クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第51回は「ポルシェ 911GT1」だ。

ポルシェ 911GT1(1996-1998年)

画像: ヘッドランプはタイプ996と共通の「涙目」だが、ロー&ワイドなフォルムは911がベースとは思えない。

ヘッドランプはタイプ996と共通の「涙目」だが、ロー&ワイドなフォルムは911がベースとは思えない。

世界三大自動車レースのひとつ、ル・マン24時間レースはレギュレーションによって参加可能車両の規定は何度も変わっている。2020年現在では、いわゆる「ル・マン プロトタイプ」と呼ばれる純レーシングマシンが主流だが、1990年代中盤は市販車をベースにした「GTカー」によって行われていた。

1995年のル・マンではマクラーレン F1が総合優勝を飾り、他のGTレースでも圧倒的な強さを見せた。スポーツカー レーシングの雄であるポルシェが、この光景を黙って見ているわけにはいかない。そこで911をベースに「打倒マクラーレン F1」を目的に、1996年に生まれたのが911GT1だった。

当時のポルシェ 911(タイプ993)のキャビンやフロントセクションの一部を使い、リアにはスペースフレームを設けてエンジン搭載方式はRRからミッドシップに変更。したがって乗車定員は2名となる。ミッドシップ搭載されたエンジンはポルシェ伝統の水平対向6気筒だが、冷却方式は水冷となり、ヘッドは4バルブDOHC化され、そしてツインターボも装着。排気量は3164ccで、レース仕様の公称最高出力は600ps以上と言われている。

画像: 写真はレース仕様のエンジンだが、544psと61.2kgmを発生したストリートバージョンも基本的には同じ。

写真はレース仕様のエンジンだが、544psと61.2kgmを発生したストリートバージョンも基本的には同じ。

スタイリングも、キャビンや顔つきにこそ911の面影を残しているが、ロングテール化され巨大なウイングが装着されたリア回りはレーシングマシンそのもの。1997、1998年と進化を続け、とくに1998年仕様では911がベースとは思えないスタイルとなっていた。

GT1では規定により、公道仕様を25台生産することが義務づけられていたので、911GT1にはストリートバージョンが存在する。レース仕様とスタイリングは共通だが、エンジンは当時のヨーロッパの排出ガス規制をクリアするためにデチューンされていた。だが、それでも最高出力は544ps、最大トルクは600Nmというパワースペックを発生し、0→100km/h加速は3.7秒、最高速度は310km/hというハイパフォーマンスだった。

なお、レーシングバージョンの911GT1はデビュー戦となった1996年のル・マンでは総合2-3位を獲得したが、1997年は序盤は快調だったものの2台ともリタイア、そして1998年にようやく悲願の優勝を1-2フィニッシュで飾った。ちなみに、この時期にはメルセデス・ベンツ CLK-GTR、トヨタ GT-One、ニッサン R390GT1といった同規定のGT1マシンが多く登場したが、1998年に規定が変更されたため、いずれもストリートバージョンはほとんど生産されていない。

画像: 空力を重視したロングテールで、全長は4.7mオーバーと当時の911より45cm以上も長い

空力を重視したロングテールで、全長は4.7mオーバーと当時の911より45cm以上も長い

ポルシェ 911GT1 ストリートバージョン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4710×1950×1170mm
●ホイールベース:2500mm
●乾燥重量:1075kg
●エンジン種類:水平対向6 DOHCツインターボ
●排気量:3164cc
●最高出力:544ps/7000rpm
●最大トルク:61.2kgm/4250rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:6速MT
●タイヤサイズ:前295/35ZR18、後335/30ZR18

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