ヴェイロンやシロンなどのハイパースポーツカーで知られるブガッティ社が、サーキット専用ながら新型ブガッティ ボリードを発表した。どのような形でリリースされるかは不明だが、火球の意味を持つブガッティ ボリードの驚愕のパフォーマンスをご紹介する。

パワーウエイトレシオは0.67ps/kgを実現

2020年現在、ブガッティ シロンは間違いなく究極クラスのロードゴーイングマシンだ。そんなシロンを開発したブガッティ社が究極のサーキットマシンを開発したら、どんなマシンになるのか。その答えが、今回発表されたブガッティ ボリードだ。FIA基準に適合したマシンであることから、レース参戦を睨んでいることは間違いないだろう。サーキットマシンとして一定の安全基準を満たしながら、ブガッティ ボリードが到達したパフォーマンスは、まさに圧巻のひと言だ。

画像: ブガッティ ボリードはサーキット専用のため、エンジンカバーにガラスがなく軽量化の一助となっている。

ブガッティ ボリードはサーキット専用のため、エンジンカバーにガラスがなく軽量化の一助となっている。

搭載エンジンはブガッティお得意の8L W型16気筒で、W型に配置された4つのバンクそれぞれに4気筒とターボ(つまりはクワッドターボ)を備え、絞りだす最高出力は1850ps/7000rpm、最大トルクが1850Nm/2000−7025rpmに及ぶ。駆動方式は4WDで、トランスミッションは最高速に照準を当てたギア比に設定された7速DCTだ。

車両重量はわずか1240kgで、パワーウエイトレシオ0.67ps/kg、トルクウエイトレシオ0.67Nm/kgと驚くべきものだ。最高速は500km/h以上で、同社のシロン スーパースポーツ300+が記録したギネス最高速記録の490km/hを上回る。0→100km/hはハイパーカーとしては平凡な2.17秒だが、0→500km/hは20.16秒だ。またル・マンのサルテ サーキットを3分7秒1、ニュルブルクリンクの北コースを5分23秒1で駆け抜けるという。

通常、飛行機が離陸する時の速さは240~300km/h程度だが、ブガッティ ボリードの最高速は飛行機の離陸速度をはるかに上回ることになる。最高速500km/hを達成できた秘密は、車両デザインに施されたエアロダイナミズムにある。

各種スポイラーや筋肉質にデザインされた前後フェンダーなどのエクステリアが効果的にダウンフォースを発生させ、車体の浮き上がりを防いでいる。320km/h走行時で発生するダウンフォースはフロントウイングで800kg、リアウイングではフロントの倍以上の1800kgというから、1240kgのブガッティ ボリードでは到底浮き上がりようもない。

さらにブガッティ ボリードの揚力低減の努力は独創的で、ルーフ上に設置されたエアインテークの上面は低速走行時は平面で空気を滑らかに流すが、高速走行時には泡状にデコボコを作り揚力を低減させる。これは世界初の装置だ。

画像: ブガッティ ボリードの黒色部分は無塗装のカーボンだ。フレンチブルーは40%しか塗装されておらず、これも軽量化につながる。

ブガッティ ボリードの黒色部分は無塗装のカーボンだ。フレンチブルーは40%しか塗装されておらず、これも軽量化につながる。

ブガッティ ボリードは1850psを発生するW16型エンジンを搭載するのだから、シャシやボディはかなり頑丈なはず。しかしブガッティ ボリードの車両重量はわずか1240kgで、一般に自動車部品の重さと頑丈さは比例する。この常識を打ち破ったのが、ブガッティ ボリードに採用される先端素材の数々だ。

ブガッティ ボリードの車体で、ネジやボディ骨格などの固定部品はチタン製だ。稼働する機能性部品の多くは、3Dプリンターで制作したチタン合金製中空パーツが使用される。最大肉厚が0.5mmながら引張強度は1平方ミリメートルあたり1250ニュートン(以下Nと表記)を達成している。引張強度は外部から力を受けてどれくらい変形しづらいかを示す指数だが、1250N/平方ミリメートルがどれくらいの強度かと言えば、震度7の地震に耐える建築物に使用される鋼板の引張強度が最大1000N/平方ミリメートル程度なので、ブガッティ ボリードの部品はエンジンパワー程度ではビクともしないだろう。

部品の軽さは、エンジンにも好影響を与える。エンジンのクランクシャフトにつながる補助ドライブシャフトは中空チタン合金パーツと高強度で超剛性のカーボンを組み合わせて制作されており、重量は従来部品の50%から1.5kg軽量だという。ドライブシャフトが全体として軽量になったため、クランクシャフトの回転抵抗が減り、エンジンの回転もより鋭くなる。

ボディは軽量モノコックで、高強度カーボン製だ。強度は航空宇宙産業で使用される素材並みだという。リア回りでは溶接鋼が使用されるが、厚さ1mmの鋼材で最大引張強度が1200N/平方ミリメートルだという。こちらも震度7の地震に耐えられるレベルの頑丈さだ。

画像: ブガッティ ボリードの巨大なリアウイングはチタン製で、重量は驚異の325gだ。

ブガッティ ボリードの巨大なリアウイングはチタン製で、重量は驚異の325gだ。

ここまで尖った性能のブガッティ ボリードは、サーキットマシンとして開発されたからこそ。ワークス専用になるのか、プライベーターにも販売するのかなどリリース詳細はまだ不明だが、甲高いサウンドでサーキットを駆け抜けるブガッティ ボリードの雄姿を早く見たいものだ。(文:猪俣義久)

ブガッティ ボリード 主要諸元

●全長×全幅×全高:4756×1998×995mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1240kg
●エンジン:W16クアッドターボ
●排気量:7993cc
●最高出力:1850ps/7000rpm
●最大トルク:1850Nm/2000-7025rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●フロントタイヤ:30/60 R18(※)
●リアタイヤ:37/71 R18(※)
※:ミシュランレーシングスリックタイヤ装着

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