今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「ホンダ フィット(初代)」だ。

ホンダ フィット(初代:2001年)

画像: 3.8mちょっとの全長ながらホイールベースは2.5m近く取られた、室内の広さを感じさせるサイドビュー。

3.8mちょっとの全長ながらホイールベースは2.5m近く取られた、室内の広さを感じさせるサイドビュー。

ロゴの後継車として登場したフィットは、まず第一印象としてロゴよりも立派になったな、と感じられた。ノーズを思い切り短くして、キャビンのボリュームを大きく取り、安定感のあるリアビューや力強いフェンダーラインなどで構成されたスタイリングが、そう感じさせてくれるのだろう。しかも、コンパクトカーにありがちな、小さくまとまった雰囲気がないのもいい。

全長3830×全幅1675×全高1525mmというサイズながら、おとな4人が乗っても狭さを感じることはない。リアシートのヘッド&フットスペースも十分に広い。このサイズで、この広さを生み出しているのは、高い衝突安全性を持たせながらのショートノーズ化と、新発想のフロントシート下のセンタータンクレイアウトを採用したプラットフォームによるところが大きいだろう。

コクピットまわりでは、Aピラー付け根の小さな三角窓が効果的で、室内は明るく開放感がある。アルミのリングに囲まれた3眼式メーターの視認性は良好で、メタリック塗装が施されたインパネもモダンな雰囲気だ。専用にデザインされたオーディオや、その下に配されたエアコンの丸いスイッチ類の処理もユニークだ。このあたりは、今までのホンダのコンパクトカーに比べると演出が巧くなったと感じさせる。

画像: 本革巻きステアリングも採用し、それまでのホンダのコンパクトカーよりインテリアの質感は格段に向上した。

本革巻きステアリングも採用し、それまでのホンダのコンパクトカーよりインテリアの質感は格段に向上した。

運転席の周辺に小物入れが多く、使い勝手もいい。少し硬めのシートも座り心地は悪くなく、長時間のドライブでも疲れにくい。リアシートは先に述べたように広さは十分で、座面を起こすチップアップモードやラゲッジフロアに折りたたんでしまうダイブダウンモードなど、アレンジは多彩だ。ラゲッジスペースも、普通の状態でもこのクラスとしては十分な広さがある。

走りも、期待に違わないものだった。ツインプラグのi-DSIエンジンの感触は良く、1.3Lから86psと12.1kgmというパワーとトルクはハイチューンとはいえないが、効率の良いCVTとの組み合わせでスムーズに車速を伸ばしていく。ロードノイズや風切り音も控えめで、遮音対策が効いているようだ。

足まわりも、悪くない。コーナーではロールが抑えられ気味でキビキビとした動きになっている。大きく負荷がかかった状態では、きちんとストロークしてくれる。ただし、路面の継ぎ目や細かい凹凸では、少しアタリの強さを感じさせる。このあたりは、もう少し熟成させる必要がありそうだ。ステアリングは電動パワステを採用しているが、全体的にタッチは軽め。もう少し、しっかり感が欲しいところだ。

とはいえ、フィットは基本がしっかりと作られているコンパクトカーであると感じさせてくれた。とくに、高い剛性を感じさせるボディが、全体の質感を大きく上げているようだ。広さやユーティリティも文句なし。素晴らしいプラットフォームを得たことで、ホンダのスモールカー全体の未来が、楽しみになってきたことは間違いない。

画像: テールゲートは立たせ気味で、しっかり感のあるリアビュー。ホイールはスチールでフルカバー付き。

テールゲートは立たせ気味で、しっかり感のあるリアビュー。ホイールはスチールでフルカバー付き。

■ホンダ フィト W 主要諸元

●全長×全幅×全高:3830×1675×1525mm
●ホイールベース:2450mm
●車重:990kg
●エンジン形式:直4・SOHC・横置きFF
●排気量:1339cc
●最高出力:63kw(86ps)/5700rpm
●最大トルク:119Nm(12.1kgm)/2800rpm
●ミッション:CVT
●タイヤ:175/65R14
●当時の価格:126万円

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