クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第32回は「フェラーリ F40」だ。

フェラーリ F40(1987-1992年)

画像: F40はエンツォ・フェラーリ自身が企画した最後のモデルであり、同社の40周年記念車でもある。

F40はエンツォ・フェラーリ自身が企画した最後のモデルであり、同社の40周年記念車でもある。

1987年7月、フェラーリの本拠地であるマラネロで、F40は発表された。その車名は今までのフェラーリの流儀とはまったく異なり、フェラーリ創立40周年を記念して製作されたクルマということになる。日本では「エフ フォーティー」とも「エフ よんじゅう」とも呼ばれるが、イタリア語では「エッフェ クアランタ」と読む。

F40は、288GTOが開拓したコンセプトを受け継ぎながら、新たなステージを目指したモデルだった。当時のフェラーリ他車同様に、デザインはもちろんピニンファリーナが手がける。とはいえ、前後の大きなカウリングをコンポジット素材のシングルピースとしたシンプルかつ明快な面構成は、それまでのピニンファリーナの女性的なラインとは一線を画すものだ。

低くワイドなフロントエンドからボディサイドにかけて設けられた冷却スロットやインテークダクト、リアにそびえる巨大なリアウイングなど、市販車というよりは競技車両といわれても納得させられてしまうスタイルになっている。そう、F40は「ストックの状態でレースに出場できるクルマ」といえるモデルだったのだ。

画像: 内装はレーシングカーのそれに最低限のカバーをしたもの、と呼べるほど簡素だった。

内装はレーシングカーのそれに最低限のカバーをしたもの、と呼べるほど簡素だった。

室内もスパルタンで、ダッシュボードとセンタートンネルはフェルトが貼ってあるだけ。インテリアトリムは皆無で、初期型のサイドウインドーはスライドパネルが備わるプラスチック製。室内にドアノブはなく、ワイヤーを引いて開けるなど、公道を走るレーシングカー以上の何者でもないと思わせた。

シャシはフェラーリの伝統に則ったチューブラー(鋼管)スペースフレームで、288GTO用に補強材を追加し、コンポジットパーツを接着剤で貼り付けて剛性アップを図る。とはいえ、基本は1960年代の設計であり、さすがに構造上の古さは隠せなくなってきた。

リアミッドに縦置きされるドライサンプのV8エンジンは、288GTOやその進化版である288GTOエボルツィオーネから引き継ぎ、F40のプロトタイプで開発を進めたも。総排気量は2936cc。ベルト駆動の90度V型8気筒 4バルブDOHCの圧縮比を7.7とし、1.1バールで過給する水冷のIHI製ターボチャージャーを2基ドッキングした。点火系と燃料噴射の統合制御にウエーバーとマニエッティ マレリが共同開発したIAWを使うのも、当時のフェラーリの流儀だ。

最高出力は478psに達し、最高速度は当時の世界最速となる324km/hを公称したF40は、総帥エンツォ・フェラーリが最後にプロデュースした市販フェラーリ車でもあった。その生産は1992年まで続き、288GTOの5倍以上になる1311台が生産されることになる。

画像: 288GTOは実戦未投入のコンペティションモデル「288GTOエヴォルツィオーネ」が5〜6台制作され、そこで試された最先端技術がF40に導入された。

288GTOは実戦未投入のコンペティションモデル「288GTOエヴォルツィオーネ」が5〜6台制作され、そこで試された最先端技術がF40に導入された。

フェラーリ F40 主要諸元

●全長×全幅×全高:4430×1980×1130mm
●ホイールベース:2450mm
●重量:1100kg
●エンジン種類:90度V8 DOHCツインターボ
●排気量:2936cc
●最高出力:478ps/7000rpm
●最大トルク:58.8kgm/4000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前245/40ZR17、後335/35ZR17
●当時の価格:4500万円

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