近年、ベントレーは新世代パワーユニットとしてV8ターボを積極的に展開している。しかしトラディショナルな「W12」にはやはり、12気筒でなければ表現しきれない世界があった。圧倒的なラグジュアリー性能と驚異的なパフォーマンス、ともすれば相反する極限を、コンチネンタルGTは涼しい顔で悠々と、操る者に思い知らせてくれたのだった。(Motor Magazine 2020年12月号より)

創世期のベントレーを思わせる佇まい

深いグリーンのボディと、黒くペイントされたフロントグリルの組み合わせ。眼前のコンチネンタルGTは、ビンテージ期のベントレーを思い起こさせた。

ベントレーがルマン時間に初挑戦したのは、創業からわずか4年の1923年だった。この年のレースを4位で終えたベントレーは、翌年に早々と初優勝を達成。以来、30年までに計5勝を挙げた。誕生間もない自動車メーカーとしては破竹の快進撃だが、当時は自動車の創生期だったから、どのメーカーもまだ若くて当たり前。そもそも23年はルマン自体にとっても初開催の年だった。

当時のベントレーに私は、一度だけ触れた経験がある。30年から31年にかけて創業当時のクリックルウッド工場で作られた名作「8リッター」の助手席から、しばしその走りを味わったのだ。巨大なボディは現代のフルサイズSUVに乗り込むくらいの大仕事。走り出せば、6気筒エンジンの鼓動は明確に感じるし、乗り心地だって決してソフトとはいえない。かなりワイルドなサルーンだった。

この直後の31年にベントレーはロールスロイスによって買収され、ここから41年までのベントレーはロールスロイスのダービー工場で生産された。8リッターの同乗試乗に続いて、私はその3年後に誕生したダービー製3 1/2リッターの助手席も体験することができたが、コンパクトなボディと静かで滑らかなエンジンフィールは、8リッターとはまさに別世界。ロールスロイスが作ったベントレーと、創業者W・O・ベントレーが手がけたオリジナルベントレーの設計思想の違いを、このとき私は肌で感じたのだ。

当時を髣髴とさせるグリーンにペイントされたコンチネンタルGT W12を目の当たりにした私が、パワフルかつ抜群に頑丈で、ルマンで5勝を手にしたクリックルウッド期のベントレーを思い起こしたのは、そんな理由からだった。

画像: 驚くほど滑らかで軽い操舵感は、ドライバーに深い安心感と心地いい満足感を与えてくれる。

驚くほど滑らかで軽い操舵感は、ドライバーに深い安心感と心地いい満足感を与えてくれる。

This article is a sponsored article by
''.