2007年、コンパクトBMWとして人気の1シリーズ(E87型)がフェイスリフトを受けている。ポイントは直噴エンジンの投入と3ドアボディの追加設定、そして「エフィシエント・ダイナミクス」。Motor Magazine誌も「ダイナミック性能を犠牲にすることなく、効率を高める」というBMWの動きに注目している。ここではジュネーブオートサロン直後にポルトガルで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年5月号より)

3ドアボディの追加も狙いはエフィシエント・ダイナミクス

コンパクトクラスとしては常識破りのFRレイアウト、好き嫌いのはっきり分かれる常識破りのデザインで2004年の夏に登場したBMW1シリーズ。周囲の心配をよそに、これまでに20万台以上がユーザーの手に渡っている。

さてこの1シリーズだが、最初は5ドアモデルのみでスタートしたが、そのキャラクターとして、もともと3ドアの方が似合う。そこで3年目に入った今年から、3ドアモデルも追加されることになった。

ところでこの3ドア化に対して、一時は3シリーズと同じようにクーペ化が噂に上ったが、ポルトガルの試乗会場に現れた3ドアはいたって常識的で、ルーフ形状もサイドウインドウの切り抜きも5ドアとまったく同一だ。単に、大きなフロントドアをはめ込んだだけである。

しかしその結果、重量は120iで1365kgと、5ドアと比べてちょうど10kg軽くなった。またこの3ドア発表と同時に、5ドアも含めたフェイスリフトも行われた。

まずフロントエンドの手直しだが、グラフィックが変更されたヘッドライト、やや大きめになりボディの表面と均一になったフレームが与えられたキドニーグリル、ワイドになり両脇が笑い顔の口元ように切れ上がったバンパー下エアインテーク、そして新しい四角いフォグライトがそれである。一方リアでは、テールライトの横線が基調になってワイドな印象を与えている。

またインテリアも、ステアリングホイールのスポーク部分、センターコンソール、シフトレバーなどにクロームが使用され、またドアトリムも2トーンに仕上げられるなど品質の向上に努めている。

さて、ここまではデザイナーの仕事であるが、バイエルンのエンジンスペシャリストたちは、このフェイスリフトをそれだけでは終わらせなかった。

この新しい120iに搭載されている欧州市場向けの4気筒ガソリン直噴エンジンは(181i用も)、第2世代となったハイプレシジョンインジェクションシステムを採用して、リーンバーン燃焼も行う新型エンジンに切り換えられたのである。排気量1995ccで最高出力は170ps/6700rpm、最大トルク210Nm/4250rpmを発生する。

EUドライブレンジにおいて、おおよそλ(空気過剰率)=3で燃焼するこの新エンジンは、約10%の燃費節約を約束している。キャタライザーには、もちろんNOx吸着タイプが採用されている。

さらに、この120iには燃費節約のためのシステムが3種類装備されている。もっとも象徴的なものが「オートスタート&ストップ」機構だ。市街地走行で信号待ちや、渋滞で停車した場合、クラッチを踏むとエンジンが停止する。これまでも日本やドイツでもお目にかかったが、BMWまでもが手掛けるとは驚いた。

続いて採用されたのが、ブレーキエネルギー回生システムである。ただしこれは、別にハイブリッドで電気モーターを回すためではなく、オルタネーターで発生した電気エネルギーがバッテリーに十分に溜まった時点で、これ(オルタネーターへの駆動)をカットオフし、駆動ロスを減らそうという考えである。

そして最後は小さなものだが、シフトインジケーターである。すなわちメーターナセル内のディスプレイ部にギアポジションと矢印があり、これによって適切なシフトタイミングを知らせるというものである。

これらの総合的な省エネ対策によって新しい120iの燃費は、BMWの発表によれば100km走行あたり6.4L、つまり1Lあたりおよそ15.6kmになる。CO2排出量では152gで、従来型の120i(150ps)より19%向上している。

しかも驚くべきことに、このクルマの性能は0→100km/hまでの加速所要時間が7.7秒、最高速度は224km/hと、ここでも従来型120iよりも良い成績なのだ。

画像: フェイスリフトされたBMW 1シリーズ。今回試乗したのは、新開発の2Lを直噴エンジン搭載した3ドアの120i。3ドアモデルは5ドアよりも10kgほど軽い。

フェイスリフトされたBMW 1シリーズ。今回試乗したのは、新開発の2Lを直噴エンジン搭載した3ドアの120i。3ドアモデルは5ドアよりも10kgほど軽い。

環境性能と動力性能をともに満足させる思想

良いことずくめのニュー120iに乗り込んでちょっと疑心暗鬼でスタートしたが、まず走り出してもネガティブな面は少しもない。ちょっとエンジン音が聞き慣れないのは、やはり200バールという高い燃料噴射圧によるものだと思う。さらに走り込んでいくと、これはむしろパワフルな2Lエンジンそのものである。

そして信号で停まり、クラッチを踏み込むとエンジンはストールしたように停止する。すると突然、キャビンは静けさに包まれる。

エンジンってこんなにうるさいものだったのか、と改めて驚く。再びクラッチを踏んでギアを入れるとスターターがシュンと回り、まさに一発でエンジンはかかる。もちろんまだこのシステムを信用しない人は、システムのスイッチをOFFにすることもできる。しかし市街地走行で2ケタの省燃費が達成された記録もあるのだから、これはONのままが良い。ちなみに気温が3度以下になると、このシステムは自動的に停止する。

続いてエネルギー回生だが、実はこのシステムが働いていることをコクピットから目で見ることができないのはちょっと残念である。本来は、加速時にはオルタネーターへの駆動力はカットされているので、通常よりもシャープな加速が行われているはずだが、これは別に体感することはできなかった。

また眼には見えるのだが表示が小さすぎるのが、シフトインジケーターである。スピードメーターとタコメーターの間のせまい窓の片隅にシフトポジションを表す数字と細かな上下の矢印があり、これがシフトタイミングを促す。それにしても小さな表示で、これはお年寄りには読めないだろう。

ところで言い忘れたが、この120iのウォーターポンプ、そしてステアリングのパワーアシストはともに電動式である。この2つのシステムも、やはり見たり感じたりすることはできなかったが、燃費向上には間違いなく貢献しているのである。

さて、このように細かな制御と新しいエンジンで、120iの実用燃費は従来よりもおよそ20%近い燃費の向上を達成しているといわれる。しかも走りを、ダイナミック特性を決して犠牲にはしていない。

そう、これこそが今後の、将来的なBMWの姿勢なのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2007年5月号より)

画像: 新開発の2L直噴直列4気筒エンジン。直噴化に伴ってバルブトロニック機構が廃止されたため、エンジン上面の眺めも変化。BMWのエンブレムがカラー版となった。

新開発の2L直噴直列4気筒エンジン。直噴化に伴ってバルブトロニック機構が廃止されたため、エンジン上面の眺めも変化。BMWのエンブレムがカラー版となった。

ヒットの法則

BMW 3ドア 120i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4239×1748×1421mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1375kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:170ps/6700rpm
●最大トルク:210Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●最高速:224km/h
●0-100km/h加速:7.8秒
※欧州仕様

This article is a sponsored article by
''.