2016年に2代目へとモデルチェンジしたR8クーペ&ロードスターは、2019年8月に大きな進化を果たしている。自然吸気5.2L V10エンジンは、アウディの市販モデルとして過去最高の最高出力620psを発生。これに7速DCT(Sトロニック)を組み合わせる。クワトロ(4WDシステム)は、運転状況に応じて駆動トルクを自動で分配し、極限の状況では前輪または後輪のいずれかへ100%のトルクを伝達することも可能となっている。今回は新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」から、アウディR8クーペの試乗テストの模様をお届けしよう。

620ps/580Nmでも過激じゃなく扱いやすい

マイナーチェンジを受けたR8は、表面的な違いはそう多くない。クーペに限って言えば、これまでのR8 V10(570ps)とR8 V10プラス(610ps)の2グレード構成から、国内ではR8 V10パフォーマンスに一本化されている。

その最高出力はV10プラスを10psと20Nm上回る620ps/580Nmとされた。これはアウディの量産モデルとして史上最強のスペックとなるが、このレベルまでくると10psの差はそれほど大きくない。最高速はV10プラスより1km/h上回る331km/h、0→100km/h加速は0.1秒短縮して3.1秒と発表されているが、その違いを体感することは難しいだろう。

外観も細部で改良された。シングルフレームグリルは長方形に近かった従来型から、中央部が強く左右に張り出した六角形へと進化。1980年代のスポーツクワトロをモチーフとするエアスリットをその上部に設けたことを含めて、ダイナミックな印象が強まった。

実際にハンドルを握ると、2代目の初期型R8のやや過激だった部分を目立たせなくする修正をアウディが施したように感じた。その変化は走り出した直後に気付く。それまでも十分にしなやかだった足まわりが、よりスムーズにストロークするようになり、低速時の快適性はさらに高まった。

車速を上げていっても、フラットな姿勢は崩さず、高速道路をこのままどこまでも走り続けたいと思わせるほどに心地いい走りが味わえる。

唯一、残念だったのはタイヤのパターンノイズが大きかったことで、これを除けばキャビンは全体的に静か。とりわけエンジンを高回転まで引っ張った時の「ギャーン!」というメカニカルノイズは格段に抑えられていた。

レブリミットが8700rpmに設定された超高回転型自然吸気エンジンの魅力は相変わらず凄まじい。まったくストレスなくタコメーターの針が急上昇していく様は驚異的だし、回転数に応じてパワー感がリニアに高まっていく感触は自然吸気エンジンならでは。鋭敏なレスポンスで驚異的なパワーを生み出すという感じだ。

ワインディングロードでペースを上げた時も、これまで以上にスタビリティが高く、あやうい挙動を示さない。

この方が兄弟モデルのランボルギーニ ウラカンとの差が明確になり、アウディらしさを強調できる。新型R8の方向性は納得できるものだった。(文:大谷達也/新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」より)

画像: 2020年3月26日にマイナーチェンジが発表されたアウディR8。今回試乗したのはR8 クーペ V10 パフォーマンス 5.2 FSI クワトロ。

2020年3月26日にマイナーチェンジが発表されたアウディR8。今回試乗したのはR8 クーペ V10 パフォーマンス 5.2 FSI クワトロ。

アウディR8 クーペ V10 パフォーマンス 5.2 FSI クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4430×1940×1240mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1670kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:620ps/8000rpm
●最大トルク:580Nm/6600rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●車両価格:3001万円

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