クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第99回は「フォード GT」だ。

フォード GT(2017年−)

画像: 全高は1110mmと、最新世代のスーパーカーの中でも特に低い。まさに地を這うようなスタイリング。

全高は1110mmと、最新世代のスーパーカーの中でも特に低い。まさに地を這うようなスタイリング。

2020年の初めに日本でも公開されて人気を呼んだ映画「フォード vs フェラーリ」の主役ともいえるクルマが、1960年代のル・マン24時間レースなどで大活躍したレーシングカー、フォード GT40だった。正式名称は単に「GT」だったが、車高が約1m(ほぼ40インチ)しかないところからGT40と俗称されたほど地を這うような低い車高のミッドシップ レーシングカーのスタイルは、ランボルギーニ ミウラに影響を与えたといわれている。

フォード GTは市販モデルのロードカーも作られたが、高価で扱い難かった。そのため、数多くのレプリカが製造され人気を集めていた。そこで20世紀末ごろからフォードはGT40の復活(復刻?)を計画し、1995年には「GT90」というコンセプトカーを発表したが、市販には至らなかった。

2003年のデトロイト モーターショーでフォード社の創立100周年を記念してフォード GTが復活した。GT40を踏襲したスタイルで、558psを発生する5.4LのスーパーチャージドV8 DOHCをミッドシップ搭載していた。日本には正規輸入されなかったが、レースではスーパーGTなどに参戦していた。

2015年のデトロイト モーターショーで突然ワールドプレミアされ、サプライズデビューを飾ったのが、ここで紹介する3代目となるフォード GTだ。レプリカ風だった先代とは異なり、往年のGT40のスタイルを現代風にソフィスティケートさせた、斬新なエクステリア デザインを採用している。しかも、レースに参戦することを前提に設計されているので、空力的にも洗練されたスタイリングとなっている。ドアの開閉は前ヒンジのバタフライ式だ。

画像: 「POWERED BY FORD」とカバーに刻まれた3.5LのV6ツインターボ「エコブースト」エンジン。

「POWERED BY FORD」とカバーに刻まれた3.5LのV6ツインターボ「エコブースト」エンジン。

ロードカーの発表前、GT40の初優勝から50周年にあたる2016年のル・マン24時間レースに参戦し、LM-GTEクラスとはいえ往年の宿敵であるフェラーリを破って見事に優勝を果たした。

ロードカーは2017年から販売が開始される。21世紀も15年以上が過ぎると、もはやスーパースポーツカーといえどもパワーユニットに大排気量のマルチシリンダーエンジンやオーバーブーストの過給器を搭載するわけにはいかない。このフォード GTでは環境性能を考慮して「エコブースト」と呼ばれるダウンサイジングターボを搭載している。

エコと名は付くが、ミッドシップ搭載されるエンジンは3.5L(正確には3497cc)のV型6気筒 DOHCにツインターボを装着し、最高出力は647ps、最大トルクは746Nmというパワースペックを発生する。組み合わされるミッションは、7速DCT。シャシやボディ外板にはカーボンファイバーやアルミニウムを多用して、車重は1400kgを切るという軽さで、最高速度は348km/h、0→96km/h加速は3.0秒と公称されている。

2019年には700psにパワーアップされたサーキット専用車のGT マークIIも45台限定で発売された。スーパーカーとしては演出が素朴すぎるという評もあるが、性能は折り紙つき。現代のフォード GTも、ル・マン優勝の血筋を受け継ぐ「本物」なのだ。

画像: 分厚いドアの開閉はバタフライ式。大きくせり上がったリアウイングは車速に応じて展開する。

分厚いドアの開閉はバタフライ式。大きくせり上がったリアウイングは車速に応じて展開する。

フォード GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4763×2004×1110mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1385kg
●エンジン種類:60度V6 DOHCツインターボ
●排気量:3497cc
●最高出力:647ps/6250rpm
●最大トルク:746Nm/5900rpm
●燃料タンク容量:約58L
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:7速DCT
●タイヤサイズ:前245/35R20、後325/30R20

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