1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第1弾は「トヨタ ランドクルーザー60」だ。

クルマ本来の使命を極め、世界を舞台に活躍する

画像: 写真は前期型のVXグレードで、ハイルーフが標準となる。

写真は前期型のVXグレードで、ハイルーフが標準となる。

香川照之さんが編集長を務める「トヨタイムズ」のCMシリーズの中で、「このクルマだけは止めちゃいけない!」と荒野を走るクルマ、それが「ランドクルーザー」だ。クルマにとってスピードや操作性は重要だが、最たるニーズは「目的地までちゃんとたどり着く」ということではないだろうか。とくに物資や流通が限られる地域ではなおさらだ。それをランドクルーザーはもっとも確実に達成できるクルマといえる。どんな過酷な状況下でも目的地まで人や物を運ぶ使命を負っているのだ。

ランドクルーザーに使用されるパーツの一部は統一されている。モデルによって多少の違いはあるが、世界中のどの場所でも、いつの時代でも、ある程度のパーツは入手できるように基本設計をできるだけ崩さずリニューアルしてきた。それも命をつなぐためだ。トヨタイムズのCMに登場したのは現行型のランドクルーザー200だが、その曽祖父に当たるクルマが今回の主役、「ランドクルーザー60」だ。

「いつかはロクマル」と言われるほど大人気だった

画像: これまでに国内販売されてきたランドクルーザーのディーゼルターボエンジンの中で、もっとも評価の高い12H-T型でクローズドコースを激走するVX。

これまでに国内販売されてきたランドクルーザーのディーゼルターボエンジンの中で、もっとも評価の高い12H-T型でクローズドコースを激走するVX。

1980年、折しも日産の対抗馬、サファリが161系にモデルチェンジを遂げた同年に、ランドクルーザー60が誕生する。カタログには「ステーションワゴン」と記され、それまでは輸出や官庁向けだったランドクルーザーの無骨なイメージを大きく変えたモデルだ。当初は1ナンバーのバン(商用車)のみの設定だったが、「いつかはロクマル」との名言を生むほど、瞬く間にオフローダーの憧れの存在となり、世界的にも高く評価された。

エンジンは直4ディーゼル3B型(3431cc/98ps)と2F型(4230cc/140ps)の直6ガソリンを搭載。ちなみにF型エンジンは、ロングボディのいしずえを築いたFJ20系の登場で1955年に搭載されて以来、1992年に1FZ型が登場するまで、実に37年間に渡ってベースを繋いだ名機だ。登場時からすると、いかに先進なエンジンだったかが分かるだろう。

1982年には2H型(3980cc/115ps)の直6ディーゼルもラインナップ。そして「ランドクルーザー70」が登場した1984年には、先に紹介した2F型(4230cc/140ps)から3F型(3955cc/155ps)エンジンに換装された。また2H型エンジン搭載車には、国産クロカン4WD車では初となるAT車を設定した。

ランドクルーザー60のパワーアップ遍歴の勢いは止まらない。1985年のマイナーチェンジで、2H型(3980cc/115ps)の直6ディーゼルエンジンを進化させた12H-T型(3980cc/135ps)ディーゼルターボ搭載車を設定。さらに国産車初の機械式の前後デフロックをオプション設定した。そして1988年には3F型を電子制御燃料噴射装置化した、3F-E型(3955cc/155ps)が登場し、これがランドクルーザー初の3ナンバー車となった。

1987年のマイナーチェンジで角目4灯が登場

画像: 写真上部が前期型(1980〜87年)の丸目、下部は後期型(1987〜89年)角目4灯式。

写真上部が前期型(1980〜87年)の丸目、下部は後期型(1987〜89年)角目4灯式。

もちろん、人気を得た要因はスタイルにも見受けられた。従来の働くクルマ然としたジープスタイルから一変。ランドクルーザー60はシンプル&スマートなフォルムに進化した。ボディバリエーションも多く、年式やグレード別に、ハイルーフ・ロールーフ(標準ルーフ)やリアゲートの観音開き・上下開き、そしてオーバーフェンダーの有無などがラインナップされた。また、シリーズの印象的な丸目の初代に対し、1987年のマイナーチェンジで角目4灯が登場。以降、ロングボディファンの間でどっちが好きか「丸目vs角目」論争もあった・・・・とか。

ただ、角目の登場とともに備わった肉厚なフロント&リアバンパーは賛否両論。デカさを誇りたいユーザーや腰掛けには程よいが、アプローチ・デパーチャーアングルを稼ぎたい本格オフローダーは、これに泣かされた。結果、オフロード性能を向上するため、アフターパーツへ交換するオーナーも多かった。当然、外装だけでなく、サスペンション、パワーアップなどのカスタムや、ドレスアップのニーズも高まっていった。個性的な1台を作り上げるべく4WD車のアフターパーツショップが続々と誕生したのもこの頃だった。

以降、ランドクルーザー60は、仕事や公用車としてはもちろんのこと、カスタムやドレスアップを楽しむ人、オフローダー、そして生きていく上でクルマが不可欠な地域に住む世界中の人に愛され、そして今も走り続けている。長い歴史を持つランドクルーザーがロングセラーとなった理由はいくつもあるが、「世界中の人に必要とされるクルマ」という現実も、そのひとつといえるだろう。(文:田尻朋美)

This article is a sponsored article by
''.