2007年10月、2代目となる新型スマートフォーツーが日本に上陸している。早過ぎたとも言われる初代の誕生から8年、世界的に見れば思うようには販売が伸びなかった先代からどこがどう変わったのか。Motor Magazine誌では、メルセデス・ベンツ特集の中で、スマートに託された狙いに着目しながら試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

内外装のデザインもサイズもより「フツー」になった

スマートフォーツーが7年ぶりに新しくなった。全体のイメージはキープコンセプトながら、ボディもエンジンも大きくなったのがポイント。バリエーションは先代と同じく、クーペとカブリオのふたつが用意される。

先に言っておかなければならない。私は先代スマートフォーツーのオーナーである。惹かれたのは、それまでのクルマ造りの概念を覆した発想にあった。2人乗りと割り切り、全長わずか2.5mという超コンパクトなボディに、RR方式も含め、機能をギュッと凝縮して詰め込んでいたからである。他にはないこのサイズ感は、駐車も含め日々の使用に便利この上ない。

ソフタッチ6速シーケンシャルシフトをバイク感覚で操れば、十分流れをリードでき、高速走行もまったく問題ない。それでいて低燃費なのだから、「言うことなし」なのだ。クルマは複数所有しているが、取り回しが楽なので専ら普段の「足」としてスマートを愛用している。

まずはボディサイズのチェックから。全長は180mm拡大している。その内訳は、ホイールベースで55mm、前/後のオーバーハングで65/60mmとなっている。

前者は走行安定性向上のため、後者はクラッシュボックスの増設によるものだ。先代はオーバーハングがゼロに近かったから、ようやくクルマらしいルックスになったと言えるのかも知れない。

全幅は45mm拡大され、全高は10mm低くなった。先代の全高1550mmはタワーパーキング不可のケースもあったから朗報かも。新型は大きくなったとは言え、全長はまだ2.7mでしかなく、全幅も1.6mを切っているから、他にはないスマートならではの超コンパクト感は健在だ。

デザイン的に見れば、フロントは愛嬌ある顔も含め先代の雰囲気を色濃く残し、誰の目にもスマートと映るはず。サイドはリアクォーターウインドウを廃したものの、骨格であるシルバーのトリディオンセルを踏襲するため、やはり先代風。大きく変わったのはリアスタイルで、フェンダーをボディと一体化してボリュームアップ。斜め後ろから見るとそれが一層強調されるが、ちょっと「フツー」になった感じだ。

横バーとなったドアハンドルを引いてインテリアを見る。メーターやシフトなど基本的には先代と同じ配置ながら、S字曲線を描いていたダッシュボードは直線的に変更され、ここも「フツー」になっている。先代のポップな感じは影を潜め、Aセグメントへ昇格したような感じだ。

仔細に見れば、助手席がリクライニング可能になり、ワンタッチ機能が付いたパワーウインドウのスイッチが助手席分も含め備わり、ミラーが電動調整式になり、グローブボックスが新設されるなど、「フツー」になったことによる恩恵は数多い。

リアゲートはオープナーを介さずとも「フツー」に外から開けられるようになった。便利なゲートの上下2分割に変わりはないが、下側に物入れを内蔵したのはアイデアだ。

ラゲッジスペースは約50%増量の220Lを確保。トノカバーまでの高さに変化はないから、奥行きが10cm増えたことも含めボディ拡大の効果だ。広いとは言いがたいが、ボディサイズを考えれば「頑張った」と言える。助手席のシートバックを前に倒せば、大きな荷物も収納できるのは先代と同様である。

一方、カブリオは先代と同じく電動で開閉し、3パターンのオープン感覚「トライトップ」を楽しめる。サイドのルーフフレームは外してリアゲートに収納できるのも同じ。トップにはインシュレーターが加わり、先代のペラペラ感がなくなったのはニュース。閉じた際の静粛性は格段にアップしている。トップの開閉は走行中でも可能だ。

ひと通りチェックが済んだところでクルマに乗り込むと、まずドアを閉める音の変化に気付かされた。バシッという感じで重厚になっている。これはアルミからスチールへの素材変更によるものだろう。

ポジションを決めようとすると、シートのリクライニングがダイヤル式から、フランス車的なレバーに変更されていた。正面のスピードメーターは140から160km/hスケールにグレードアップしている。高速走行の自信の現れかもしれない。

後方を確認しようとアウターミラーを見ると、視界の広さに驚かされた。センターにあるキーを捻ると、後方から3気筒らしい軽快なサウンドが響く。このエンジンはNAの1Lで、三菱 i(アイ)用の発展版である。先代のメルセデス・ベンツ製の700ccターボと比べると、パワーで10psアップし、トルクは0.3kgmダウンしている。走り出すとスペック以上に軽快なことを知らされる。

NAならではのスムーズさと、トルク重視のフレキシブルさを合わせ持っているのだ。さらに、高回転を楽しむ余裕も生まれた。やはり「排気量アップに勝るチューンはない」だった。

使い慣れたソフタッチは、相変わらずシーケンシャルパターンのマニュアルモードのほうがキビキビと走る。オートモードに切り替えると、確かに先代よりはスムーズな変速をみせるものの、やはりギクシャク感は否めない。ただ、キックダウン機能が備わったため素早い加速が得られるようになったことと、何速で走っているかが表示されるようになったのは嬉しい変更だ。

乗り心地は先代よりしっとり感が出て、落ち着いたものになっている。先代にあった、ひょこひょこした感じがなくなっているのは、ダンパーの設定が効を奏しているのだろう。さらにステアリングを切ったときの感触までもしっとりとしていて、インフォメーションもしっかりと伝わってくる。これは電動パワステの設定変更だけでなく、フロントタイヤが10mmワイドになったことやトレッドが広がったことによる相乗効果だ。先に述べたエンジンも含め、ドライブ感覚はスマートとは思えないほど「フツー」になっていた。

高速道路に持ち込むと、先代とは打って変わって余裕を感じさせた。短いホイールベースのためピッチングは出るものの先代より確実に抑えられ、落ち着いたサスセッティングと相まって、高速での安定感は「フツー」のクルマに変身していた。フロント周りで発生するバサバサという風切り音も低減していて、合わせて静粛性も手にしている。100km/h巡航は、3/4/5速で5000/3800/3000rpm。NAらしく、この回転域からのピックアップはいい。ちなみに先代は6速で2500rpmだったから、5速化でちょっと回すようになった。

画像: スマートフォーツークーペ(右)とスマートフォーツーカブリオ。先代のコンセプトを継承しながら、弱点と言われた部分を徹底的に修正している。

スマートフォーツークーペ(右)とスマートフォーツーカブリオ。先代のコンセプトを継承しながら、弱点と言われた部分を徹底的に修正している。

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