交通違反で検挙された時「1年以内に違反したことはありますか」と警察官に聞かれることがある。これはなぜなのだろうか。また、ほかにもいろいろと質問されることがあるが、これらの質問の意図は、どのようなものなのだろうか。

運転者に安全運転を促す意図があるのではないか

もうすぐ、春の全国安全交通運動を迎える。幹線道路の多くで安全指導のための検問が敷かれ、取締りも強化される。こうした取り締まりで警察官に交通違反で捕まり、こんな質問をされるひとが多いという。「過去1年以内に違反したことはありますか」と。

果たしてどのような意図に基づいて、この質問を運転者に投げかけるのか。まずは警視庁に問い合わせてみた。すると「警視庁として何かしらの意図をもって、交通取締り時に質問を行うよう指示しておりません」という返答があった。その理由は「警察官の質問は違反状況や運転者の様子にもよるので、マニュアル的に指導はしておらず、現場に任せています」ということだった。

交通違反の現場ではさまざまなシチュエーションが想定されるから、という実に理に適った返答だ。つまり質問の意図は、質問者にしかわからないということだ。そこで筆者の私見による質問の意図を紹介したい。

「1年以内に違反をしたことはありますか」の質問には、今後の安全運転を促す意図があるのではないかと考える。

というのも、日本の運転免許は点数制度(累積方式)が採用されており、2020年2月現在では過去3年間の違反点数の合計により、行政処分が決まる。違反点数の累積が6点から14点ならば運転免許は停止(免停)され、15点以上で運転免許取消(免取り)処分となる。

ただしこの加算点数には、「最後の違反から1年間無事故・無違反であればリセットされる」というルールがあるのだ。

もしこのルールを知らない運転者が交通違反で検挙されると、自暴自棄になって乱暴な運転をしてしまう可能性もある。そこで警察官は、1年間無事故・無違反であれば点数に合算されない制度を教え、今後の安全運転を促す意図をもって質問をしているのではないだろうか。

ちなみに、この「リセットされるルール」に特例がある。もし過去2年間に無事故・無違反ならば、交通違反を犯してから3カ月間無事故・無違反で過ごすと違反点数は合算されない、というもの。ここで言う交通違反はあくまで違反点数が3点までの反則金が科される軽微なものであり、違反すると即刑事罰に問われる特定運転行為(あおり運転)や運転中の携帯電話使用、速度超過、虚偽の申請で車庫証明を取得するいわゆる車庫飛ばしなどは対象外だ。

画像: 警察官に呼び止められて気が動転してしまうかもしれないが、焦らず怒らず、警察官の質問には一度落ち着いてから受け答えしよう。

警察官に呼び止められて気が動転してしまうかもしれないが、焦らず怒らず、警察官の質問には一度落ち着いてから受け答えしよう。

他の質問はどんな意図が考えられるのか

交通取締りの場面であっても、警察官の質問はいわゆる職務質問に該当する。警察官が「必要」だと認めたら行うものであり、むやみに行われるものではない。実際、交通取締りで検挙されても質問されない場合もある。いろいろと質問されることに、どのような意図が考えられるのかといえば、余罪の追及だろう。

もし車内からアルコール臭を感じたら、酒気帯び運転を疑うのは当然だ。そこで「今日は飲まれましたか」といった質問をされるわけだ。もし未成年が同乗していれば、誘拐などの可能性を疑われて「お子さんですか」などと質問されることもあるだろう。不必要におどおどしたり目が泳ぐなど挙動不審な様子があれば、薬物所持/使用も疑われる可能性がある。

こうした警察官による質問を不快と感じる人も多いだろうが、特にやましいことがないのなら素直に答える方がいい。筆者はとある事件の直後に所用で現場近くを歩いていたら、警察官にポケットの膨らみを指摘されて職質を受けたことがある。そこにはキーホルダーしか入っていなかったのだが、ボディチェックや所持品の開示などにも応じて5分ほどで終了した。

一方、その風貌から薬物の売人と間違われやすい友人は職質されることも多く、それに嫌気がさして質問の回答を拒否。すると応援の警察官を呼ばれて、2時間を無駄にしたと言っていた。

警視庁は公式見解として警察官の質問の意図を把握していないと言っていたが、基本的には社会の安全と秩序の確保を目的としている。善良な市民としては、警察官に協力するのが得策だろう。(文:猪俣義久)

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