高速道路のトンネルを走行していると、必ずお目にかかるのが天井に吊るされた大型のファンだ。ファンというよりは、もはや航空機のジェットエンジンを思わせるこの代物、一体どのような役割があるのだろうか。

ジェットファンの主目的はトンネル内部の換気

日本各地の高速道路や自動車専用道路にあるトンネルに、まるでジェットエンジンのような形をしたファンが天井にいくつも設置されている。近くを通過すればわかるとおり「ゴォー」という稼働音は大きく、その名称もジェットファンという。多くが三井三池製作所によって作られたものだ。

ジェットファンは最大で風速30m/sないし35m/sもの風を発生させるほどの性能を持つ。これは電柱が倒れたり、クルマを横転させるほどの威力だ。設置される間隔はジェットファンの口径やトンネルの状況によっても異なるが、おおむね80〜100mおきとなる。高速道路のトンネル走行を経験したひとならご存じのとおり、迫力すら感じる大きさと威圧感さえある。

ではこの大きな扇風機は、高速道路のトンネル内でどのような役割を果たしているのだろうか。

ジェットファンの一番の役目は、トンネル内の換気だ。クルマが走行することによって発生する排出ガスや砂塵などを送風によって強制的に流すことで、外部からの新鮮な空気を取り入れることができる。トンネル内の澱んだ空気を排出するだけでなく、気温の上昇を抑える効果もある。

もしジェットファンが設置されていないトンネルを車両が走行すれば、蓄積した排出ガスが運転者の視界を奪い、外気取り入れの設定にしていればノドや肺などの健康被害を引き起こす。エンジンにはエアエレメントがあるとはいえ、汚れた空気を吸入し続ければ不調に陥る可能性も考えられる。こうした不都合をまとめて解決する手段がジェットファンであり、国土交通省ではジェットファンの設置や運用について定め、道路管理者がジェットファンを適正に運用している。

画像: トンネル内のクリアな視界を保つ役割をジェットファンは担っている。

トンネル内のクリアな視界を保つ役割をジェットファンは担っている。

上記のようにジェットファンの主な役目はトンネル内の換気であるが、通常時以外にも役に立つときがある。それがトンネル内での火災だ。何らかの原因で自動車火災が発生した場合、一酸化炭素を含む、人体に悪影響を及ぼす種々の有害物質が発生する。

もしジェットファンがなければ、トンネル内は立ちどころに火災の煙で充満し、窒息などの二次被害も発生する。しかし実際の高速道路ではジェットファンが設置されているため、有害物質は気流によりトンネル上部に巻き上がり、気流の方向に流れる。おかげで、火災現場からの安全な脱出が可能となるのだ。

ジェットファンは長いトンネル内に80〜100m置きに設置され、複数台をまとめて同一制御で作動させるのが普通であった。しかし、これでは必要のないジェットファンが過剰に動作し、電気を無駄に使っていた。そこで近年は、複数台のジェットファンをインバーター制御で個別に制御するシステムに切り替えられており、ジェットファンも進化している。(文:猪俣義久)

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