クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第64回は「ブガッティ ヴェイロン」だ。

ブガッティ ヴェイロン(2005-2015年)

画像: マッシブで迫力あるスタイリング。フロントノーズにはブガッティ伝統の馬蹄形グリルが誇らしげに備わっている。

マッシブで迫力あるスタイリング。フロントノーズにはブガッティ伝統の馬蹄形グリルが誇らしげに備わっている。

20世紀初頭にスポーツカー ブランドとして名を馳せた「ブガッティ」。ロマーノ・アルティオーリによって1990年代に一度復活し、スーパースポーツカーのEB110を世に送り出したが、バブル景気の崩壊とともに消え去る。

紆余曲折はあったが、ブガッティのブランドはVWグループが獲得し、ブガッティ・オートモビルとして正式に復活したのは1998年のこと。その最初の市販車が、ここで紹介する「ヴェイロン」だ。1999年のフランクフルト モーターショーで「シロン」の名で登場したプロトタイプは、1999年の東京モーターショーで「ヴェイロン」と名づけられたコンセプトカーに進化し、2000年のパリ モーターショーで正式発表されたが、発売されたのは2005年だった。

基本のデザインは、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。その車名は、1939年のル・マンをブガッティで制したレーシングドライバーのピエール・ヴェイロンに由来する。ちなみに、プロトタイプに名づけられた「シロン」もレーシングドライバーの名であり、ヴェイロンの後継モデルに名づけられることになる。

ヴェイロンの正式車名は「ヴェイロン 16.4」で、これがW型16気筒エンジン(狭角V8をさらにV型に配置する)に4基のターボを装着していることを意味する。総排気量は8L(正確には7993cc)で、最高出力は1001ps!、最大トルクは127.5kgm(1250Nm)という強大なパワーを、7速DSG(DCT)を介して4輪で駆動する。

画像: コクピットの後ろに縦置きミッドシップ搭載されるW16気筒クワッドターボは、つねにエンジンの一部が見えるようになっている。

コクピットの後ろに縦置きミッドシップ搭載されるW16気筒クワッドターボは、つねにエンジンの一部が見えるようになっている。

公称された最高速度は407km/hで、最高速度に達するためには空気抵抗となるリアウイングの自動展開をロックするため、いったん停車してブレーキを踏んだ状態で専用のキーを差し込むという儀式が課せられる。

これとは別に、高速走行に備えて最低地上高とリアウイングの高さを3段階に調整する機能も搭載されていた。いずれにしてもタイヤへの負担は大きく、ヴェイロンのために専用設計されたミシュランのPAXタイヤの価格は1セットで2万5000ドル(当時のレートで約270万円)と外誌で報じられている。

当時のVWグループ会長だったフェルディナント・ピエヒが「オーバー1000ps & 400km/h」カーの開発を指示したことから、ヴェイロンは誕生したと言われている。このヴェイロン以降、スーパーカーを超えた「ハイパーカー」という名称が使われるようになる。

ヴェイロンは上限300台の限定生産車だったが、2009年にグランスポーツと呼ばれるタルガトップ仕様が150台追加された。特別仕様車もいくつか造られたが、10年かけて450台を完売した。生産終了後の今もなお、驚異のマシンとして語り継がれている。

画像: リアスポイラーは3段階の角度調節が可能。最高速時は固定して抵抗の増加を抑えるが、ドラッグがなくなるのでストレート専用だ。

リアスポイラーは3段階の角度調節が可能。最高速時は固定して抵抗の増加を抑えるが、ドラッグがなくなるのでストレート専用だ。

ブガッティ ヴェイロン 16.4 主要諸元

●全長×全幅×全高:4462×1998×1204mm
●ホイールベース:2710mm
●重量:1888kg
●エンジン種類:W16 DOHCクワッドターボ
●排気量:7993cc
●最高出力:1001ps/6000rpm
●最大トルク:127.5kgm/2200-5500rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●トランスミッション:7速DCT
●タイヤサイズ:前265/680ZR500A、後365/710ZR540A
●当時の価格:1億6300万円

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