発売

画像: ビスタとカムリではフロントグリルのデザインなどが異なる。5ドアはビスタのみに設定された。

ビスタとカムリではフロントグリルのデザインなどが異なる。5ドアはビスタのみに設定された。

1982年(昭和57年)3月、トヨタは小型FF乗用車としてビスタ/カムリを発売した。先代のセリカ カムリまでのFR方式がFF方式となっただけではなく、本格的に小型乗用車がFFに切り替える端緒を切ったのだ。

ビスタ/カムリのコンセプトは「機能美あふれるスタイル」、「低燃費と優れた走行性能」、「ワイドで快適な居住空間」で、先代のカムリ2000GTのようなスポーツ色はなくなってしまった。デビュー時に搭載されたエンジンは1S-LU型。1.8Lの直4 SOHCでパワースペックは最高出力100ps/最大トルク15.5kgm。実用域での燃費(10モードで14.0km/L)や静粛性に重点が置かれている。吸気系に新キャブレターやエレクトリックエアコントロールバルブ(EACV)を組み合わせた空燃費制御システムを採用したのもポイントで、三元触媒を有効に働かせるのはキャブレターでは困難なところを、吸気系のフィードバックによって理論空燃費に調整し三元触媒の活用と低燃費を実現している。

画像: インパネのデザインはオーソドックス。上級グレードではデジタルメーターも設定された。

インパネのデザインはオーソドックス。上級グレードではデジタルメーターも設定された。

FFとしたことで、エンジン横置き搭載を成立させるための工夫としては、新型の4点支持円筒型エンジンマウントを採用した。これがエンジンからボディへの振動伝達を効果的に抑制した。さらに防振型エアクリーナーを採用することなどで低騒音化を図っている。トランスミッションはギア比をワイド化した新型トランスアクスルを採用した。これが燃費はもとより静粛性のアップにも貢献している。登場時には5速MTのみだったが、同年7月には2ウエイオーバードライブ付4速MTを追加している。

FF化するにあたりシャシも新設計となった。足回りはワイドトレッド化に加え、前後ともストラット式の4輪独立サスペンションとした。小型乗用車ながら高級感のあるサルーンカー的乗り心地を目指したのだ。ステアリングにはラック&ピニオン式を採用している。突出したところはないが、全体的なバランスを取ることで高速安定性、横風安定性の確保、シャープなハンドリング、優れたコーナリング特性、快適な乗り心地を高次元にまとめたといえる。

画像: 1982年8月にビスタ5ドアハッチバックとともに追加された2Lの2S-ELU型エンジン。

1982年8月にビスタ5ドアハッチバックとともに追加された2Lの2S-ELU型エンジン。

1982年8月にはビスタに2000シリーズおよび5ドアリフトバック、カムリに2000シリーズを追加するなどの変更も加えられているが、このままでは良くできたファミリーカーで終わってしまうクルマだった。転機となるのが1984年6月に3S-GELU型の2L直4 DOHCエンジンを搭載した2000ツインカム系を追加したこと。これが同エンジンの初搭載であるとともに日本初のFFツインカム車となった。最高出力160ps/6400rpm、最大トルク19.0kgm/4800rpmというスペックは、ノンターボとしては当時最高のパフォーマンス。10モード燃費も12.0km/Lで経済性にも優れていた。

初代のビスタ/カムリはちょっと地味な存在となってしまったが、トヨタがFFに本格的に舵を切るターニングポイントとなり、最終的にはスポーツ色も打ち出すことになったのだ。

画像: セダンでもワゴンでもない、独特の5ドアハッチバックのスタイルは今までの国産車にはなかった。

セダンでもワゴンでもない、独特の5ドアハッチバックのスタイルは今までの国産車にはなかった。

昭和の名車のバックナンバー

トヨタ ビスタ 5ドア 2000VE 主要諸元

●全長×全幅×全高:4415×1690×1370mm
●ホイールベース:2600mm
●重量:1045kg
●エンジン型式・種類:2S-ELU型・直4 SOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:120ps/5400rpm
●最大トルク:17.6kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:165SR13
●価格:154万7000円

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