欧州では2006年秋から販売が開始されたランドローバー フリーランダー2が、2007年6月から日本でも発売開始となった。1997年に登場した初代フリーランダーから9年。その走りはどこまで洗練されたのか。当時の試乗を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年9月号より)

3.2L直6エンジンや4WDシステムは全モデル共通

日本仕様には、3モデルを用意。ただし、フロントに横置き搭載される3.2L直列6気筒DOHCエンジンや瞬時に制御が働く新電子制御式ハルデックスカップリングを用いた4WDメカニズム、サスペンションから各種の走行安定制御装置などは全モデル共通だ。つまり、求める装備の違いによって選ぶことができるという設定だ。

ファブリックシート仕様で17インチの6スポーク型アルミホイールを備える「S(車両価格:390万円)」。ヒーテッドフロントスクリーン/本革とファブリック仕様のハーフレザーシート(フロント電動調整式)/DVDナビゲーションシステム/バイキセノンヘッドライト/5スプリットスポーク型17インチアルミホイールが標準装備に加わる「SE(460万円)」。ウッドトリム/フルレザーシート/電動パノラミックサンルーフ/プライバシーガラス/プレミアムオーディオシステム/アダプティブ・フロントヘッドライティング・システム/18インチアルミホイールがさらに追加される「HSE(530万円)」である。

試乗したのは、トップグレードのHSE。走行面でのS/SEEとの違いはタイヤ/ホイールのみで、車重も標準装備されるサンルーフの20kg分が加わるだけ(重心位置はやや高いはず)。

スタイリングは、ヘッドライト形状/フロントグリル/フロントフェンダー横のサイドベントなど、現在のランドローバー各モデルで採用されているデザインモチーフが各所に活かされている。「ランドローバー」だというアピールだ。スペアタイヤが床下収納となり、モダンな印象となった。

ホイールベースは先代より105mm延長され、全長は先代よりも135mm長くなった。室内空間では、特に後席の快適性が増している。荷室容量は、後席を倒さない普通の状態で546Lから755Lへと拡大された。

画像: ディスカバリー3のポジションが上方へと移ったことで、フリーランダー2も初代モデルよりその位置づけは高く設定されている。

ディスカバリー3のポジションが上方へと移ったことで、フリーランダー2も初代モデルよりその位置づけは高く設定されている。

高いオフロード性能、付加価値が生む独自の雰囲気

背中を伸ばした感じで着座して(ランドローバーが言うところの「コマンドポジション」)、それでも頭上にしっかりとヘッドクリアランスがあるので、余裕を感じながら走り出す。1910mmという全幅はそれなりに大きいが、ボディ四隅がどこにあるかを感じ取りやすいので「サイズを持て余す」という印象は受けない。

アクセルペダルを踏むと、ストレート6ならではの心地よい音とともに、エンジン回転がスムーズに上がっていく。アイシンAW製の6速ATは滑らかな変速でシフトアップして、車速を高めていく。ボディサイズや排気量から想像するよりも、ずっと軽やかだ。

このジャンルのモデルとしては、カイエンとレンジローバーに次ぐ高いボディ剛性を確保したというだけに、サスペンションがスムーズに動く印象。そして、乗り心地がいい。このあたりの感覚は、先代のフリーランダーから大きく進化したところだ。

前方にゆるいコーナーが見えてきた。ステアリングの操作とほぼ同時に、わずかにユラリとボディが揺れるがノーズは素直にコーナーに合わせて向きを変える。そこから先は、安定した姿勢で抜けていく。ブレーキング時に1920kgという車重は感じるが、踏力をわずかに強めた操作をすれば問題なかった。とにかく、素直に走らせることができる。全体的な騒音レベルは低く、これなら高速道路での巡航なども苦にならないだろうと感じる。

初代モデルは、1997年にランドローバーブランドのエントリーモデルとして発表された。1994年にトヨタRAV4、続いて1995年にホンダCR-Vがデビューしてそれぞれがともに欧米で好評を博す。そこで「コンパクト・プレミアム4×4」という独自のコンセプトのもと、ランドローバー車に相応しい走破性を備えながら、レンジローバーやディスカバリーよりも身近で使いやすいモデルとして企画された。

フリーランダー2では、その走破性をさらに高める新機構が搭載された。「GRC(グラディエント・リリース・コントロール)」がそれで、急勾配でブレーキペダルから足を離した際に、ブレーキ力を徐々にゆるめていくシステムである。実際、オフロードコースでGRCを試すことができた。

雨と霧で視界が悪い中、ぬかるんだ急坂路を下る。一度停止してGRCとHDC(ヒル・ディセント・コントロール)のスイッチを入れ、アクセルペダルを踏まない状態でブレーキペダルを離す。クルマがゆっくりと動き出すとともに、HDCの制御で速度が上がらないように自動的にブレーキがかかり、すんなりと急坂を降りることができた。下りの急坂路でブレーキを離すのには覚悟が必要だが、この機構ならばハンドル操作に集中できる。

現代のクルマとして求められるオンロードでの快適性能は、きっちりと確保されている。セダンやワゴンを前提とした常識が、違和感なく当てはまることは、相当に凄いことだと思う。なぜならば、セダンやワゴンには悪路の走破性など求められていないからだ。

確かに、日常的にその「特別な付加価値」を使う機会は少ないかもしれない。しかし、その付加価値が生む独自な雰囲気には、大きな魅力がある。

フリーランダー2は、先代ディスカバリーのオーナーの心にも訴える内容を備えていると感じた。時代に即してそのポジションをアップさせた、最新のエントリーモデルなのだ。(文:香高和仁/Motor Magazine 2007年9月号より)

画像: ランドローバー車ならではのインテリアの眺め。メーターパネル内にある6速ATのシフトポジション表示はやや見にくかった。

ランドローバー車ならではのインテリアの眺め。メーターパネル内にある6速ATのシフトポジション表示はやや見にくかった。

ヒットの法則

ランドローバー フリーランダー2 HSE 主要諸元

●全長×全幅×全高:4515×1910×1765mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:3192cc
●最高出力:232ps/6300rpm
●最大トルク:317Nm/3200rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:530万円(2007年)

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