2006年、日本では12代目スカイラインを名乗ることになる「インフィニティG35」の国際試乗会がアメリカの東海岸マサチューセッツ州で行われた。Motor Magazine誌もこの試乗会に参加、インフィニティの世界戦略車はどんなクルマだったのか、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年11月号より)

インフィニティブランドの稼ぎ頭

GT-Rを頂点に置いていたR32からR34の記憶が鮮明な日本人にとっては、その後継車の初試乗を北米で行うこと自体に違和感を持つかも知れないが、これには理由がある。

スカイラインは2001年登場の現行V35から大きく方向性を変え、FM(フロントミッドシップ)パッケージを特徴とする世界戦略車となった。その結果、この新型G35は今や北米で年7万台(クーペを含む)を売るインフィニティブランドの稼ぎ頭と期待されている。

一方で、国内版であるスカイラインは、その大きすぎる変身ぶりが旧来のファンに受け入れられにくく、雌伏の時代が続いている。

というわけで、新型G35は好調な北米市場で進化を立証すると共に、日本ではスカイラインの名を受け継ぐに相応しい、さらなる魅力の提示が必務となるはずである。

スタイリングに関して、それはかなりのレベルで達成されていた。FMパッケージを引き継ぐことからフォルムに似た印象はあるが、全幅プラス20mm、全高マイナス20mmとしロー&ワイド化すると共に、ウエッジシェイプを強め、Aピラーの付け根を後退させてロングノーズを強調。また、豊かな抑揚のサイドパネルやボンネット、切れ長のヘッドライトなど、のっぺりとしたV35とは異なる躍動的で艶っぽいエクステリアとなった。

センターコンソールで左右を分け乗員をラウンドしたトリムで包み込むインテリアにも同じことが言える。試乗車には複数の内装があったが、黒基調にアルミトリムは「スカG」の名に恥じない精悍さがあるし、アルミ部分に和紙のような独特の表面処理が施されモダンさ感じる。それに樹脂部分に潤いがあり、パーツの隙間も詰まり、質感が高い。

画像: 世界戦略車インフィニティ G35。日本仕様にモディファィされてスカイラインとして登場する。力強さと優雅さのバランスをとったスタイリングが特徴。

世界戦略車インフィニティ G35。日本仕様にモディファィされてスカイラインとして登場する。力強さと優雅さのバランスをとったスタイリングが特徴。

世界初の注目システム「4輪アクティブステア」

ホイールベースは先代と同じ2850mm。元々広さに不足はなかったが、パッケージの工夫でプラス5mm後席足下空間を拡げている。また、全高の20mm低下もドラポジを下げて対応しキャビン空間は十分の印象だ。

となれば気になるのは走りだが、プラットフォームはFRLの第二世代版で、フーガと同じくフロントサスをダブルウイッシュボーンとしたものをベースに、サブフレームのアルミ化など軽量・高剛性化を進めた。ねじり剛性は40%アップ、フロント横曲げ剛性は実に3倍。また、先代に対しパワートレーンの搭載位置を15mm下げているのも特徴だ。

その成果か、新型G35はコーナリング初期の一連の動きが滑らか。軽快かつ正確なハンドリングだ。旋回中の姿勢も過度なロールを伴わないフラットライド。それに乗り心地が締まった中にもしなやかさを感じられて好印象だった。

V35も同じコンセプトだったが、必ずしも達成し切れていなかった。2世代目にしてようやく狙った味が出た感じ。4輪の接地バランスに優れ安定感が高く、骨太なシャシに支えられた上質な乗り心地を実現した走りは新型G35の大きな魅力となるはずだ。

このように進化したシャシに加えて、新型G35は4輪アクティブステアという注目メカもオプション設定する。ステアリングの切り増し/戻しを自動制御する機構にリアアクティブステアを組み合わせ、より軽快な動きと高いスタビリティ、さらには取り回しの良さまで狙うという世界初のシステムだ。

実際、4輪アクティブステア装着車は、ハンドリングがさらにシャープになる上に、コーナリングスピード自体も相当高くなることが体験できた。ただ、走りを追求したせいか足まわりは標準モデルよりかなりハードになるし、ステア操作に対する反応もやや過敏な域に入っている。

これらは北米の要求に応えた味付けだそうなので、日本仕様でそれをどう変えるか、期待と共に待ちたい。

最後にエンジン。新型G35は型式は同じVQだが、80%を新規開発としたVQ35HR(ハイレボリューション・ハイレスポンス)を搭載している。基本骨格から見直すことでレブリミットを6600rpmから7500rpmへと引き上げ、同時に北米仕様で306psへとパワーアップ。

走ってもその効果は明らかで、従前のVQより格段に回して楽しいエンジンになった。ただ、シフトやペダルに伝わる振動は取り切れていないし、時代を考えると直噴化など新たな展開も欲しかった。

組み合わされるATもマグネシウム製のステアパドルを奢った上に、新たにDsモードを追加するなど相応の進化は見せているが、この時期なら5速と言わず、さらなる多段化を望みたかった感もある。

このように、基幹となるメカに新展開は少ないG35だが、走りの質の向上は著しい。これなら北米市場は間違いなく満足だろう。問題はスカイラインの名が今なおあまりに大きい日本。過去の呪縛から解き放たれ、今や貴重なミドルサイズのFRスポーツサルーンとして正当に評価されることを願ってやまない。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2006年11月号より)

画像: ラウンドしたトリムで運転席と助手席をセパレートして、乗員を包み込むようなデザインとしたインテリア。

ラウンドしたトリムで運転席と助手席をセパレートして、乗員を包み込むようなデザインとしたインテリア。

ヒットの法則

インフィニティ G35 主要諸元

●全長×全幅×全高:4750×1773×1453mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1586kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:306ps/6800rpm
●最大トルク:363Nm/5200rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FR
※米国仕様

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