2006年4月のニューヨークモーターショーで発表されたベントレーコンチネンタルGTCは、クーペの「コンチネンタルGT」、4ドアセダンの「コンチネンタル フライングスパー」に続くコンチネンタルシリーズ第3のモデルだ。なんとも魅力的なイギリスの伝統的な高級ラグジュアリーオープンモデル。今回は2006年秋に行われたその国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年11月号より)

サクセスストーリーは続く

日本での新世代コンチネンタルシリーズの壮絶な人気(!?)は、僕のようなものでも窺い知るところだが、世界的にみてもベントレーのセールスは大変なことになっていて、まもなく年間販売1万台の大台に乗ろうとしているらしい。

とくに12気筒モデル=コンチネンタルGT系の売れ行きは凄まじく、昨年は年間約9000台を売り上げている。これは全世界の12気筒搭載車の約4割にのぼる数字で、とりもなおさず現在のベントレーの屋台骨は、この空前絶後のルーキーが支えているという証でもある。アライアンスによって変貌したブランドは多々あれど、ベントレーの場合はケタはずれの伸張ぶりといってもいい。

コンチネンタルGTシリーズの成功の理由は至極シンプルだ。ドイツの信頼性や耐久性を下敷きにして、メルセデス+αの値段でイギリスの伝統的な高級車を作ってはくれまいかという、誰もがそうあってくれればと思っていたことをテキパキと実現したからである。

元を辿ればアウディの基幹技術である駆動システムはツインターボの560psをしかと受け止め、酷暑だろうが大雨だろうが粛々と走りきる。操作系の精度や剛性、電装系の安定度もまったく不安感がない。

エキゾチックカーと称されるイタリアやイギリスのライバルに比べれば異様にタフでイージーと、ポストメルセデスと十分に名乗れる基本品質を備えている。そこに十八番の本革・本木目をグルングルン巻きにした内装がついてくるのだから、このテを日常乗るアシとして消費できる富裕層はもう、たまったもんじゃあない。

と、追い風が吹きまくるところに登場した第三のコンチネンタルがGTCというわけである。フライングスパーのルーツとされる1960年代前半のS2に若干数が艤装されたドロップヘッドクーペをイメージさせるそれは、新時代のコンチネンタルシリーズになくてはならないキャラクターだったのだろう。

それと共にGTCは、2000万円級のラグジュアリーオープンを持たないドイツ勢に対してブランドイメージを完全に差別化するという任も担っているようにみえる。実際、同価格帯のオープンモデルを見つけようにもフェラーリF430やランボルギーニ ガヤルド、アストンマーティンDB9といったスポーツ銘柄しか見当たらない。

それはベントレーが試乗会の場で発表した、想定されるGTCのオーナー像に対するプレゼンでも明らかだった。資産総額は300万ドル以上、1割強が数台のクルマをコレクションとし、3割が美術品を収集、3%がヨットやモーターボートを所有、4%が自家用機か社用機を所有……と、他の自動車メーカーでは聞いたこともないような数字が平然と並ぶ。この上に同じような用途のアズールが控えているのだから呆れてしまう。

が、現実にこの話にほど近い層が、年間1万台近くのベントレーのセールスを支えているのだから、地球は大きいもんだと思う。

画像: ルーフは遮音性、遮熱性に優れた5層構造のファブリック。車両重量はクーペ比で60kg増となっているが、560psのW12DOHCツインターボにとっては些細な重量増。

ルーフは遮音性、遮熱性に優れた5層構造のファブリック。車両重量はクーペ比で60kg増となっているが、560psのW12DOHCツインターボにとっては些細な重量増。

乗り心地はクーペよりいなしが効いている印象

GTCの幌部はカルマン製となる。昨今はメタルトップのオープンモデルが全盛となりつつあるが、幌を扱わせれば右に出るものはいないメーカーだけに、そのフィニッシュは完璧で、5層からなる幌の車室側には室内灯まで備わっている。

電動油圧式となるその開閉スピードは25秒。時速20マイルまでは走行中の開閉も可能となっている。

気になるボディ強度はサイドシルからバルクヘッド周りに補強を加え、腹底には前後サブフレームの各々に向けてサイドシルからV字型のブレースが2セット渡されることにより、クーペ比で遜色ない剛性を確保しているという。さらに強化されたAピラーと後席後端に格納されたプロテクションバーによって横転対策が施された。

それらによってGTCの車重は2485kgと、クーペ比で60kg増となっているが、この車格にもなれば些細な重量増はほとんど意に介しないというわけで、GTCのドライブフィールはクーペに対してほぼ遜色はないものだった。

貼り物の多い内装に加えて幌骨もあるとなれば、ねじれによる室内の擦過音が気になるところだが、風切りも含めたその辺の低級音は見事に封じ込まれている。コーナーの立ち上がりで560psに鞭をくれることもためらわないほど体感剛性も確保されている反面、乗り心地に至っては若干ながらクーペよりもいなしが効いているように思われた。

おそらくGTCの予約表に我先にと名前を連ねるのは、他あろうコンチネンタルGTのオーナーなのだろう。クーペの代役として問題ない快適性や耐候性を備えつつ、大役がひとつ乗るわけだから既存のオーナーは気が気でないはずだ。ちなみに日本市場では、すでに60台ほどのオーダーが入っているという。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2006年11月号より)

画像: レザーとウッドパネルを巧みに組み合わせ、高級感を演出しているインテリア。

レザーとウッドパネルを巧みに組み合わせ、高級感を演出しているインテリア。

ヒットの法則

ベントレー コンチネンタル GTC 主要諸元

●全長×全幅×全高:4804×2101※1×1398mm
●ホイールベース:2745mm
●車両重量:2495kg
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●排気量:5998cc
●最高出力:560ps/6100rpm
●最大トルク:650Nm/1600rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:312km/h
●0→100km/h加速:5.1秒
※欧州仕様
※1:ミラー間

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