2020年9月13日に行われたF1第9戦トスカーナGP決勝は、メルセデスAMGの1-2フィニッシュで終わったが、そのレース展開は平穏なものではなく、大荒れとも言えるものだった。そんな中で、ホンダ勢はレッドブルのアレキサンダー・アルボンが3位、アルファタウリのダニエル・クビアトが7位という成績を残す一方、マックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリーはリタイアという厳しい結果ともなった。トスカーナGPはどんなレースで、どこにポイントがあったのか。ホンダ勢の戦いを中心に振り返ってみよう。

リカルドを豪快にオーバーテイクしたアルボンが3位入賞

イタリアのムジェロ・サーキットで行われたトスカーナGPの決勝レースは、2度の赤旗中断により3回のスタンディングスタートが行われるという異例の展開になった。

予選3位のフェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、スタートで素晴らしいダッシュを見せたが、その直後にパワーユニットに問題が発生して失速、キミ・ライコネン(アルファロメオ・フェラーリ)に追突されてコースアウトしてしまう。予選16位のピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)も、このアクシデントのあおりを受けて、ライコネンとロメイン・グロージャン(ハース)に挟まれる形となりクラッシュ。これによって、フェルスタッペン、ガスリーともにいきなりのリタイアとなった。

画像: リカルドを豪快にオーバーテイクしたアルボンが3位入賞

このスタート直後の多重クラッシュによりセーフティカーが出動し、レースは7周目に再開される。しかし、このリスタートでまたも複数のマシンが絡むクラッシュが起き、レースは赤旗中断となる。

この時点でアルボン(予選4位)は4番手、クビアト(予選12位)は7番手。両者とも赤旗中断中にタイヤ交換を行い、アルボン、クビアトともにソフトタイヤを履いてリスタートする。

レースは10周目からスタンディングスタートで再開。アルボンはこのスタートで7番手までポジションダウンするものの、すぐに5番手に挽回、さらに前を行くダニエル・リカルド(ルノー)とランス・ストロール(レーシングポイント)を追いかける展開となる。一方のクビアトはこのスタンディングスタートをスムーズにこなして順調に走行する。

アルボンがリカルドとストロール攻略体制に入ったところで、前を行くストロールが激しいクラッシュを喫し、レースは再び赤旗中断に。この時点で13周を残しており、勝負の行方はチェッカーフラッグまでのスプリントレースで決することとなった。

最後のスプリントレースを前に、全車がソフトタイヤに交換。アルボンは4番手からのリスタートで一時ポジションを落とすものの、残り8周となったターン1でリカルドを豪快にオーバーテイクして3番手にポジションアップ、さらに2番手のバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)をプレッシャーをかける。しかし、ボッタスもこれに応戦、オーバーテイクのチャレンジが許されないままチェッカーフラッグを受けた。それでも終盤のアルボンの速さは目を見張るものがあった。

クビアトは最後のリスタートの7番手を守り、今季自己ベストリザルトでフィニッシュしている。

トスカーナGPを終えて、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「トスカーナGP決勝は、2度の赤旗という大荒れの展開の中、力強い走行を続けたレッドブルのアルボン選手が3位でフィニッシュし、キャリア初の表彰台を獲得しました。最後は赤旗での再開から残り13周のスプリントレースのような形になりましたが、見事に前のマシンを捉えて結果に繋げたアルボン選手には、お祝いの言葉を贈りたいと思います。アルファタウリのクビアト選手も周囲でクラッシュが多発する中でクリーンにレースを進め、7位入賞といいレースをしてくれました。一方で、フェルスタッペン選手がスタート直後のパワーユニットトラブルによりポジションを落とし、そのすぐ後に他車との接触によりリタイアすることとなりました。ガスリー選手もそのクラッシュに巻き込まれ、スタート周回で2台のマシンを失うことになったことは非常に残念に思っています。アルボン選手の表彰台についてはうれしく感じていますが、速さを見せていた週末にパワーユニットのトラブルを抱えることになり、我々にとっては厳しいレースになりました。すでにファクトリーでの分析を開始していますが、徹底的に原因究明と対策を行い、次戦からのシーズン後半戦に臨みます」と語っている。

また、ホンダの各ドライバーはレース後のインタビューで次のように応えている。

アレクサンダー・アルボン

画像: 3位入賞を果たしたアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。レースでの速さは十分、スタートがうまく決まれば2位もあった。

3位入賞を果たしたアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。レースでの速さは十分、スタートがうまく決まれば2位もあった。

「ここまで来るのは長い道のりでしたが、とてもうれしいです。常に目指してきたことでしたが、いろいろなことがあってたどり着けなかったので、今日表彰台に立てたことは特別な思いです。このチームに来てからずっとサポートしてくれたことへの恩返しになったのもいいことですし、僕の力を示すことができたと思います。タフなレースで、簡単ではありませんでした。このコースは厳しく、特にセクター2では高速コーナーが続きますし、何度もリスタートがあり、多くのことに対応しなければなりませんでした。グリッドからの発進に苦戦していたので、アグレッシブにオーバーテイクしていかなければならないと思っていましたが、マシンは本当によかったですし、ブレーキングもよかったので、それをアドバンテージとして活かしました。最後のリスタートではポジションを2つ落としましたが、表彰台に立てるチャンスを逃してなるものかと火がつき、3位を目指して激しくプッシュしました。今日の結果はとてもうれしいです」

マックス・フェルスタッペン

画像: マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。フリー走行、予選から好調だっただけに残念な結果になった。チャンピオン争いから後退。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。フリー走行、予選から好調だっただけに残念な結果になった。チャンピオン争いから後退。

「今日はとてもいいマシンを手にしているという実感があったので、本当に残念です。好スタートを切って、ルイス(ハミルトン)に並びかけようかというところでしたが、そこで急に加速しなくなり、パワーを失って減速してしまいました。これによって中団までポジションを落とし、後ろから追突されました。スタート直後に中団に落ちてしまえば、こうしたクラッシュに巻き込まれやすくなります。とても残念ですし、こうした位置にいるべきではありませんでした。今日はこれ以上言うべきことはありませんが、またもリタイアすることになってチームもがっかりしていると思いますし、競争力を発揮できると見込んでいただけになおさらです。ただ、アレックスがいい結果を出して表彰台に上がれたのはよかったと思います」

ダニール・クビアト

画像: 7位に入賞して貴重なポイントを獲得したダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。次はクビアトが表彰台に上がる順番か。

7位に入賞して貴重なポイントを獲得したダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。次はクビアトが表彰台に上がる順番か。

「体力的にもメンタル面でもとても難しいレースだったので、チーム全体でミスをせずに素晴らしい仕事ができたことを誇らしく思います。僕らにはポイント獲得が重要ですし、今日の結果と自分の走りに満足しています。チームは、2度の赤旗中断という難しい状況でも、素晴らしい仕事ぶりで、戦略も正しく機能しました。僕らの後方では多くの混乱がありましたが、逆に前の方は落ち着いていました。7位というのはとてもいい結果で、ランキングでも前との差を詰めることができました」

ピエール・ガスリー

画像: 前戦のウイナー、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)はリタイア。調子はいいのにうまくいかず。

前戦のウイナー、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)はリタイア。調子はいいのにうまくいかず。

「今日は最初の1コーナーの後でレースが終わってしまったことを残念に思っています。1コーナーの進入では多くのマシンがサイドバイサイドの状態で、かなり混雑した状況でした。2コーナーでキミ(ライコネン)とロメイン(グロージャン)の間にスペースを見つけたのですが、最終的には挟まれる形でどこにも逃げ場がなく、接触してしまいました。それで僕のレースは終わってしまいました。だれも責めることができない状況でしたが、大きなチャンスを逃したという意味では残念に思っています。予選では結果につながりませんでしたが、週末を通してペースは良く、順位を上げられる自信がありました。もちろんライバルとポイントをかけてレースができればよかったのですが、パフォーマンスがよかった部分をポジティブにとらえ、この勢いをソチに繋げられればと考えています」

画像: ピエール・ガスリー

タイヤを供給するピレリは「初開催のムジェロはタイヤに多くのものを要求するタフなコースでした。このグランプリは最初から最後までエキサイティングで、長く記憶されることでしょう。セーフティカーの導入や赤旗中断でタイヤ交換のタイミングは混乱しましたが、チームは急速に変化する状況に迅速に対応し、戦略を適応させる必要がありました。メルセデスAMGは3種類のコンパウンドをすべてを使用してレースをコントロールしました。とくにハードタイヤがムジェロの厳しい要求に適していました」と分析している。

次戦第10戦ロシアGPは、1週間のインターバルを挟んで、9月25日にソチ・オートドローモで開幕、決勝レースは9月27日に行われる。

2020年第9戦トスカーナGP 決勝 結果

優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)59周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+4.880s
3位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+8.064s
4位 3 D.リカルド(ルノー)+10.417s
5位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+15.650s
6位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+18.883s
7位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)+21.756s
8位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+28.345s
9位 7 K.ライコネン(アルファロメオ・フェラーリ)+29.770s
10位 10 S.ヴェッテル(フェラーリ)+29.983s

リタイア 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
リタイア 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)

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